テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
26,371
536
4,517
僕は今とてつもなく後悔をしている。何故なら昨日の夜から朝にかけて命君から説教(?)を受けたことによりオールする羽目になったからである。
正直、これだけなら何の問題もなかった。だが今日は僕の教師生活のスタートなのである。なのに僕は寝不足でフラフラ。本当に最悪だ。体は重く、疲れは取れていない。寧ろ疲れまくった。
それでもやるしかないので頑張るが。
「晴明?早く準備しろよ。それとも初日から遅れる気か?」
「いや、誰のせいでこうなったと思ってるのさ!命君の馬鹿!」
「うん。大声を出せるくらいに元気があるなら問題ないな。早くしろ」
「理不尽だぁ…急ぎはするけど…」
その後、僕らは準備が終わり「いざ出発!」となったところで、僕が真逆の方向に行ったので、僕が迷子にならないよう命君に手を繋いでもらいながら学園まで行った。誠に遺憾である。
そして今は遅れたため挨拶する暇もなくその日の初仕事が終わり、職員室で頑張って挨拶をしようとしているところである。だが全然人いないし半分諦めかけである。
「なっ、なぁ君が今日からこの学園に入るっていう新しい教師さん?」
(やばい声掛けられたどうしよう助けて命君)
さっきまで頑張るとか言ってた男が実際に声をかけられてしまうとこれである。
「嗚呼、こいつがその教師だよ。名前は安倍晴明」
命君マジありがとう神様かなにか?あ、実際に神様だった。
「あ、べ、はるあ、き……?な、なんで……さ、佐野君?あんた、一体何したん?」
「あ?学園長から聞いてないのか?」
「聞いてへんけど……君はこれでええんか?彼やって、何も知らんのやろ?……僕やったらこんな惨いことしたないわ…」
そう言って彼は元の席に戻っていってしまった。
いやそれより惨いことって何?え?命君?大丈夫なんだよね?
「……」
「あ、あの命君?さっきの人の名前って……あっあと!周りからの視線がいたいんだけドォッ!」
何が起きたのか一瞬理解できなかったがその後気がつく。僕は後ろから誰かに突進をされたのだ。多分。
「せいめいか?せいめいだよな!あいたかったぞー!!せいめい!!!おれな!教師になれたんだ!せいめいのおかげで!だからずっとお礼が言いたくっフゴフゴ」
命君が手で元気な人の口を塞ぐ。
「秋雨。こいつはあいつとは、違う。こいつの名前は確かにあいつと一緒だが、違う、からな」
「なぬ!そうだったのか!急に抱きついてすまんぞ!えーとはるあき?」
「うっうん!大丈夫ですよ!ちょっと驚いただけですから!」
「そうか!よかったぞ!」
「あの……さっき言ってたせいめい?って誰のことですか?」
「えっとな!せいめいはおれの、おんし?ってやつなんだ!」
「そうなんですね!でもなんで僕と名前が一緒なんですか?僕の名前はせいめいじゃないですよ?」
「あー……えーっと?うぅ……なんていえばいいかわからんぞ!」
「あだ名みたいなもんだよ。そいつのクラスの生徒は皆、そう呼んでた。」
「そうそう!そんなかんじだ!ちなみに佐野もそうよんでたんだぞ!」
「へ?命君も?ってことは命君もその人の生徒だったんですか?」
「ああ!多分だが佐野にとってもせいめいはおんしだと思うぞ!あと佐野は…」
「秋雨!!もうやめろ!!」
「あ、ご、ごめんなさいだぞ……」
「あっ、いや……俺のほうこそ急に怒鳴って悪かった」
「……」
(えっ、この空気感どうしよう、もの凄く気まずい)
「あっ…あー!そういえば僕、この学園のことなんもわかんないから、誰かに案内して欲しいなー!」
「!!それなら!俺が案内するぞ!」
「ほんとですか!?とっても嬉しいです!」
「……」
「あっ、さ、佐野?いいか?」
「別にいいよ、俺もついて行くけどな」
「ホッ」
「この学園は広いから頑張って覚えるんだぞ!」
「わ、わかりました!頑張ります!」
「他の教師達の名前と顔は覚えたか!?」
「あっご、ごめんなさい……僕、人の顔は認識出来なくて……命君や自分は大丈夫なんだけど……」
「そ、そうなのか……じゃあ、俺の顔もわからないんだな……」
「わー!大丈夫ですから!雰囲気で覚えられますから!安心してください!」
「うん……」
秋雨先生(?)が凄く寂しそうな雰囲気をしているのを感じて、やっぱり元気で優しくて感受性豊かな人……妖怪だなと思う。
とはいえ、悲しそうなのはちょっとあれだと思ったので、喜びそうな言葉を頭の中である限りの力を振り絞って考える。
……けど僕この人の事まだよく知らないんだった。なのに喜びそうなことってなんだよ!
