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〜あらすじ〜
手術を終えて目を覚ましたkamomeに、翔は涙ながらに「よかった」と安堵する──が、感動のはずが思わぬ笑いを呼ぶ展開に。
その後、kamomeはリハビリを始め、ぎこちない一歩に不安と笑いが入り混じる。
支える翔の存在に背中を押されながら、kamomeは少しずつ未来への希望を取り戻していく。
第七話 本編「歩行の力添え」
まぶたを開けた瞬間、ぼやけた視界の向こうに翔の顔が飛び込んできた。
目の下にクマができて、髪も爆発していて、いかにも「付き添いました」という姿。……いや、寝癖がアンテナみたいに立っているのはサービスか?
「……かもめんっ!」
翔ちゃんが声を震わせる。
「よかった……本当に良かった……!」
目に涙まで浮かべて。思わず胸が熱くなる。
──のも束の間。
「死ぬかと思ったで! お前、あんなのドラマだったら“主人公死ぬ回”やで! ほら、視聴率稼げるやつ!」
「おいおい、起きて数分で“死ぬ回”って言うなよ!」
かすれ声で突っ込む俺。すると翔ちゃんは、鼻をすすりながら笑った。
「でも……本当に生きててくれて、よかった……」
笑っているのに涙がぼろぼろ。なのに言葉は芸人のネタみたい。
胸がじんわり温かくなると同時に、こいつの泣き顔がちょっとおもしろくて、思わず吹き出してしまった。
「翔ちゃん、泣くのか笑うのかどっちかにして。顔の筋肉、渋滞してるよ」
「誰が顔面筋肉渋滞や!」
二人でベッドの上で笑った。痛いはずなのに、なんだか心まで軽くなる。
◇
数日後。俺のリハビリが始まった。
白い廊下、消毒液の匂い、そしてピカピカの床。看護師さんが用意してくれた歩行補助のバーを前に、俺は深呼吸する。
「よし、かもめん。いけ!」
「いける……かな。いや、いける!」
気合は十分。だが、足を前に出そうとした瞬間──。
「うおっ!」
グラリとバランスを崩す。バーにしがみついて、なんとか転倒は免れたけど、心臓に悪い。
「大丈夫か!? お前、バー握りつぶす勢いやぞ!」
翔ちゃんが大慌てで駆け寄る。
「いやぁ、俺、今日から新しい必殺技“バークラッシャー”習得したみたいだ」
「RPGだったら一発で武器壊すやつやん!」
二人でまた笑ってしまう。
笑ってごまかしてはいるけど、現実は甘くなかった。足に力が入らない。思うように動かない。
でも──横で翔が一歩一歩、同じように足を踏み出してくれる。
「ほら、俺も歩いとる。な? 一人じゃない」
そう言われた瞬間、胸にこみ上げるものがあった。
「大丈夫、大丈夫」って、今まで自分に言い聞かせてきた。けど本当は不安でいっぱいだった。
でも今は、翔ちゃんが隣で「一緒に歩く」って笑ってくれる。
それだけで、体が前に進んだ。
「……翔ちゃん」
「ん?」
「ありがとう」
「おう。礼は退院したら焼肉で返せよ」
「焼肉かよ!」
笑いながらも、俺は確かに一歩を踏み出していた。
まだ先は長い。腫瘍も残っている。薬も続けなきゃいけない。
でも、翔ちゃんがいる。笑って泣いて、支えてくれる。
──大丈夫だ。俺は、また歩いていける。
第8話はここまででございます!
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どうか…!この通りだっ
ウッ お願いしますぅぅぅ!
では、ここで次回予告
次回、第8話──
「翔、病院食にキレる!? かもめ、隣で爆笑!」
乞うご期待。