観音は飛行機の座席に座り、手のひらを軽く膝に置いた。その落ち着いた姿勢はまるで、何事もないかのように見えた。だが、彼女の心の中はいつも戦闘の準備ができていた。彼女の異能、いや、力は一度発動すれば、想像を絶するものだ。
飛行機が穏やかな空の上を滑る中、突然、機内の一部で騒ぎが起きた。大きな音が響き渡り、乗客たちのざわめきが広がる。
「皆さん、座席にお戻りください!」
乗務員が慌てて声をかけるが、すでに状況は手遅れだった。
数人の男たちが後ろから出てきて、銃を手にしていた。機内はハイジャックされてしまったらしい。観音はその動きに気づいた瞬間、冷静に状況を分析した。
「悪いことをしましたね。」
観音の声は静かだった。だがその言葉に、空気が一変した。不安げに観音を見つめる中、彼女はゆっくりと立ち上がった。
一人のハイジャック犯が観音に銃を向け、威圧的に言った。
「動くな、女!お前も巻き込まれるぞ!」
観音はその言葉に反応せず、むしろ微笑んだ。
「巻き込まれるのはあなたたちの方ですよ。」
観音は静かに呟くと、目を閉じた。次の瞬間、彼女の体から放たれる圧倒的なオーラが、周囲の空気を震わせた。
観音は、「慈悲の力」だった。その力は、敵の心を抑え込み、無力化することができる。ただし、単に精神を抑え込むだけではなく、対象の行動を完全に無効化することもできる。そのため、観音が一度手を出せば、相手の死をも確実に招く。
「その銃を下ろしなさい。」
観音は、冷ややかな口調で言った。言葉には、命令でもなく、ただ事実を告げるような響きがあった。その瞬間、ハイジャック犯はまるで自分の体が言うことを聞かないかのように、銃を下ろしてしまった。
その様子に他の犯人たちは一瞬戸惑ったが、すぐに反応した。
「何だ!? どうなってんだ!」
別の男が観音に向かって走り寄る。だが、観音は一歩も動かなかった。
犯人たちは観音に立ち向かおうとしたが、彼女の力には全く及ばない。その間に、観音は素早く全てのハイジャック犯を無力化していった。「観音…」
観音を見守っていた乗客の中には、驚きと畏怖の混じった表情を浮かべている者もいた。彼女の力があまりにも強大すぎて、反撃することが不可能に思えたからだ。
「お前たちはただの人間にすぎない。私に従えば命は助けてやる。」
観音の言葉は優しいようで冷徹だった。彼女の力の前に、誰もが屈服せざるを得ない。
ハイジャック犯たちは、観音によって一度動きを封じられ、すぐに動けなくなった。しかし、観音が一歩踏み出すたびに、その空気は一層凍りついていった。
一人の男が、最後の抵抗として銃を抜き、観音に向かって発砲した。しかし、銃弾は観音の体に触れることなく、まるで時間が止まったかのように空中で静止した。
「…無駄ですよ。」
観音の口元に、微かな微笑みが浮かんだ。彼女が指を動かすと、銃弾はゆっくりと元の位置に戻り、男の手から放たれた。
その瞬間、全ての犯人は膝をつき、観音の足元に崩れ落ちた。
飛行機は、すぐに制圧され、乗客たちの安全は守られた。観音は何事もなかったかのように、再び座席に戻り、ゆっくりと目を閉じた。
「平穏が戻る。」
観音は、静かな声で呟き、乗客たちが恐れを抱いている中で、その場を支配した。
その後、警察が到着した際、観音は何事もなかったかのようにその場を去り、再び姿を消した。彼女の力は、常に目立たずにその場を去ることを望んでいたのだ。
だが、今回の出来事が後々、観音という存在が狩り手の中でも異能者の中でも特別な立場を占めることになる契機となったことは、誰もが気づいていなかった。
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初 コ メ 失 礼 し ま す 、 ! ミ ス テ リ ア ス ? み た い な 物 語 が し て 、 す ご く お も し ろ い で す っ !