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「分かったって!」
幾ヶ瀬の計画はこうである。
朝食後、2人で遊園地へ出かける。
色々な乗り物に乗るのだが、観覧車は外せないらしい。
初チューの思い出を語りながら、中でキスをするイベントが発生するそうだ。
そのあと一緒に雑貨屋へ行き、おそろいのスープカップを買い、夕食はレストランへ。
夜も当然一緒だ。
僅かな隙間すら許さないくらいに密着して愛を確認するということだ。
「キッモ!」
とっさに口走ってしまった有夏を責めることはできまい。
たしかに幾ヶ瀬の乙女思考は日々ムクムクとあらぬ形へ成長していっている気配がある。
「有夏ぁ、デートしたいんだよぉ。俺はぁ」
「は? なにいって……」
縋るような口調に、有夏は顔をしかめる。
「ヤることヤっといて、今更デートもクソもねぇだろ」
「な、何てことを……有夏っ!?」
幾ヶ瀬が絶句する。
彼としては遊園地でなくとも良いのだろう。
恋人と2人で出かけたいという、それはささやかな望みの筈だ。
だが、極力外へ出ようとしない有夏に対しては過ぎた要求であるのも、また確かなことで。
双方、揉めたいというわけでは決してないのに、何となく気まずい沈黙が続く。
それを破ったのは幾ヶ瀬の方であった。
「行こうか、有夏」
「は? どこに……」
身構える有夏に、彼は柔らかく微笑みかける。
「コンビニ。一緒にアイス買いに行こう」
「う、うん……」
差し出された手を、ぎこちなく取る有夏。
瞬時に指を絡め、強く握られて耳朶を赤らめる。
「手繋いで行くよ」
「ヤだよ、恥ずかしい」
玄関で靴を履きながら、幾ヶ瀬の動きが一瞬止まった。
「今の、もっかい言って」
「今の……なに?」
見ると幾ヶ瀬はニヤつきながら有夏の腰のあたりを凝視している。
「……お前はホントに気持ち悪ぃな」
ヒドイと返しながらも、幾ヶ瀬の顔はニヤけたままだ。
「そんな容赦ない有夏が好き。だけどベッドでの素直な有夏も大好き」
「なに言って……」
「だってベッドじゃ全然違うんだもん」
「だからなに言ってんだよ。お前のが全然違うわ」
靴箱の引き出しから鍵を取り出した姿勢のまま、幾ヶ瀬が固まる。
「じゃあさ、普段の俺とベッドの俺。どっちがいい?」
「全然違うんでしょ」
握られた手に、どちらともなく力が加えられる。
どっちともう一度問われて、有夏は視線を逸らせた。
目元が赤く染まっている。
「……ベッド、かな。いや、でも」
幾ヶ瀬は履きかけていた靴を脱いだ。
有夏の腰にスルリと手を回し、顔を近づける。
「ね、初チューのこと覚えてる?」
「なに言って……わ、忘れたよ」
視線が泳いでいる。
呼吸が早くなり、何かを期待しているのか、有夏の唇が微かに震えた。
「嘘。ちゃんと覚えてるくせに」
ゆっくり顔が近付き、唇が微かに触れ合う。
柔らかな果実をついばむように、幾ヶ瀬は何度も有夏の下唇にキスをする。
「ベッド、行く?」
「ん……」
言いながらも、2人はその場から動こうとしない。
何度も唇を重ね、互いの頭をかきいだくように抱きしめると舌を絡め合う。
「こんな……じゃ、なかった、かな」
「ん?」
「さいしょ……もっと、やさしかった……」
喘ぐように呼吸を繰り返して、有夏。
潤んだ双眸で目の前の男を見つめる。
「ちゃんと覚えてるじゃない」
「うるさ……んん」
有夏の頬をぺろりと舐めあげてから幾ヶ瀬は一瞬、手を放した。
その僅かな間に有夏の短パンを下着ごとずり下ろし、自分の前もはだける。
「有夏、足あげて」
「え……?」
彼の足の間に左手を差し込むと、有夏の右足を持ち上げた。
もちろんバランスを崩さないように、右手を腰に添えて支えてやる。
「大丈夫だよね?」
「なんで大丈夫って言える!? ちょっ……ムリムリ! ムリだっ……て」
