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〜あらすじ〜
手術を受けたkamomeは、翔の必死な励ましで恐怖をこらえながら挑む。
無事に目を覚ましたものの腫瘍は取り切れず、今後は薬で治療を続けることに。
それでも翔の隣がある限り、kamomeは再び前を向く決意を固める。
第六話 本編「時機到来、絶望の上回り」
白い廊下を流れていく天井の蛍光灯を、俺はぼんやりと目で追っていた。
担架の上。冷たいシーツに横たわりながら、心臓だけがやけに騒がしく響いていた。
──ついに来た。
検査結果が出たあの日から、いつかこの瞬間が来ると分かっていた。
でも現実は、想像していたよりも重くて冷たい。
「脳腫瘍を取り除くための手術」──言葉では簡単に聞こえても、その中身は命懸けだ。
緊張で喉がカラカラになっていると──
「かもめん!」
横から声が飛んできた。見れば、翔ちゃんが担架の横を小走りでついて来ている。
その顔は……いや、どう見ても泣きそうじゃん。
「お、お前な……手術前にビビり顔してどうするんだよw。こっちまで不安なるでしょ」
震えながらも茶化すと、翔ちゃんは眉を吊り上げて言い返す。
「はぁ!? お前の方が震えとるやないか! 歯ガチガチ鳴っとるぞ!」
「これは……ちょっと寒いだけやし」
「病院めっちゃ暖房効いとるわ!」
思わず笑ってしまった。
怖さで押し潰されそうだった胸が、少しだけ軽くなる。
──ほんと、翔ちゃんはずるいなぁ。こうやって笑わせてくるんだから。
やがて手術室の前に辿り着く。
看護師さんに「ここからは患者さんだけです」と言われると、翔ちゃんは俺の手をがしっと掴んだ。 握力、強すぎ。骨折れるかと思った。
「絶対帰ってこいよ。……なあ、かもめん。俺、隣のベッドでずっと待っとるから」
「……ああ。翔ちゃんがそこにいるなら、俺も戻るしかないな」
そう言ったら、翔ちゃんはいつもみたいにニカッと笑った。
その笑顔に送り出され、俺は手術室の扉の向こうへと吸い込まれていった。
麻酔が効き始めた瞬間、耳の奥で「大丈夫や」って声が聞こえた気がした。
──翔ちゃんの声か、それとも自分自身の声か。
分からないまま、意識は闇に沈んでいった。
次に目を開けたとき、視界はぼやけていて、頭も体も重かった。
消毒液の匂いが鼻を刺し、喉は焼けるように渇いている。
ぼんやり動く影の中で、真っ先に飛び込んできたのは──翔の顔だった。
「かもめぇぇぇん!!!」
「……っ、うるさい……」
鼓膜が割れるかと思った。術後の患者に向かって大声はやめろ。
でも翔ちゃんはおかまいなしで俺の手を握ってくる。
「生きとる! 生きとるやんか! ……ほんまによかった……」
「お前な……俺、ゾンビになったみたいな言い方すんなよ」
「ゾンビでもいいわ! 戻ってきてくれたら!」
「やめろ! 家族に紹介できへんやん!」
弱々しく笑った途端、目頭が熱くなった。
ふざけてるのに、涙が出そうになるのは反則だろ。
そこに医師が入ってきた。
「手術は無事に終わりました。ただ──腫瘍はすべて取り切れませんでした。今後は薬による治療を続けていきます」
その言葉が、胸にずしんと落ちてきた。
全部なくなったわけじゃない。まだ続くんだ、この戦いは。
絶望、かと思った。
でも翔ちゃんが真っ先に俺を覗き込み、涙をこらえながら笑った。
「……ほな、次は薬で一緒に闘ったらええやん」
シンプルすぎる言葉。だけどその真っ直ぐさが、心に刺さった。
「……うん。翔ちゃんが隣にいるなら、俺もまた頑張れる」
涙が頬を伝った。
でもその涙は、恐怖だけじゃなくて──希望も混じっていた。
戦いは終わらない。けれど俺は一人じゃない。
その確信が、術後のぼやけた世界で、はっきりと光っていた。
第6話はここまでぇぇでぇぇす!
今回はkamomeさんをゾンビにしてみました!嘘だけど!
閲覧数表示されないんで見てくれたらいいねよろぴくね〜!