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#俺だけレベルアップな件
猫道
645
薙
5
猫道
212
彼女の手伝いを申し出てから約三十分
「ちょっとどういうことなの」
問い詰めてくる少女の視線は冷たく、視線を浴びるスバルに新しい発見をもたらしていた
「こんなに冷たい目で見られてるのに、ゾクゾクしている……まさか、この俺が……Mだっただと……?」
『昴はどちらかといえばMなんだと思うよぉ、幼馴染としての感想だけど』
「ひでえ!」
「1人で何言ってるの?」
「それに、エムはわからないけど、すごーくくだらないこと言ってるのはわかる」
散々な評価もだが、スバルの功績を正しく評価した結果と言えるだろう
捜査は非常に難航している
異世界召喚されたばかりのスバルと、このあたりの地理に疎いという少女には土地勘がない
そして、スバルと澪には字がちんぷんかんぷんだった
「難易度無意味に爆上げしすぎだろ……」
そして少女の不興を買った致命的な問題
「そもそも、さっきから私の後ろに隠れてばっかりで、全然役に立ってないけど」
「だって初対面の人と話すとか、ちょっと恐いし……」
「子どもじゃないんだから……」
スバル自身も懸念していた通り、そもそも初対面の相手に物事を尋ねるというハードルが異常に高かった
「安心しなよ。……彼、悪気だけはまったくない」
「より残念よ、いっそ妨害工作だっていう方が納得いくのに」
「それにしても…やっぱり、かなり厳しいかも」
場所は聞き込みを続けた結果、貧民街へと変わっている
「盗品をさばくならスラムか貧民街って話だったけど……」
「場所と相手の姿かたちはわかってるんだし、あとは警察……じゃなくて衛兵とかに任せるんじゃ駄目なのか?人海戦術が使えれば一発だぞ」
『私は昴から少しなら離れられるし、様子を見てこようか?』
「いや、澪は近くにいてくれ」
「ほんと、さっきから1人で何話してるんだか、ぼんやりと心が読めるボクにもさっぱりわからないよ」
「んなことはどうでもいいんだよ」
「それで、空気と雰囲気と、たぶん住んでる人間の性格も悪い。人呼んだ方が確実だ」
「ダメよ」
慎重に判断した上での提案だったのだが、それはぴしゃりと切って捨てられる
「ごめんなさい…でも、衛兵には頼れない事情があるから」
『これってもしかすると、かなり訳アリの子に関わってしまったかもしれない』
『昴は優しいから、きっと助けようとする』
『…なんだか凄く、嫌な予感が、する』
スバルにしか聞こえない呟きを、スバルにすら聞こえないように呟いた
後に澪の懸念は、見事に的を射ていたことがわかるのだが
「さて、それじゃどうする?」
「ね?言ったでしょ。悪気はまったくないんだって」
「でも、判断は慎重にね。そろそろボクは手を貸せなくなる。」
「そう、よね。……うん、考える。考えるけど」
「今の話だと、お前って夜だと出てこれないの?」
「ボクはこんな可愛い見た目だけど精霊だからね。顕現してるだけでもけっこうマナを消費しちゃうんだよ。だから夜は、マナを蓄えるのに集中するんだ。」
『なら私は、本当に精霊なのかな』
『ずーっといられそうだけど』
「そこんとこはわからねえ、後々読み解こうぜ」
「そういえば、まだ名前も聞いてないね。自己紹介とかしてないんじゃないかな」
「そういや、そうだな。んじゃ、俺の方から」
スバルはその場で一回転、指を天に向けてポーズを決める
「俺の名前はナツキ・スバル!右も左もわからない上に天衣無縫の無一文!ヨロシク!」
「それだけ聞くともう絶体絶命だよね。うん、そしてボクはパック。よろしく」
「なんでその不必要に馴れ馴れしい態度を普通の場面に分けられないの?」
「縋れそうな糸見つけて焦ってんだよ!絶対逃がさないぜ、この出会い……生きるために依存してやる……っ」
