返ってくる言葉は無かった。
静寂。
どうしようもなく怖かった拒絶の言葉。
その言葉さえも、聞こえない。
その静寂が、拒絶以上の何かを表している様に感じて。
1人だった部屋に聞こえていた彼の声。
その声が聞こえなくなった今、
本当に独りになってしまった様な気がしてならない。
この感情を受け入れて貰えなかったとしても、傍に居れるならそれで良い。
独りになるぐらいなら、 それで良かったのに。
聞きたくなかった拒絶の言葉さえもを
求めてしまう自分がいる。
永遠にも思える程長いこの一瞬に、震える息を吐き出す。
置いていかれる?また、独り?
今迄通りにはなれないなんて、分かっていた。
それでも若井と居れるなら、って。
もし、若井が離れていくとしたら?
今迄通りに話しかけてくれたとしても、
変わらずに優しくしてくれたとしても、
そこには距離があるのだとしたら。
息が上手く出来ない。
今以上の関係を望む資格なんて無い。
今迄の関係に戻す事も出来ない。
なら、今以下の関係になってしまうのだろうか。
「……元貴、」
あ、だめだ。
これ以上は、聞けない。
「……っ、これで終わりにするから…っ!」
次に続く言葉なんて聞きたくなくて、思わず若井の声を遮る。
その先なんて知りたくない、教えないで。
「……もう、諦めるから……」
今のままでいいよ。
この関係が続くことでどれだけ辛くなろうが、それで一緒に居れるなら。
「…………ごめん、今言ったこと忘れて。」
本当はこんな事言いたくなかった。
この言葉で、結局全て無駄になる。
でも今は全部無かったことにしたい。
今のまま好きだと言える程、強くないから。
「………忘れる、って……」
我儘ばっかりだよね。ごめん。
これで最後だから。
「…お願い。俺がそうしたいから。」
「………分かった。」
しばらく間があって、一言。
この一言を自分で欲したくせに、どうしようもなく苦しい。
「…ありがと。じゃあね」
言葉が返ってくる前に、通話を終了した。
どうせ何も返って来ないだろうけど。
数分前までやり取りしていたトーク画面を見つめる。
メッセージ、待ってても無駄なんだって事ぐらい分かってるのに。
本当にこれで良かったの?
また。またそんな風に考えてしまう。
良かったかなんて誰にも分からないのに、誰かに答えを教えて欲しくて。
いくら待ち続けても返信のないトーク画面を閉じる。
忘れて欲しい、そんな我儘を若井は聞いてくれた。
それなのにこの感情を消せないのは、
忘れられないのは、
俺の方だった。
コメント
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いっちっさんっっ!! じょ、情緒がっ、私の情緒がっっ!!! ダメです私……めちゃくちゃ感情移入して読んでます……今この滾った気持ちをいちさんにお伝えしたく思っているのですが現在難しい所存です……。 ですのでこの荒ぶった感想コメントで察していただけると幸いです。