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耀聖(ようせい)
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耀聖(ようせい)
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コメント
1件
次への準備って感じで、色んな思惑が交差してたね。サラとウルフ王子が同じ班になってしまったシーンは、心の中で「最悪だ…」って一緒に呟いちゃった。そしてグレイスのドロドロした執念、気持ち悪いくらい丁寧に描かれてて背筋が寒くなったよ。アーレイ提督の軽いノリは相変わらず安定だなって安心した。最後に武器を埋めてく傭兵たち…これから何が起きるのか、もうドキドキして仕方ない。
【デルタ王国内・とあるホテルの一室】
決して安くはないホテルの一室。
二人の男がソファーに座り、顔を合わせている。
一人は、あの軍事顧問のヴァルター。
もう一人は、一瞬女性に見間違えるほどの容姿を持つ、若い男だった。
「それでは依頼を受けてくれるのだな」
「凄く面白そうですわね。けど依頼内容が多すぎるわ」
女性のような仕草をするこの男は、調略に長けたヴァルターの子飼いの一人だ。
「レイヴン社の乗っ取りは、上手くいけばの話だ」
「承知しました。先にこのデルタの貴族を落とします」
ディスティアの技術をグレイスが欲したことから、陰謀は動き始める。
これが、やがて大きな混乱を巻き起こす引き金になるとは、まだ誰も知らなかった……。
※※※※※
【貴族学校・多目的室】
前期試験が終わり、次のイベントは修学旅行だ。
今回はクーン王国に出向き、精霊と魔法に関する学習を行う。
最後は敵味方に分かれての模擬戦だ――。
「皆さん、修学旅行で一緒に行動するグループ分けを行います」
学生は二十名ほどのグループに分かれ、各地を見学することになる。
教師が無作為に選んだグループの発表があった。
「それでは割り振られた席に着くように」
そして——。
――ッ
(ゲッ!なんでウルフと一緒なのよ!)
数名の護衛とともに、颯爽と姿を現わしたウルフがサラの正面に座る。
運命の悪戯にしては、冗談が過ぎる。
澄まし顔のサラを見たウルフは——。
「サラ、奇遇だね。同じグループになるとは」
「あら、奇遇ですわね、ウルフ王子」
最悪だ、周りを見渡しても知り合いすらいない。
精々、顔見知り程度の女子がいるくらいだった。
完全に孤立したサラは、能面のように感情を表に出さず、対応する。
「そういえば、君のお父さんに会ってきたよ」
「あはは、そうでしたか。それは何よりです」
ウルフがサラの反応を伺い、正体を探っていることくらい、簡単に想像できる。
だが、他国の王子に正体を明かすわけにはいかない。
引き続き、能面のような表情を崩さず、対応を迫られる。
(こりゃ先が思いやられるわ……)
楽しみにしていたクーンの修学旅行は、最悪な形で始まろうとしている。
だが、このような苦難など、可愛く思えるほどの危機が、待っている事など、サラは露ほども知らなかった……。
※※※※※
【レイヴン・テクノロジーズ・地下研究所】
「これを使って、サラを痛い目に合わそう——」
地下研究所に篭っていたグレイスは、研究所の武器開発課に出向き、試作品の小銃を持ち出していた。
それはカーボン、セラミックなどの最先端素材を使用した、超軽量レーザーガンだった。
だが、このままクーンに持ち込むことは不可能だ——。
「クーンで行われる後方支援の実証実験を利用して、荷物に紛れ込ませればいいか」
グレイスの親の力を使い、クーンに武器を持ち込むなど、造作もない。
しかし修学旅行はまだ先だ。どこかに保管しなければならない。
「保管も含めて、奴らを頼るか……」
サラを虐めるためだけに、簡単に法を犯すグレイスの表情は、無残な姿を想像しているのか――悦に浸っていた。