「すごーくしょうもない決意。……そもそも、今、あなたがどういう名目で私たちと同行してるのか自分で覚えてる?」
「もちろん。探し人のためだな。そしてその尋ね人の特徴を知っているのは俺ただひとり……お払い箱にされてたまるか、絶対に口を割らないぜ……!」
「聞き込み中に後ろでぼそぼそ言ってたから大まかな特徴は割れてるけどね」
「俺のお馬鹿さんめっ!!」
頭を抱えてその場にかがみこむスバル
「ま、お互いに事情はあるよね、それにしても、珍しい名前だね」
「そうね、このあたりだとまず聞かない名前。髪と瞳の色も、服装もずいぶんと珍しいけど……どこから?」
「テンプレ的な答えだと、たぶん、東のちっさい国からだな!」
「ルグニカは大陸図で見て一番東の国だから……この国より東なんてないけど」
「嘘、マジで!?ここが東の果て!?」
『そう言うパターンもあるんだ』
「……なんか色んな角度からこの人の将来が心配になってきた」
「とりあえず、今はとにかく奥へ……といっても、ボクが顕現できるのはあと一時間もない。決断を求めるよ」
「行くわよ。手の届かないところへ持っていかれてからじゃ遅いんだから」
「じゃあ、行くけど……この先のは今まで以上に警戒して。もともと荒事慣れしてる人たちが住んでるところだから。恐いようならここで待ってるか、私の後ろについてきて」
「ここで待ってるとか言い出したら俺どんだけチキンだよ!行くよ!背後霊のように!」
「前に出る選択肢はないのね……その方がこっちも余計な気をつかわなくていいけど」
「おんぶにだっこはかっちょ悪い。せめて、後ろ歩くぐらい自分でやれよ、俺」
依存するなりに二本の足で立つ
「そういえば、なんだけどさ」
「けっきょく、飼い猫の名前は聞いたけど、君の名前は聞いてないなと思ったり」
「ーーサテラ」
「お?」
「サテラとでも呼ぶといいわ」
パックが、
「――趣味が悪いよ」
とだけ呟いたのは、スバルはおろか少女にすら届かなかった
貧民街に入ると、意外な展開でスバルが役立つこととなっていた
「なぜか不自然なほど周囲が優しい。どうしたことだ……モテ期きたか!?」
「聞こう!このモテ期に科学的……いや、魔法的根拠があるなら聞いてみたい」
「期待と違う答えだと思うけど、たぶん身なりが原因ね。」
「納得いきましたよチキショウ!」
「ふおおおお!思いやりかと思ったら毒だった!なんか全身が燃えるように熱い!死ぬかもしんない!」
「なんか貰ってると思ったらボッコの実ね、これ。効果は個人差あって、気休めなんだけど……」
「見た感じだと、スバルってかなりマナの循環性が高いみたい。過剰摂取すると死ぬかも」
「どうすりゃいい!?」
「そうね……パック」
ひどくのろまで、快活さがほとんど見られないパックが現れる
「にゃーに?そろそろ限界なんだけど……」
「寝る前にお腹ふくらませていきなさい」
「食べていいの?」
「い、痛くしないでね」
パックは「あいあい」と曖昧な返事で応じ、
「じゃ、いっただっきまーす」
直後、体の中で暴れ回っていた、得体の知れないものがごっそりと抜け落ちる感覚を味わった
「ごちそうさまでした」
スバルはふいに寒さを感じた。 熱い、の次は寒いだ。しかも、体の芯からくる感じの寒さ
「パック」
「ごめんごめん、でも、スバルのゲートは使い込んでる様子がないのに素直。吸いすぎちゃった」
「たぶんMPみたいなもんだろ……それがアスピルされたから辛いわけだ」
「ごめんなさい。あとでちゃんと言っておくから」
「反省してるよ。でも後悔はしてない。おいしかったです」
「気にすることねぇよ、熱くて死にそうなのは終わったわけだし。それより、俺の功績でわかった犯人の行方を追おう。俺の功績でわかった犯人の」
『昴、ダサい』
ダサくて結構だよ、てんぱってるわけだし!
