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「え?うん。昨日、なんかあったっけ??」


ケラケラと笑いながら誤魔化すハルを見て、心の奥底が少し痛む。


忘れてくれて良かったという安堵感と寂しさが入り混じっていた。



◆◇◆◇


その後


いつも通りハルはニコニコとしながらキッチンに立ち、鼻歌交じりに朝食を作る。


その光景に昨日までの出来事がまるで夢かと思わせるほど、平和な日常が流れているのだ。


「あっちゃん!はい!あーんして?」


卵焼きを箸で掴みながらハルが顔を覗き込んできた。


「自分で食えるっつーの」


「もー恥ずかしがっちゃって〜。ほら早く口開けてよ〜。美味しいから」


屈託のない笑顔を見せられると反抗する気力もなくなり大人しく従ってしまった。


口の中に広がる優しい味付け。昔から変わらない味だ。


「ん。うまい」


素直に感想を述べるとハルは嬉しそうにはにかむ。この瞬間に幸せを感じる。


この時間が永遠に続けばいいと思うくらいに。



◆◇◆◇


ある休日


目が覚めると隣にハルの姿は無かった。


キッチンから漂う香ばしい匂いに誘われてダイニングへ向かうと、エプロン姿のハルが笑顔で迎えてくれる。


「あっちゃんおはよ!もうご飯できてるよ~」


テーブルには二人分のトーストと目玉焼き、ベーコンが並べられていた。


一昨日の夜の弱っていたハルとは打って変わって明るく振舞っているハルの様子にホッと安堵する。


やはりハルには笑顔が一番良く似合う。


「食うか」


「うん!」


向かい合って座り手を合わせる。


『いただきます』


一口齧ればサクッと軽快な音と共にバターの芳醇な風味が口内に広がる。


「美味しい?」


「あぁ、ハルにしては上出来じゃね」


短く答えるとハルは嬉しそうにはにかんだ。


朝食後食器を片付け終わりリビングで寛いでいると、ハルがソワソワしながら話し掛けてくる。


「あっちゃんあっちゃん!」


「なんだよ」


「実は僕ね……今日こそは物件探しに行って来ようと思ってて!」


突然の宣言に驚いた。


「一人でか?」


「そうだけど…?」


「危ねぇだろ」


「大丈夫だって!ただ物件見に行くだけだし」


「お前一人じゃ危ないから俺も着いてく」


「ええっ!?」


「文句あんのか」


「いやっ別に無いけど……僕のこと心配しすぎじゃない?」


モゴモゴと言い淀むハルの頭にコツンと拳骨をお見舞いする。


「痛ったい!」


「つべこべ言うな。この前玄関であんな泣いてたくせに」


「そ、それは…でも、僕なんかのためにあっちゃんにこれ以上負担かけちゃうの申し訳ないって言うか……って痛っっ!!」


胸の前で人差し指を擦り合わせてもじもじするハルの言葉を遮るように、額にデコピンを食らわした。


「あ、あっちゃんなにするのっ!!」


僕なんかの為に……か。


相変わらず自己評価の低いハルを見ていると、少し腹立たしく思う反面


どうしようもなく愛おしい気持ちになる。


「ったく…めんどくせぇな。お前は黙って俺に守られてりゃいいんだよ」


「……!」


「な、なにそれ…守られてりゃって…」


ハルは照れているのか頬を赤らめている。


かと思えば、急にクスッと笑って


「……もう、あっちゃんぐらいだよ、そんなこと言ってくれるの」


屈託の無い笑顔で抱き着かれたので慌てて引き剥がす。


(まったく……油断も隙もねぇんだから……)


◆◇◆◇


不動産屋にて担当者が持ってきた資料を吟味する。


ハルの希望条件は【都内のセキュリティ完備な築浅ワンルーム】らしい。


確かにこの辺りは駅近で交通便も良さそうだが……

どれも家賃が高くて眉間に皺が寄る。


「ここなんてオススメですよ!設備も整ってますし駅からも徒歩2分以内ですし」


「んーでも……家賃が予算オーバーかも」


ハルも渋い顔をしている。


「ではこちらはどうでしょうか?」


次に提示された物件を見て息を飲む。


築年数は古いもののリフォーム済みで綺麗な室内。しかも駅チカ徒歩5分という最高の立地


ハルの表情がパァっと明るくなり、とても分かりやすく思わずクスッとする。


「ドンピシャです!」


「では、ご内見されますか?」


「お願いします!」



◆◇◆◇


「すっごーい!広い!」


ハルは大はしゃぎで室内を見て回っている。


確かに1Rではあるものの収納も多いし陽当たりもいい。


「どうですか?お気に召されました?」


「はいっ!ここすごくいいです!」


ハルが即答したので俺も頷く。


こんな所でいいのかと問う


「うんっ!ここがいい!」


満面の笑みで返されてしまえば、それ以上は何も言えなかった。


◆◇◆◇


帰り道二人並んで歩きながら会話を交わす。


「あっちゃんありがとね。おかげでいいとこ見つかっちゃったよ」


「俺なんもしてないけどな」


「んーん助かったよ!だっていつもガサツなあっちゃんがあんな真剣に一緒に悩んでくれるって思わなかったもん」


確かに最初はただハルが心配で付き添っただけで、店で物件を見てるときなんて


早く帰りたいとすら思ってたが…実際に不動産巡りをして良かったと思えた。


「俺が着いてくっつったんだからそれなりに協力はするっつーの」


「えへへ〜優しいなぁ」


ハルがふわりと微笑む。

お前にだけは素直になれない

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