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腹が重くても毎日歩いている。忙しいのにハンクは欠かさず付き合ってくれる。
「カイランと何を話したの?」
「二人目ができたら手と髪に触れていいと言っただけだ」
それは…いつになるのかしらね。
「ふふっその頃には他に愛している人がいそうね」
「お前は死ぬまで俺だけだ」
私は繋いでいる手を持ち上げ口をつける。
「ええ、その通りね」
ふぅ腹が重いわ。今夜から夕食時は話せないわね。それが普通なのだから元に戻さなくては。
「産室は私の部屋?」
もう準備してもいいはず、破水や陣痛がきたら直ぐライアン様を呼ぶと言っていたし。
「俺の部屋の近くにした」
下階の方がライアン様も駆けつけやすいわね。
「側にいる」
「閣下は部屋で待っていて、産婆のアンナリアが側にいてくれるわ」
「離れんと言ったろ」
出産はとても痛くて大変なものだから、妊婦は騒いで喚いても普通だとアンナリアから聞いてるのよ。そんなところ見られたくないわ。
「閣下は私が痛くて泣いて叫ぶのを見るのは嫌でしょう?」
「…そうだな」
そうよ、見られたくないわ。ここは負けられないわよ。
「近くの部屋なのでしょう?待っていて」
どんな顔になるかわからないもの、譲らないわ。
「待ってる」
私は微笑み頷く。よかったわ、ハンクがライアン様にどうにかしろと詰め寄る姿が想像できるもの。
四阿にたどり着くと笑顔のオットーさんが果実水を飲みながら座っていた。
「何をしている」
「若奥様とお話をしたくて待っておりましたよ」
私はハンクを見上げてお願いをする。
「閣下、オットーさんに話を聞きたいの。いいかしら?」
「ソーマ、これの騎士を呼んでこい」
ハンクは仕事があるのよね。忙しいのに私の準備もしてくれているし。
オットーは果実水を持ち花園へ向かうソーマについて四阿に来た。日傘を差し小さな少女と手を繋ぎ曲がりくねった歩道をゆっくりと歩くハンクを格子の隙間から見ていた。二人は時折立ち止まり話をしながら近づいてくる。
「ソーマ、あれは本物のぼっちゃまか?影武者ではないのか」
ソーマは持ち込んだ水差しと器を机に置いている。
「影武者に見えますか?」
「ああ見える。女性を気にかけるなど、ぼっちゃまではないだろう?見ろ、手まで繋いでいる」
なんとまぁ、見に来てよかった。見ずに死んだら後悔していた希少なものだ。
「旦那様は幸せそうに見えませんか?」
見えるなぁ。ちゃんと女性と会話をしている。
「ギース様が見たら死ぬな」
「お互いが幸せなのです。あれが二人の形なのですよ」
息子の嫁とまるで仲睦まじい夫婦のようとは、異常だと理解しているが、ぼっちゃまの変わりようを見ると漸く人らしくなったと感動してしまうな。
「子飼いの奴らには見守るよう話した。若奥様が不安になることはないだろう」
いくらぼっちゃまが上級使用人に箝口令を敷こうとも耳敏い者が邸にいれば隠しようもない。あんなに堂々と歩くなど隠す気も感じない。人払いなどしてもこの広い邸にいくつの目があると思っているのか。この状況が外に漏れていないのは、ただぼっちゃまの恐ろしさから皆が口を噤んでいるだけだ。
ダントルが呼ばれ主は執務室へと戻ることになった。
「おかしな動きをしたら殺せ」
キャスリン様の頬を撫でながらダントルに命じている。
「なんとまぁ恐ろしい」
ダントルならオットーさんを拳で殺せるだろう。キャスリン様の前に果実水を置く。
「ありがとうソーマ。腹が重くて疲れたわ」
膨れた腹を撫でながら笑顔で果実水を飲んでいる。もうキャスリン様に憂いはない。後は無事に出産を終えるのみ。
「オットーさん、閣下はどうして強いのかしら?意思も体力も感情も並外れているわ」
主の育った環境を聞いてもキャスリン様に同じことはできないだろう。
「ハンク様は赤子の時から一人です。乳母はいましたが乳を与えるのみ。友も作らせず幼い頃から騎士に預け体を鍛えさせ勉学も一流を雇い、学園など通わなくともよかったほどです。それがあの苛烈の原因ですな。カイラン様には一応母親がいた、運良く友もできた、ハンク様の興味が子になかった結果、凡庸になられた。ハンク様を創るのは育てる側が辛いですよ。勧めませんな」
キャスリン様は黙ってしまった。参考にならないだろう。
「若奥様を閉じ込め離さない激しさは大旦那様が創られたんですな。巡り合わせに負けたと泣いておるでしょうな」
巡り合わせか、まさにそうだな。巡りめぐってお二人は出会われて結びついた。一つでも欠けていたら主は喜びなど知らずに生きていただろう。ただ息子の嫁として接していたはずだ。
「キャスリン様、大旦那様の育て方は参考にせず、思うように育ててみては?」
「同じ育て方をして若奥様の存在がどう作用するか見てみたいですな」
この人は何を言い出すんだ。子をなんだと思っているのか。
「ありがとう、オットーさん。参考になったわ」
キャスリン様はカイラン様を見ているからな。公爵家の教育に不安なのかもしれない。
「この子は私がちゃんと見守るわ。ソーマ、閣下はこの子より私を選ぶわ」