「晴明」
「!」
「普通に接してたら段々と秋雨も慣れてくると思うから。無理に頑張らなくても大丈夫だ」
「……うん、わかった」
なんとなく納得はいかないけれども、きっと僕より命君の方が正しいからと思いそれ以上は言わないようにする事にした。
……やけに今日の命君は情緒が不安定に感じる。
今だって感じる雰囲気と声のトーンが違いすぎる。今の命君から感じる雰囲気は、もっとこう…嫌悪的な……だけれど深い愛情的な……結構複雑な感じだ。
(……さっきの”せいめい”って人が関わってるのかな…そもそも秋雨先生が間違えるくらい僕とその人は似てて、名前も一緒って事は……命君が僕をこの学園に誘った理由は…………いや、この考えはなかったことにしよう)
だってそうしないと僕の唯一の友達が僕自身を見ていない事になってしまうから。
(嗚呼、今日の僕は特に不運だな)
「はるあき!ここが階段だ!気をつけろよ!」
「さすがに大丈夫ですよ……」
「はるあきは危なっかしい?だからな!」
「えー…僕、信頼ないなぁ…ちょっとしょげる…」
「何お前、しょげ明なの?」
「…大丈夫だよ、別に」
「…はるあき!ちょっとこっち来るんだぞ!」
そう言いながら手を引かれる。勢いに痩せて軽い体が持ってかれる
「えっ?な、何!?」
「おい、俺もついて行く…」
「佐野はそこで待ってろ!はるあき!早く行くんだぞ!」
「わ、わかりました!」
そのまま自分より背の低い彼に何処かに連れて行かれる。ただ、不思議と恐怖感は無く、彼からする優しい感じで、寧ろホッとさせられる。
「……は?」
後ろから溢れた小さな声は、誰の耳にも届くこと無くそのまま地面に吸い込まれていった。
秋雨先生に連れてこられた場所は屋上だった。何やら白いカブ(白だよね…?)の様な顔のある生物が沢山いる。
「これはマンドラゴラって言うんだ!でも叫んだりはしないし、知性もそれなりにあるからな!」
「へー!そうなんですね!」
「新入りかね!よろしくな!」
「あ、うん!よろしくね!」
「…あっ!そうじゃなくて!はるあき!お前、何でそんなに悩んでるんだ?」
「えっ」
秋雨先生が僕を見つめている。そんな感じの目線を感じる。実際に目線がどこに向いているかは分からないが。
「…バレちゃいますかぁ……」
「動物妖怪の感なめるんじゃないぞ!」
「えへへ……そんなに大した話じゃないんですが、その、命君が、僕を見てない気がして、僕を通して、僕じゃないだれかを見てて、それで、ちょっとだけ。」
「…確かにそうかもな。」
「ッ……」
動物妖怪の感があそこまで当たるなら……嗚呼、否定をして欲しかった。
「で?はるあきはどうしたいんだぞ?」
「えっ」
思いもよらないことを言われる。
「どうしたいかと聞かれても…」
どう、したいのだろうか。
自分にできた唯一の友達が、自分を代用品としてしか見ていないかもしれなくて。
段々信用ならなくなってきて。
そんな自分も嫌で。
ぁぁ…彼の色だけは、消えないで、
どうしよう
どうしよう
どうしよぅ……
大丈夫。君のしたいことは君の心の奥に…
「ッ……”僕”とも、仲良くなってほしい…ですッ……そのために!なにか、したい…」
「…なるほど、それが今のはるあきのしたい事なんだな!」
「でき、ますかね…?」
「うーん…わからんがはるあきならできる気がするぞ!」
「えぇ…」
「兎に角!それを実現する為に頑張ろうな!一緒に!」
「ぇ」
一緒に…?
一緒に…
いっしょに…???
「どうかしたのか?」
「いや、なんでも!えへへっ…」
「?よくわからんが元気になってよかったぞ!」
「うん!」
嗚呼、この妖怪さんも命君と同じくらい輝いてて綺麗だなぁ…。別のベクトルではあるけど、凄く綺麗だ。
顔は可愛い系ってやつなのだろうか。猫又だからかな?
髪の毛の色が2色なのも珍しくて素敵だ。黄色とオレンジが絶妙なバランスで……ん?
黄色とオレンジ?
「……ぇぇええ!!!」
「急になんだぞ!?」
僕はまた、世界の美しさを一つ思い出した。
続く
次の話は途中です。それでもいいなら見てください。
コメント
1件
第5話、読ませていただきました……! 晴明くん、初日から寝不足で大変そうだったけど、秋雨先生とのやり取りがすごく優しくてじんわりしました🥺 特に「一緒に」って言ってくれたところ、晴明くんが少しだけ心を開けた瞬間が本当に尊い……。命君が晴明くんのことを「せいめい」と重ねて見てるのかな、ってヒヤッとする展開も気になる。妖怪たちとの交流、これからも楽しみにしてます🌙