語尾が掠れた。
熱い塊を圧し当てられ、有夏は息を詰まらせる。
小刻みに振動を加えるように亀頭が侵入を図る。
「ちょっ、いくせっ……やっぱベッド……」
片足を高くあげられ、背中は壁に押し付けられ。
かろうじて立っているものの、幾ヶ瀬のモノから液が溢れて、入り口に擦り付けられるたびに足は震える。
「俺につかまって」
ゆっくりと内部へ入って来る圧を感じながら、有夏は言われるがままに幾ヶ瀬にしがみついた。
「うぁ……へんなとこ、あたって……」
不自然な体勢での挿入だから、普段とは受ける刺激が違うのか。
しがみつく手がブルブル震える。
「いくせぇぇ……」
「ん、有夏可愛い……」
先走り液をとくとく溢れさせながら、幾ヶ瀬のモノは有夏の内壁をこじ開けて奥へと到達する。
「んんっ、いきなり……いれたら、イヤだってば。いくせっ」
僅かに視線を下へ転じれば、押し広げられて赤くなった入口が、太い肉棒を呑み込みきゅうきゅう締め付けている光景が見える。
一瞬、その様を見てしまい、有夏は慌てて目を逸らせた。
「動いていい?」
「やぁぁ……」
幾ヶ瀬が腰を揺すると、徐々に精液と内壁が馴染んでいくようにいやらしい音が溢れる。
有夏の呻き声も切なげな吐息に変じていった。
「……気持ちいい?」
「んっ……」
有夏の足がビクリと痙攣するたびに、幾ヶ瀬は満足そうに頬を緩める。
自分の僅かな動きにすら、有夏がどうしようもなく感じているのが分かるから。
「んぁぁ……いくせっ……」
震える腕に必死に力を込めて、幾ヶ瀬の首筋にしがみつく。
そうしなければ崩れ落ちてしまうから。
「有夏、ねぇ……有夏」
「んっ……なに?」
有夏の首筋に顔を埋め、思い切り息を吸い込む。
「覚えてるでしょ? 初めてのチュウ」
「まだ、その……はなし……」
あの時のチュウ、もっかいしよ──そう囁いて、幾ヶ瀬は有夏に唇を寄せた。
下唇が微かに触れ合った瞬間、繋がった箇所がビクンと大きく震える。
「あぅ……っ……」
互いに強く抱き合いながら、大きな震えに全身を預ける。
「ありか、好きだよ……」
「うん……」
ズルリと抜かれた瞬間、足の拘束を解かれ、有夏は壁にもたれたまま滑り落ちるようにその場にズルズルと座り込む。
その腕を幾ヶ瀬がつかんで助け起こした。
「有夏、ベッドに行こっか」
「んぁ? コンビニは?」
この期に及んでアイスなどいらないと、幾ヶ瀬は呆れたような笑みをこぼす。
「どこも行かなくていいや。ずっと2人でいよ」
「ずっと?」
微かな笑い声が漏れる。
「何? 有夏、どうしたの?」
ううん、と首を振る有夏。
「ずっととか言われたら、有夏……照れるな」
幾ヶ瀬の頬が赤く染まった。
「そ、そういう意味じゃ……。いや、そういう意味でいいんだけど……」
「うん……」
顔が近付く。
唇が触れ合う。何度も、何度も。
「記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派」完
※明日から始まるのは「幾ヶ瀬Present’s愛と笑いの怨念チャンネル」というお話です。
タイトルからお察しのとおり、少し…わりと…まぁまぁふざけたターンですが、笑ってくださったらこのうえなく嬉しいです※
【予告】「幾ヶ瀬Present’s愛と笑いの怨念チャンネル」
──これは、幾ヶ瀬ハッスル回のひとつである。
──つまり、問題作という見解もできよう。
忙しさからすっかりやつれ、店長を呪う言葉を吐く幾ヶ瀬。
ついに仕事を辞める決意をしたようだ。
「YouTuberに、俺はなる!」
深夜(←いや、夜の8時ごろ)近所の学校に忍び込んだ彼らはそこで、一連の恐怖(?)を体感することになるのだった。
今回のお話は、すっかりご無沙汰のお隣りさんのツッコミとともにお送りします。