翌日。
「やっと銀さんの居場所が分かったのか」
「はい。昨日私を殺しに来た刺客に発信機をつけておきました。気付かれて破壊されてしまいましたがアジトの場所は掴めました」
そう言ってアジトの場所を確認する。すまないスクールから程近い森の中の、ほとんど廃墟に成り果てた大きな洋館だ。所有者が曖昧になったまま放置されていた洋館をそのまま利用したのだろう。
「……向かいましょう。銀さんを助けに」
すまない先生は快晴を閉じ込めたような瞳に静かな怒りを与え、しっかりと前をそして倒すべき敵を見据えていた。
「……動き始めたか……全く、行動が早い野蛮人どもの相手は疲れるよ」
トアールはタブレット端末を眺める。そこには一つの赤い光点がアジトへと近づいて来る様子が写っていた。実はブラックがリデルに発信機を付けたように、トアールもリデルに発信機を付けるように言っていたのだ。リデルに付けられた超小型の発信機を見抜く事が出来たのもそれがあったからである。
「……応戦の準備をしておかないとね」
トアールはテーブルに置いてあるマイク付きのヘッドフォンを付ける。
『全構成員に通達する』
その声を聞いた構成員は皆驚愕した。コルテージュは中規模の組織。その組織のトップの声を聞くにはある程度の地位につかなければならない。最下層の構成員からするとその組織のトップはまさに高嶺の花の存在なのだ。しかしトアールは構成員が驚愕している事など露知らず言葉を続ける。
『【すまないスクール】という敵がアジトに接近している。彼らは我らがこの街を救う事を妨害する不届き者だ。殲滅せよ』
その命令で全ての構成員の心に闘志の火が灯った。
「奥の方に建物が見えました。この先で間違いないです」
微かに見え隠れする建物を見つけたブラックがそう言う。
「そこそこ離れてるのにここからでも見えるって、どれだけ大きな建物なんだい?」
「大きさとしてはすまないスクールと大して変わらないくらいの大きさを誇ります。元の所有者は大富豪だったようで」
「それは大きいね……」
すまない先生は引き気味に答える。
「元の所有者は大きな屋敷を辺鄙なところに建てるのがご趣味の変わった人だったそうですよ。フフフ……」
(((いやブラックの笑い方こっっっわ!)))
ブラックの笑い方に、思わずそう心の中でツッコミを入れたすまない先生、Mr.赤ちゃん、Mr.ブルーであった。
しばらく歩くと鬱蒼とした木に覆われた大きな洋館が姿を現した。
「え、幽霊屋敷みたい……」
とすまないスクール屈指のビビりであるブルーが心底嫌そうな声で呟く。
「なんだ弟、ビビってんのか?」
軽く煽りを入れるレッド。
「び、ビビってねぇし!」
「2人とも静かにしてください。気付かれたらどうするんですか?」
しかしそんな話をしていたからだろうか。ブラックが普段なら絶対しないミスを犯した。トラップワイヤーフックに引っ掛かってしまったのだ。気付いた時にはもう既に遅く。すまスクメンバーは全員、落とし穴に落ちてしまった。
「……引っ掛かってくれるか正直微妙だったけど、見事に全員落ちてくれて良かったよ」
トアールはクスクスと笑う。
「そんなに深く無いし下にはマットがあるから死にはしないけど、出るのは非常に難しいだろうね。なんたって……」
____トアールは瞳を細めて
心底楽しそうに笑っていた____
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