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ゆゆゆゆ
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その日。
FORSAKENの館では平和な昼下がりが流れていた。
少なくとも。
五分前までは。
アズールは書類を抱えて廊下を歩いていた。
ホスフォラスは窓辺で昼寝。
ノスフェラトゥは離れた場所で本を読んでいる。
いつも通りだった。
すると。
廊下の向こうからスペクターが現れた。
赤いシルクハット。
優雅な足取り。
そして。
「アズール」
「はい?」
「そこに座りなさい」
優しい声。
ただそれだけ。
次の瞬間。
シュバッ!!
「!?」
アズールではない。
遠くで本を読んでいたノスフェラトゥだった。
ものすごい速度で床へ移動。
背筋を伸ばし。
両膝を揃え。
完璧な正座。
いや。
もはや犬のお座り。
館全体が静まり返る。
アズール。
ぽかん。
ホスフォラス。
二度見。
スペクター。
一瞬だけ固まる。
ノスフェラトゥ本人も固まった。
「……」
「…………」
「………………」
何故座っている?
理解できない。
本当に理解できない。
「な」
膝が震える。
「違う」
誰も何も言ってない。
「違う」
まだ誰も何も言ってない。
「私ではない!!」
突然叫んだ。
「身体が勝手に!!」
アズール、崩壊。
「アハハハハハハハ!!!」
ホスフォラスも吹き出す。
「待って待って待って!」
「条件反射!?」
ノスフェラトゥは顔面真っ赤。
「私は命令されていない!」
「知ってる!」
「聞いていたのはアズールだ!」
「知ってる!!」
「なのに身体が!!」
アズール、壁を叩きながら笑う。
「身体がって何!?」
「犬なの!?」
「違うッ!!」
しかし。
まだ座ったまま。
立てばいいのに。
なぜか立てない。
スペクターが口元を押さえている。
笑いを堪えている。
珍しい。
「……ふふ」
耐えきれなかった。
ノスフェラトゥは死にたくなった。
ホスフォラスが言う。
「試してみよう」
嫌な予感しかしない。
ホスフォラスが指をさす。
「お座り」
シュバッ!!
ノスフェラトゥ着席。
「違う!!」
立ち上がる。
アズール。
「お座り」
シュバッ!!
再着席。
「やめろォ!!」
館中に響く悲鳴。
もはや実験動物だった。
スペクターは肩を震わせながら近付く。
ノスフェラトゥ。
涙目。
「笑うな……」
「ごめん」
全然ごめんと思ってない顔。
スペクターはしゃがみ込む。
「大丈夫」
優しい声。
ノスフェラトゥは少し安心した。
すると。
「よしよし」
頭を撫でられた。
ノスフェラトゥ。
反射的に目を閉じる。
アズール。
「うわぁ……」
ホスフォラス。
「完全に犬だ……」
ノスフェラトゥ。
「殺す」
しかし。
座ったままだった。