そうだろうな、もしキャスリン様か子かと聞かれたら即答するだろう。
「出産は命懸けよ、私は死ねない。ゾルダークは閣下を失えないわ。もし、危険な状態になったら貴方は迷わず私の命を救って、私が子を選んでもよ。ハンクは後を追ってくるわ…ああ駄目ね。不安定なの、怖いの。この子を失いたくない、この子が愛しいのよ。おかしなことばかり考えてしまう。よく考えたのよ、それでも…堂々巡りね…」
キャスリン様は腹を撫でながら泣いている。腹の子より自分の命を選ぶ未来を想像してるのだろう。懐妊されてから愛されていた子だ。大切に決まっている。
「若奥様、思い悩む必要などございませんよ。もし、若奥様も子も儚くなってハンク様が追いかけましてもギース様がいらっしゃる。ハンク様が儚くなったと聞けば喜んで王都に来ます。ゾルダークの心配は無用ですよ。カイラン様も種馬として働くでしょうな」
キャスリン様は泣きながら笑いだした。
「カイランは種馬なのね」
私はキャスリン様の頬にハンカチをあてる。
「ソーマ!どうしてあのハンカチを閣下に渡したの?断れないのはわかっているのよ、それでも恥ずかしいわ。安い生地なのよ、ダントルに渡せばよかった」
ああ、知ってしまわれたか。頂いたと報告をしたら寄越せと奪われてしまった。
「ああ、ハンク様が持っておられた味のある家紋ですな、大切にしておりました」
「どうしてオットーさんが見てますの?」
「大旦那様に会いに来られたときに大切に懐に仕舞っておりましたよ、ご自分で洗われている姿には…目を疑いました」
キャスリン様は顔を赤らめ俯いてしまった。怒るに怒れない状況だな。主もかわいいことをする。
「若奥様に聞いておきたいことがあったのです。ハンク様のお顔を気に入っているとは言い過ぎでは?」
「なぜ?険しいお顔が素敵だわ。目元なんて鷲に似て鋭くて厚い唇も素敵よ。閣下の素敵なところは沢山あるのよ。お髭があっても素敵だったわね、ソーマ。逞しい体も素敵よ…ふふ」
本気で仰るからお二人は出会うべくしてと私は思う。オットーさんは目を丸くしてしまった。お互いが骨抜きなのを理解しただろうか。
「そうですか。ようございました」
納得したろうか、大旦那様に報告するのだろうが、信じるかはわからないな。
もう乳母は出産した、後はキャスリン様の子を待つのみ。
キャスリン様はダントルと共に大きな腹を抱えて邸へと歩いていく。
「大旦那様は信じないだろうなぁ、しっかり報告はするがね」
器を片しながらオットーさんに尋ねる。
「大旦那様が王都に来るなど本気で?」
笑顔のオットーさんはキャスリン様の姿を目で追いながら答える。
「無理さ。出産間近の女性は不安定になる。まだ若く初産だ。ああ言っておけば気は逸れる」
キャスリン様を安心させるためか。
「だが、現実になった場合はカイラン様に種馬になってもらうのは決定だな」
久しぶりに夕食を食堂で過ごした。ハンクの寝室で取ることに慣れてしまっていたから、つい話しかけそうになってしまった。食後の紅茶の時はカイランと乳母の話をしてハンクは黙って聞いていただけ、それからは私の手をとり、ハンクの自室へ向かった。
「そろそろ新しい浴槽が届く」
本当に頼んだのね。
湯を沢山運ぶのはメイドなのに、苦労をかけてしまうけど嬉しい。
「楽しみね」
寝台に横たわり後ろから私を抱き締め頭に口をつけている。
「俺はお前を選ぶ」
ソーマ、全てを報告するんだから。
「知ってるわ」
「お前の想像通りだ、後を追うぞ」
「ええ、そうよね。思い悩むなとオットーさんに言われたわ」
出産が近くなって臆病になってしまった。
「老公爵様がどうにかすると言ってくれたの、なんだか軽くなったわ」
ハンクのいないゾルダークは弱くなる。ディーターにもよくないことよ。でも老公爵はまだ元気だもの、カイランが頑張ればまたハンクを創るかもしれないわね、なんとかなるわ。
「ああ、お前は心配し過ぎだ」
ハンクは硬い陰茎を擦り付ける。手は胸を揉み唇で耳を挟んでは舐めてる。夜着を捲り下着をずらし熱い陰茎をあてる。
「濡れてるぞ」
先で入り口を撫で少し入れて馴染ませている。
「悪戯するからよ」
日中に子の部屋でカイランがいるのにあんなことをして。
「はやくっ」
「待て」
夜着の上から頂を転がして、耳を舐められるのは腰が震えるのよ。
「ハンクっ奥を突いてっ」
「好き者になったな」
陰茎の先を入り口が締め付けるのを感じる。体が震え快感が通りすぎ強ばる。
「達したのか?」
ハンクは震える体の中へ陰茎を突き刺した。強い衝撃が頭まで伝わり奥まで痺れる快感に嬌声が止まらない。中を陰茎が動き回る。ハンクは激しく腰を私に叩きつけ視界が揺れる。指で頂を潰しながら肩に歯をたて噛んでいる。肩から伝わる痛みまで気持ちいい。
「注ぐぞ」
何も答えられない、ただ喘いでいるだけになってしまった私の中へ熱い子種が流れてくる。ハンクは私の顎を掴み口を合わせ唾液を飲ませようと流してくる。
「ちゃんと飲め」
震える私に意地悪を言う。
「ハンク…」
「ああ」
「このまま」
「ああ」
抜かないでほしい。口を開けもう一度流してもらう。大きな口が私に食らいつく。