※※※※※
【デルタ宇宙港・第九艦隊】
数週間後、待ちに待った修学旅行が始まりを迎える。
宇宙港に降り立った学生らは、出発前に発案者のアーレイと向き合っていた。
「俺がアーレイ提督だ。お前らを無事にクーンに送り届けてやる!」
「さっすがぁ!」
貴族学校の生徒は、第九艦隊の艦船に乗船してクーンへと向かう。
軍隊の雰囲気を味わいつつ、旅費の節約も兼ねている。
要するに金のない、一般枠の生徒に配慮したのだ。
「どうだかっこいいだろ、これが最新鋭の空母式島だ」
学生らは新造艦の空母式島に乗船すると、初めて見る勇姿に興奮を隠せない。
「これが烈波級二番艦の式島か!」
相変わらずのシンプルな直線的なデザイン。
ダークブルーの船体は、他に類を見ないので当然だ——。
トラブル続きだった烈波は、大幅改修を行わず後方支援艦になり、この式島を新たに建造したのだ。
「戦闘機に乗りたいなら志願しろ。気絶したら罰金な(笑)」
「気絶したとしても、俺は戦闘機に乗るぜ!」
アーレイが考えたプログラムは大人気だ。
艦載機の哨戒機、インターセプターなど、より取り見取りなら当然だろう。
「お前ら、試作機の22式を見たいか!」
「是非!」
アーレイが自ら設計した、多目的戦闘機22式。
最新鋭の20式を開発する過程で生まれた、運動性能特化の実証実験機だ。
普段なら表に出さない開発専用機体を今回は特別に披露した——。
「それでは出航します」
程なくすると、式島を中心とした空母打撃群が出港する。
学生らはクーン到着まで、飽きる事なく、航海を楽しむのだった。
※※※※※
【惑星クーン・魔獣の森】
クーン城が遠くに見える、豊かな自然が残る魔獣の森。
その森を見渡せる高台に、十数台の強襲艇が並んでいる。
学生を送り届けたアーレイは、実地訓練を監視する指令所の視察に訪れていた。
「キースは現場だな。好きだろ(笑)」
ここの責任者に任命されたキースは渋い顔をしている——。
「んまぁ嫌いではないが——」
すっかりデスクワークに取り憑かれているキース。
精悍だった男も、腹周りがすっかりメタボになっている。
「少し運動しろよ、ルナがぼやいていたぞ」
「……お前と違って、歳とるんだよ」
アーレイは変わらないが、キースはオッサン化が激しい。
この世界はエルフや長寿種の獣人が普通に存在する。
なので、好奇な目で見られることはないが、キースはアーレイをジト目で見ていた——。
「陛下、我が社の後方支援システムは如何でしょうか」
「後方支援は、妨害に強ければいいだけだ。じっくり拝見させてもらうよ」
アーレイは、修学旅行の締めに行われる演習を円滑に終わらせるため、後方支援を各企業に要請していた。
何社からか打診があり、その中で一番実績のあるレイヴン社が選ばれる。
選ばれた一番の理由は、アーレイワークス社のモジュールとの相性がいいのが決め手だった。
「お目が高い陛下でしたら、きっとお気に召すと思いますよ」
システムに自信があるのか、担当の男はニヤリと口角を上げるのだった。
一方、演習場近くでは、怪しい二人組の男達がうろついていた——。
「さて、ドローンの設置がやっと終わったな」
「それにしても、戦争ごっこの割には報酬が良いよな」
この二人はあの軍事会社から派遣された傭兵だ。
迷彩服を羽織り、グレイス援護のために、監視用小型ドローンの仕込みを終えたところだった。
「後は、この武器を指定の場所に埋めればいい」
「そうだな、さっさとやって一杯引っかけよう」
男はニードル型の電磁スコップを無造作に地面に突き刺す。
ブーンと鈍い音が響くと、みるみる地面が柔らかくなり始めた。
「さて、埋めて終わりにしよう」
保護膜に覆われたレーザー銃を、柔らかくなった地面に置く。
ズズズ——
底なし沼のように、数丁の銃が沈み始める。
見届けた男達は、光学迷彩のスイッチを入れ、風景に同化すると、足早にその場を後にした。