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29 ◇元夫から会いたいと言われる
まず会うかどうか、すごく悩んだ。
何を今更話すことがあるだろうか!
正直、今更会うのは嫌だった。
だって私が最後に会ったのは、離婚してほしいと
私に頼み込む啓吾の姿だった。
最愛の人から他の女性と一緒になるから別れてほしいって言われたんだよ。
慰謝料払うからって。
こんな悲しいことがこの世にあったのかって思うほど悲しかった。
あの日の啓吾の顔しか思い出せない。
そんな人と会うって、何のバツゲームですかって……。
そんなふうに悶々と考えたけど、結局はこれでホントに最後と思い、
会うことにした。
人から知らされれば、決していい気のしない私たちの接触。
私は夫である浩暉さんに正直に話した。
「いいよ、相談があるって言ったんでしょ?
身体が不自由になって何か困ってることがあるのかもしれないね」
「そうなんだけど、何も思いつかないのよね。
良かったら一緒に付いて行って嶋さんに分からない場所で
私のこと見ててくれないかな」
私はつい夫に甘えたことを言った。
「うん、いいよ。俺も実はそれ言おうと思ってた」
「ありがと、あー、よかったぁ。何かほっとした。ちょっと不安だったんだ」
◇ ◇ ◇ ◇
―― 約束の日 ――
啓吾はまだまだ本調子とは言えない身体のようで、
お母さんに付き添われて現れた。
啓吾が店の椅子に着席すると、お母さんは気をきかせて外に出ていった。
「あー、久し振り。
今頃連絡してびっくりしたよね? 」
「うん少しね」