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昼休憩。
食堂の一角だけ、妙に空気がゆるい。
青葉城西三年及川徹、岩泉一、松川一静、花巻貴大の4人が同じテーブルを占領していた。
いや、正確には。
「だからさ~、飛雄ちゃんが昨日テーピング巻いてほしくてもってきたんだけどさぁ、”ん…”ってだしてきたんだよ?」
「は??」
「かわいすぎない?」
及川が1人でしゃべっている。
「……お前それ昼飯中に話す内容か?」
「岩ちゃんひどい!」
岩泉は味噌汁をすすりながら完全に無視している。
松川は肩を震わせている。
花巻はもう笑いをこらえきれていない。
「及川、それ完全に飼い主目線じゃん」
「違うし!」
「いやいやいや」
「飛雄ちゃんは別にペットじゃないから!」
「そこ否定なんだ」
松川が吹き出す。
周囲の席がざわついていた。
「あのテーブル何話してんの?」
「及川だけずっと喋ってない?」
「しかもなんか内容やばくね?」
他校の選手たちもチラチラ見ている。
だが及川は気にしない。
「でさ、今日のトスみた? あれ絶対俺意識してるよね」
「お前の思考が怖い」
「いや絶対そうだって!」
花巻が笑いながら肘で突く。
「お前それ恋人フィルター通しすぎ」
「フィルターじゃない事実だし」
「でた事実」
松川が完全に笑っている。
岩泉は無言で及川の頭を軽く叩いた。
「いいから飯食え」
「痛っ! 岩ちゃん暴力!」
そのやり取りを、少し離れたテーブルから烏野、音駒、梟谷のメンバーが見ていた。
「なぁ」
「ん?」
「青葉城西のあそこ、何こ会話してんの?」
日向が首を伸ばす。
黒尾がニヤニヤしながら答える。
「恋ばなだろ」
「は?」
「いや、あれは恋ばな」
「え、あれが?」
日向の目線がさらに鋭くなる。
影山はその会話に気づいていない。
ただ普通にご飯を食べている。
だが。
及川の名前がでた瞬間だけ、ほんの少しだけ耳が動いた。
菅原がそれを見逃さない。
「……ふーん」
にやっと笑う。
その頃、青葉城西のテーブル。
及川はまだ止まらない。
「でさ、飛雄ちゃんさぁ、試合中に俺見てくるのやめられないんだよね絶対」
「それお前が見てるからだろ」
「違うし! 向こうからみてくるし!」
「はいはい」
岩泉は完全に流している。
松川は涙目。
花巻は机を叩いて笑っている。
「やばいな及川、今日ずっと影山の話しじゃん」
「だってさぁ!!」
及川は身を乗り出す。
「昨日だって夜さ! ”少しだけ”って言って来るの可愛くない!?」
「それ恋人として普通の報告じゃねぇ?」
「違う! あれは成長!!」
「どこがだよ」
そのやりとりがさらに続く。
周囲の視線は完全に集まっていた。
「あの青葉城西の3年何?」
「及川ってあんな奴だった?」
ざわざわ。
情報が勝手に広がりそうなレベルだった。
そして当の影山は、ようやく違和感に気づく。
「……?」
青葉城西の方を見る。
及川と目が合う。
及川はにこっと笑った。
その瞬間。
影山はすぐ目をそらした。
耳が赤い。
菅原がそれを見て、肩を震わせる。
「はい確定」
黒尾が小さく笑う。
「もうバレるのも時間の問題だな、あれ」