赤サイド
年に一度だけ、さとみくんに会える日がある。
さとみくんが俺らが住んでるど田舎に帰ってくるの。
その日は俺の村のお祭りの日。
俺はいつも浴衣を着て、少し可愛くしてさとみくんを待っている。
さとみくんが来るのはいつも午後7時過ぎ。
赤「もう7時前だな・・・」
そろそろ行かなきゃ。
俺は足早に神社にむかった。
階段の上で待っていると桃色の髪がちらついた。
赤「さ、さとみくん!」
桃「あ、莉犬っ!」
でも今年はいつもと様子が違う。
隣に茶髪の女の人がいる。
赤「そ、その人は?」
桃「もうすぐ結婚するんだよ。」
一瞬頭の中が真っ白になった。
女「君が噂の莉犬くん?」
赤「・・・・」
桃「ほら、ちゃんと挨拶しろよ。」
赤「・・・うそ。」
桃「え?」
俺のほうが昔からさとみくんのこと大好きなのに。
俺のほうがよく知ってるのに。
さとみくんとの思い出も俺のほうが、俺のほうがっ・・・
なんて醜い思考を繰り返す。
素直に祝えないなんて、俺は最低だ。
赤「もうさとみくんなんか知らない!」
いつの間にか俺はその場から逃げ出していた。
涙が溢れ出してきて俺を嘲笑うように風が吹く。
もう俺のこの涙を拭ってくれる人はいない。
赤「ひぐっ、ぁ゛っ」
物陰に隠れて誰かにバレなように、声を殺して泣く。
赤「・・・な、んで・・・」
そんなこと思ってたって無駄だってことは分かってる。
でも、でも。
赤「さとみくん、いかないでよぉっ・・・」
なんで俺をおいてっちゃうの?
なんで俺を捨てちゃうの?
ぽつぽつと雨が降り始めて更に俺の孤独を憫笑する。
段々と雨風が強くなって人々が帰り始める。
でも、俺はまだ帰りたくない。
帰る気力がない。
ただただ雨に濡れて寒い風に包まれてたい。
桃「ん。」
声がして、顔をあげる。
そこには大好きな人がいた。
赤「さとみくっ」
桃「帰ろう?」
赤「・・・うん。」
昔みたいに手をきゅっと繋いでさとみくんに引っ張られる。
赤「あの人は?」
桃「先に俺の家に戻ってもらった。」
赤「そっか。」
会話が途切れる。
辛い、苦しい・・・
赤「さとみく」
桃「もう喋んないで。」
赤「へ。」
桃「お前の気持ちも全部わかった。」
こちらに顔をむけないままさとみくんが言う。
桃「ごめん。」
そんなの聞きたくない。
だけど
赤「いいよ。」
許してしまう俺は、ほんとに酷い悪魔だ。
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