:千冬視点です:
相棒たちを見送った後、俺もマイキーくんの保険証とか諸々持ってバイクで後を追った。
念のため、病院に着いたとき、相棒にメールを送ったんだが、見てるのか…?
「にしても、服、着替えて来ればよかった…。」
さすがに真っ黒い服を着た金髪の男子が外にいるって、あからさまに怪しまれるじゃん。
「早くでてきてくれ相棒…。」
そう願い始めて10分後、やっと相棒と合流することができた。
「あ、やっと会えた!」
相棒はそう言うと顔を輝かせて俺の方へと小走りで来た。
「それは俺のセリフだ!」
俺はそう言って、相棒の頬をつねった。
相棒は「いたいいたい」って言ってばっかで振りほどこうともしなかった。
「で、どうだった?」
俺は相棒の頬から手を離し、相棒にそう聞いた。
「ただの貧血だって。心当たりないかって聞かれたけど、ある?」
「いや、逆に心当たりしかねぇだろ。」
「マジで?」
いや、ここまでしらばっくれるの逆に才能だと思う。
だって、俺らが普段していることなんだと思う?
喧嘩だぜ?
それに、お前とマイキーくんに関しては事故ってるからね?
本人は自覚なさそうだけど!
「…全くだな、相棒。」
俺は呆れながらそう返答した。
「あ、あははー…。」
…全く、俺も大変な相棒を持った。
俺は持ってきた諸々のやつを相棒に渡して、あとで受付に行ってくるように言った。
「にしても、あれは本当に貧血かなぁ…。」
俺はそう呟く。
相棒は「医者が言うんだからそうだろ。」と言って受付のほうへ行った。
俺もバイク置き場へ戻り、自販機で買ったコーラを飲んだ。
:みっち視点に戻ります:
俺らがバイク置き場に戻った時にはもうすでに千冬が待っていた。
結局、マイキーは輸血だけで済んだ。
「貧血だってさ、全くだよな。」
マイキーはそう言って自分で自分を嘲笑っていた。
…今、実際にバブを運転しているのはマイキーなのだが。
「ほら、もうすぐ着くぞ。」
マイキーはそう言うと、なぜかバブを車庫に置かないでエンジンを止めた。
千冬も同じようにしている。
「どうしたんだよ、二人と…。」
俺が前を見ようとバブを降りると、そこには、二人には見覚えのない車があった。
俺には、嫌というほど見覚えがあるが。
「もう来てるのかよ…。あいつ…。」
俺がそう呟くと、千冬は「やっぱり?」と俺を見て言った。
「位置特定が早いな。」
マイキーもそう話す。
俺の家には位置特定用PCが軽く10台ほどあるから、おそらくそれをフル稼働で特定したのだろう。
「とりあえず、応戦に行こう。」
俺らはそう言って応戦するために駆けだした。
俺らは勢いよく玄関のドアを開け、奇襲をかけた。
全員、希望がたどり着いてきたように、目を光らせていた。
マイキーは黒い衝動を前面に出し、千冬も体術を巧みにこなしながら攻撃していった。
俺も当然、部下という敵を切り殺していった。
攻撃を開始して幾分か経った頃。
「くっそ、親玉はどこだよ…!」
千冬はじれったそうにそう言う。
確かに、父さんが一切出てこない。
ここにはいないのか…?
「もう待ちくたびれたぞ!どこにいんだよ!」
千冬がそう叫ぶと同時に、父さんは千冬の背後へと迫った。
「お前の後ろだ。」
「千冬!後ろ!!!!」
ほぼ同時に俺と父さんが言う。
千冬はその忠告を受けると同時に、父さんの不意打ちを避けた。
しかし、完全には受け流せなかったらしく、「いって~…。」と声を漏らしていた。
「千冬、大丈夫か?」
俺はそう聞く。
「まあな。」
千冬はそう返して笑顔を見せた。
「もう終わらせるか。」
マイキーはそう言うと、父さんに攻撃を仕掛けた。
しかし、父さんは〈プロのハンター〉だ。
マイキーの蹴りを受け流すと、すぐにカウンターをした。
しかし、マイキーも〈現・関東卍會総長〉だ。
そのカウンターをしっかりかわす。
しかし、父さんは「時間か。」とつぶやくと、ポケットから銃を取り出した。
その銃をマイキーに向ける。
俺は銃口をこっちに向けるために、父さんを煽った。
「父さん、そいつは俺の担当だろ?父さんが殺す必要なんてないんだよ。」
正直、今、めちゃくちゃ怖い。
だけど、その怖さも噛み砕いて父さんを見た。
…父さんは予想通り俺に銃口を向ける。
ここまでは予想通りだ。
この次だった。俺の計算外だったのは。
「じゃあ、武道、お前が代わりに死ぬというのだな?」
…殺す気でしかいないのか。
「ああ…!」
俺も、この生涯を終える気で返事をした。
もうちょっとみんなと笑い合いたかったが、これも仕方のないことだ。
俺は覚悟して、父さんを見た。
父さんはおかまいなしに発砲した。
それと同時に、なぜか俺の体が横に倒れる。
俺の体には傷一つない。
父さんは撃ったと同時に俺らの視界から消えていた。
不発…?いや、そんなはずはない。
俺が立っていた方を見ると、そこには千冬が倒れていた。
「千冬…?千冬…!」
「あ…いぼう…?」
千冬が受けた銃弾は、確実に肺にダメージを入れていた。
「待って、今救急車を…!」
「大丈夫…そんなの…もう意味ないって…。」
千冬はそう言うと、優しく笑った。
「…。」
マイキーも静かにこちらを見ている。
「あのさ…タケミっち…相棒として…いてくれて…ありがとう…。」
俺は千冬の手をギュッと握る。
そこから、人肌はかすかにしか感じなかった。
「これからもだろ…?」
俺はそう言ってあふれ出す涙を流す。
「…w、だな…。」
「相棒…。」
「出会えて良かった。」
千冬はそう言うと、静かに目を閉じた。
それから、千冬は何の返事もしなくなった。
「なぁ、千冬…?嘘だよな…?」
「千冬…?」
「起きろよ、千冬…。」
俺は、その日、一日中、千冬の傍で泣いていた。
ただ、俺の相棒の傍で、泣きじゃくった。
マイキー殺害まで あと 13日
:おまけ・死後千冬視点:
「あーあ、相棒庇って死んじまった。」
頭で考えるより先に行動に出す、俺の悪い癖。
母さんに怒られるなぁ…。
いや、その前に…。
「千冬ぅ、なんでこっち側に来ちまったんだ?」
「すいません場地さぁぁぁぁぁん!!!!!!!!」
わ~、やっぱりキレてるよ、場地さん。
「あのなぁ、お前ってやつは本当に考えないな。」
「だから、相棒を守ろうとしたら先に行動しちゃって…!」
「それを聞いてんじゃねぇ!」
「あだだだだ!場地さん、力強いっす!」
場地さんは俺の頬を力を込めてつねる。
「ったく…一虎はどうするんだよ。お前に任せるつもりだったんだが…。」
場地さんはそう言うと大きいため息を吐いた。
「あ、そうなんですね。」
俺は目を丸くして言う。
「じゃあ、まあ、見とくか、一部始終を。…ってか、お前の相棒めちゃくちゃ泣いてんじゃん。」
「タケミっちっすよ…。人一倍泣くやつなんで、そりゃそうです。」
「ここらへんで洪水起きる気がしてきたワ。」
「場地さん、俺もっす。」
――めっちゃ空気ゆるかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!