TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

       七

 

 ロスタイムを含めても、残り十分ほどとなった。スコアは一対一。相変わらずビジャルは高いストライカー能力を発揮し続け、ゴールを脅かし続けた。

 神白は苦痛に耐えつつ、ディフェンスを動かしてはセーブを続けた。ヴァルサ攻撃陣も神白の奮闘に燃えたのか、レオンを中心に惜しい攻めを繰り返していた。

 敵がフリーキックを得た。キッカーの5番がボールを地面に置き、四歩退いた。

 ゴール前では両チーム会わせて十人強の選手たちがポジション争いを繰り広げている。相手のエース・ビジャルのマーカーはアリウムだった。鋭い表情で、ビジャルの敏速な挙動に従いていっている。

 走り込んだ5番がキックした。低弾道のボールが、ニアポスト(ボールに近い側のゴールポスト)へと飛んでくる。

 ビジャルが駆けた。身体を横に倒して跳んだ。真横から右足を振り抜いて、ボレーシュートを放つ。

 アリウムが足を出した。ビジャルのシュートは妨害され、ボールはコーナーへと転がっていく。

 敵の3番が拾いに行った。滑り込んで、コート外に出かけたこぼれ球を確保。ヴァルサ8番が当たるが、左に切り返し躱してクロスを上げる。

 ふわりとした球がゴール真正面に飛んだ。ビジャルはアリウムに競り勝ち、高い打点でヘディングした。

 神白は瞬時に反応。叩きつけるシュートに飛び込み、左手一本で弾いた。

 ボールが零れた。ビジャルが詰める。

 だが神白は、地に付いた膝を基点に前に倒れた。両手でがっちり捕まえると、上半身でボール上を覆う。

「ナイスキーパー!」エレナから澄んだ声援が届いた。神白はさっと立ち上がり、前方に視線を向けた。

 前線の左サイドでは、天馬だけが敵陣に残っていた。ジムナスティコは、2番一人が天馬に付くのみで他はキーパー以外いなかった。

(侑亮!)閃きを得た神白は、近くに転がして力いっぱいキックした。キャッチしてから蹴るまでを全力で早くした。

 高速パスが天馬に向かう。両チームのメンバーが、ジムナスティコ陣へと流れ込む。

 ボールが落ちてきた。天馬の右足にぴたりと付けるコースだ。

 天馬、バウンド直後を左足外側ですらした。2番の股をボールが通過する。

 一瞬の後に、天馬自身は反転。2番の右を抜き去る。

 キーパーが詰め寄る。ボールは両者のちょうど中間。どちらが先に触れてもおかしくない位置だった。

 天馬はにゅっと右脚を伸ばした。爪先でコツンと突き、キーパーの股を抜いた。

 手を突き、天馬は立ち上がった。筋肉の詰まった両足で地を蹴り、凄まじい加速を始める。

 一秒も経たずに、天馬はボールに追いついた。ちらりと無人のゴールに目を遣り、インサイドで緩く転がした。

 ボールがネットを揺らした。天馬は振り返った。すぐに疾走を開始し、十歩ほど行くと右手を大きく掲げて跳躍した。満足げな大きな笑顔は、少年らしい無邪気な喜びに満ちていた。

(やってくれたな! 侑亮! 難しいボールを見事に収めて、二人連続で股を抜いてシュート! いつもにも増してキレッキレじゃないかよ!)

 神白は誇らしい思いで、チームメイトに囲まれている天馬を見つめていた。頭をぶつけた痛みも、今は遠ざかっているように感じられた。

 

       八

 

 ロスタイムに突入した。天馬の勝ち越しゴールでヴァルサは完全に流れを掴み、押せ押せの展開だった。

 敵の7番が零れ球を拾った。場所はセンターからややヴァルサ陣地側だった。

 審判がちらりと時計を見た。試合終了は近かった。

 7番がパスを出した。ゴロのボールが、ヴァルサ守備陣の間を通過する。

「キーパー!」神白は叫んで飛び出した。詰めて来る8番より先に到達し、足の内側で前に出す。

 瞬時に前を見た。レオンが空いていた。神白はすかさずパスを転がす。

 受けたレオンはくるりと反転。右前の9番に出して、猛然と上がり始める。

 9番はダイレクトで真横の7番へ。7番も止めずに斜め前に出す。

 鮮やかなワンツーでディフェンスを躱し、9番は縦にドリブルする。

 敵2番がフォローに来た。9番はストップし、踵で後方に出した。狙いは真後ろのレオンだ。

 レオン、ゴール前を確認し右足でパス。内巻きのボールが守備の隙間を抜けた。

「3点目のチャンスっすね!」貪欲に吠えた天馬が追い付いた。キックのモーションに入るが、敵3番が遅れてスライディングを掛ける。

 天馬、スイングを急停止。シュートと見せかけて、左足で真横に転がした。

 反応したのはレオンだ。終了間際とは思えないスピードで駆け寄っていく。5番が追いつつ肩でぶつかるがびくともしない。

 レオンはボールに到達した。左足を振り被る。

 一瞬ののちに、凄まじい速度のシュートが放たれた。

 ボール右隅に飛んだ。ネットを揺らした。キーパーは一歩も動けなかった。

 三対一。ヴァルサ、ダメ押しの追加点だった。

最後列のファンタジスタ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

41

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