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めんだこ
#オリジナル
夕暮れの駅前。
透は人の姿で、ベンチに座っていた。
もう無理に化ける必要はない。
今日も、人として立っている。
「それ、無理してない?」
不意に声がかかる。
振り向くと、年齢も性別も定まらない人物が立っていた。
服装も、雰囲気も、どこか流動的で、透と同じ匂いを感じる。
「匂いが似てたんだ」
「形を変えられる匂い」
透はすぐに気づいた。
——自分と同じように、能力を持つ人だ。
「……俺、犬でした」
「俺は水に化けられる」
その人はにっこり笑い、風が吹く駅前を見つめる。
静かだが、心強い空気が流れた。
透は、自分の胸の奥を見つめる。
ユイはいない。
でも、彼女が遺した力と記憶が、自分を支えている。
「逃げなくてもいい」
——そう小さく呟く。
化け犬は足元で静かに座っている。
影は、吠えず、ただ傍にいる。
透はそれに気づき、軽く微笑んだ。
そして歩き出す。
人として、
選んだ姿のままで。
何やってもうまくいかない
それでも
人で生きていける場所は、確かにある。
影はもう、吠えない。
隣を歩くのは、ユイの残した存在と、新たに出会った同じ匂いの誰か。
ーー終わり