テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#チャンス
あおっちӦ(あおあお)
275
125
その日。
FORSAKENの館では平和な昼下がりが流れていた。
少なくとも。
五分前までは。
アズールは書類を抱えて廊下を歩いていた。
ホスフォラスは窓辺で昼寝。
ノスフェラトゥは離れた場所で本を読んでいる。
いつも通りだった。
すると。
廊下の向こうからスペクターが現れた。
赤いシルクハット。
優雅な足取り。
そして。
「アズール」
「はい?」
「そこに座りなさい」
優しい声。
ただそれだけ。
次の瞬間。
シュバッ!!
「!?」
アズールではない。
遠くで本を読んでいたノスフェラトゥだった。
ものすごい速度で床へ移動。
背筋を伸ばし。
両膝を揃え。
完璧な正座。
いや。
もはや犬のお座り。
館全体が静まり返る。
アズール。
ぽかん。
ホスフォラス。
二度見。
スペクター。
一瞬だけ固まる。
ノスフェラトゥ本人も固まった。
「……」
「…………」
「………………」
何故座っている?
理解できない。
本当に理解できない。
「な」
膝が震える。
「違う」
誰も何も言ってない。
「違う」
まだ誰も何も言ってない。
「私ではない!!」
突然叫んだ。
「身体が勝手に!!」
アズール、崩壊。
「アハハハハハハハ!!!」
ホスフォラスも吹き出す。
「待って待って待って!」
「条件反射!?」
ノスフェラトゥは顔面真っ赤。
「私は命令されていない!」
「知ってる!」
「聞いていたのはアズールだ!」
「知ってる!!」
「なのに身体が!!」
アズール、壁を叩きながら笑う。
「身体がって何!?」
「犬なの!?」
「違うッ!!」
しかし。
まだ座ったまま。
立てばいいのに。
なぜか立てない。
スペクターが口元を押さえている。
笑いを堪えている。
珍しい。
「……ふふ」
耐えきれなかった。
ノスフェラトゥは死にたくなった。
ホスフォラスが言う。
「試してみよう」
嫌な予感しかしない。
ホスフォラスが指をさす。
「お座り」
シュバッ!!
ノスフェラトゥ着席。
「違う!!」
立ち上がる。
アズール。
「お座り」
シュバッ!!
再着席。
「やめろォ!!」
館中に響く悲鳴。
もはや実験動物だった。
スペクターは肩を震わせながら近付く。
ノスフェラトゥ。
涙目。
「笑うな……」
「ごめん」
全然ごめんと思ってない顔。
スペクターはしゃがみ込む。
「大丈夫」
優しい声。
ノスフェラトゥは少し安心した。
すると。
「よしよし」
頭を撫でられた。
ノスフェラトゥ。
反射的に目を閉じる。
アズール。
「うわぁ……」
ホスフォラス。
「完全に犬だ……」
ノスフェラトゥ。
「殺す」
しかし。
座ったままだった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!