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りちゃ
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聖次
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浜瀬一斗はまだ諦めない
天城玲奈が生徒会に入った日、一斗は少しだけ驚いていた。
「生徒会入りたいです!」
勢いよく頭を下げる玲奈。
明るくて元気で、人と話すのが上手い。
生徒会には珍しいタイプだった。
「よろしくお願いします!」
「よろしく。」
実瑠が答える。
最初は少し硬い表情だったが、一斗は気づいていた。
実瑠が玲奈を嫌っているわけではないことに。
むしろ。
興味を持っていることに。
「会長ー!」
「なに。」
「会長って甘いもの好きですか?」
「普通。」
「普通って何ですか。」
「普通は普通。」
「わからないです!」
そんなやり取りをしている二人を見ながら、一斗は小さく笑った。
会長になってからの実瑠は以前より柔らかくなった。
けれど相変わらず恋愛方面だけは壊滅的だった。
⸻
一斗が実瑠を好きになったのは一年生の春。
生徒会選挙の日だった。
それから一年以上。
ずっと好きだった。
しかし。
進展はほぼない。
「会長、一緒に帰る?」
「今日は図書委員の仕事がある。」
「じゃあ終わるまで待つ。」
「待たなくていい。」
「なんで。」
「時間の無駄。」
終了。
また別の日。
「会長、髪切った?」
「切った。」
「似合う。」
「ありがとう。」
終了。
さらに別の日。
「会長。」
「なに。」
「好きな人いる?」
「いない。」
終了。
女子たちなら赤くなったり照れたりする場面でも、実瑠は真顔だった。
もはや才能かもしれない。
⸻
玲奈が加入して一ヶ月ほど経った頃。
生徒会室には妙な光景ができていた。
「会長ー!」
「なに。」
「お昼食べましょう!」
「いいけど。」
「やった!」
玲奈が喜ぶ。
実瑠はため息をつく。
しかし断らない。
以前なら距離を取っていたはずなのに。
気づけば玲奈の隣にいることが増えていた。
その様子を見ながら、一斗は少し安心していた。
実瑠は友達が少ない。
本人は気にしていないが、一斗は少し気にしていた。
だから玲奈が来てくれて良かったと思っていた。
⸻
ある日の放課後。
生徒会室。
玲奈が突然言った。
「浜瀬先輩って好きな人います?」
「いるよ。」
玲奈の目が輝く。
「え!?誰ですか!?」
「秘密。」
「気になります!」
玲奈は身を乗り出した。
すると。
隣で書類を整理していた実瑠がぽつりと言う。
「聞かなくていいでしょ。」
「えー!」
玲奈が不満そうな声を上げる。
しかし一斗はその瞬間を見逃さなかった。
実瑠は気づいていない。
本当に無意識だ。
けれど。
ほんの少しだけ機嫌が悪そうだった。
(まさか。)
期待しそうになる。
しかし。
すぐに打ち消す。
そんなわけない。
実瑠だ。
恋愛に関しては世界一鈍い。
期待して傷つくのはもう慣れていた。
⸻
六月。
玲奈は一斗に恋愛相談を持ちかけるようになった。
「先輩。」
「ん?」
「好きな人にアピールするならどうします?」
一斗は苦笑した。
「相手によるかな。」
「じゃあ会長だったら?」
「会長?」
「はい。」
玲奈は少し笑った。
「会長って全然気づかなそうじゃないですか。」
一斗は思わず吹き出した。
「確かに。」
「ですよね!」
「たぶんストレートに言わないと気づかない。」
「難しいなぁ。」
難しいどころではない。
一斗は一年以上挑戦している。
未だに気づかれていない。
⸻
七月。
夏祭りの準備。
玲奈は浴衣のパンフレットを見ていた。
「会長、どれがいいと思います?」
「どれでも。」
「適当!」
「じゃあこれ。」
適当に指さす。
「じゃあそれ買います!」
「本当に?」
「会長が選んでくれたので!」
玲奈は楽しそうだった。
その様子を見て実瑠も少し笑った。
本当に少しだけ。
けれど一斗にはわかった。
(笑った。)
嬉しくなる。
実瑠の笑顔は貴重だ。
⸻
そして夏祭り当日。
玲奈は浴衣姿で現れた。
「どうですか!」
「似合ってる。」
「やった!」
玲奈は喜ぶ。
その後。
玲奈は自然に一斗の隣へやってきた。
「浜瀬先輩、一緒に写真撮りません?」
「いいよ。」
写真を撮る。
玲奈は嬉しそうだった。
だが。
その時。
一斗は別の方を見ていた。
少し離れた場所。
実瑠がこちらを見ていた。
正確には。
玲奈と一斗を。
ほんの一瞬。
目が合う。
すると実瑠はすぐに視線を逸らした。
どこか不機嫌そうな顔だった。
一斗は固まる。
今までなら何とも思わなかった。
しかし。
今年に入ってから何度か見ている表情だった。
玲奈と話している時。
玲奈と並んでいる時。
玲奈が自分を褒めた時。
実瑠はいつも少しだけ不機嫌になる。
まるで。
嫉妬しているみたいに。
(いや。)
期待するな。
そう言い聞かせる。
何度も勘違いしてきた。
何度も期待してきた。
でも。
祭りの帰り道。
どうしても考えてしまった。
もし。
本当に少しだけでも。
実瑠が自分を意識してくれているなら。
もし。
一年以上続けた片想いに。
ほんの少しでも希望があるなら。
諦めなくてもいいんじゃないか。
夜空を見上げる。
遠くで花火が上がった。
「もう少しだけ頑張ってみるか。」
誰にも聞こえない声で呟いた。
コメント
1件
わあっ、一斗先輩視点の番外編、めっちゃ良かったです…!😭💕 実瑠会長への片思い一年以上って重すぎるし尊すぎる…!「時間の無駄」「ありがとう」「いない」で全部終了する会長、強すぎるでしょ笑 でも玲奈ちゃんが来てからの会長のちょっとした変化、一斗先輩はちゃんと見てるんだなあって思ったら胸がギュッとしました。夏祭りの嫉妬っぽい表情、期待しちゃうよね…!「もう少しだけ頑張ってみるか」のラスト、心の中で全力で応援したくなりました✨ 続きが気になりすぎる…!