と聞こえた気がした
念話的なのができるようになったらしい、これで昴は変人にならなくて済む、と澪は思った
「役に立ったのが嬉しいのはわかるけど、すごーく格好悪い」
二人が改めて貧民街の奥へ向かおうかと気持ちを切り替えたときのことだ
「ごめん、ボクもう限界だ」
その灰色の毛並みはやや光を帯び、今にも消えてしまいそうに儚く淡く震えていた
「なんか死にそうな消え方するんだな」
「けっこう無理してるからね」
「無理させてごめんね、ゆっくり休んで」
サテラの懐から取り出されたのは、掌に乗るサイズの緑色の結晶だ。 クリスタルというのが一番近い
パックはそのクリスタルに辿り着き、その結晶を抱きしめると、
「わかってると思うけど、いざとなったらオドを使ってボクを現界させるんだよ」
「わかってます。自分の領分くらい弁えてるもの」
「どうかな、けっこう怪しいからね。頼んだよ、スバル」
「オーライ、任せろ。俺のビビりセンサーに期待してなよ」
「お願いね」
「――それじゃあ、おやすみなさい。気をつけて」
パックがいなくなると、サテラは掌の上のクリスタルを大切そうに撫でて、しっかりと己の懐の中に仕舞い込んだ
「二人きりになるけど……変なことは考えないでね。魔法は使えるんだから」
「そんなバカな!女の子と二人きりなんて…いや、割とあったな」
「でも何もできねぇよ。これまでの俺の人間力を見てなかったのか?」
「なんかすごーくしょうもないのにすごーく説得力がある」
「私が前衛で、スバルは後ろの警戒。何かあったらすぐに私を呼んで。自分で何かしようとか思っちゃダメよ。別にあなたを傷つけたいわけじゃないけど……弱いんだし」
「その前置きしちゃうから憎めねぇんだよなぁ……」
『やっぱり、酷く優しい子だね』
『サテラ…何処かで、聞いた気がするけど』
星の名前とかなんじゃね、お前の聞き覚えってことは
『そうかもね』
その後もやる事は変わらない
住人を見つけては、心当たりがないか聞いて回るだけ
聞き役はスバルが担当し、回数をこなした分だけそれなりに役割にも慣れが出てくる
「ひょっとして、フェルトの奴かもしれないな」
その有力情報にぶつかったのは、聞き込みを始めてから十四番目の男
「なら、盗んだもんは今頃は盗品蔵の中のはずだ」
「 ただまぁ、盗まれたもんだって言っても『はいそうですか』とは返してくれんだろうけどな。うまく交渉して買い取りな」
盗品蔵の場所は彼から聞き出せたので、ほどなく盗られた品と再会は叶いそうだ
ただし、別の問題が浮上してくる。即ち、二人して無一文の事実が
「買い取りって言ってもな、どうする?かなり吹っかけられるイベント的な臭いがするけど」
「盗まれた物を返してもらうだけなのに、どうしてお金払わなきゃいけないのかしら……」
問題が資金の方へ傾くと、にわかに困った顔をし出したのはサテラだ。
穏便に事を、しかも確実に済ませるには男のアドバイスに従うのが賢明だろう
とはいえ、
「その盗まれた徽章って見るからに高そうな感じなのか?」
「……真ん中に小さいけど、宝石が入ってるの。私も価値はわからないけど、安くないのは確かだと思う」
「宝石かぁ……そら厄介だ」
知識のない輩であっても、一発で高価な代物とわかる便利アイテムが宝石
『自分の持ち物なのに価値を知らない?サテラ、本当に謎だらけだね』
それは俺も思ったが、今はそれどころじゃねえだろ
『それもそっか』
「とりあえず、盗品蔵ってとこに行ってみてから考えよう。交渉次第じゃマシな値段で譲ってもらえるかもしれねぇし……」
最悪の場合、手段はある
考えあぐねて歩くことおよそ十分
――盗品蔵、と呼ばれているらしき建物の前に着き、二人は顔を見合わせていた。
「なんか思った以上にでかいな」
「小屋でなく蔵、と言った意味がわかるわね」
平屋ではあるものの、ゆうに車が二十台は止められそうな広さだ。高い防壁を背中にして、文字通り貧民街の最奥地に居を構えている
「あの高い壁は……」
「王都の防壁でしょうね。いつの間にか端っこまできてたみたい」
「さて、噂通りなら中にたぶん盗品をまとめてる蔵主ってのがいると思うけど……こちらの立場としてはどんな感じで?」
「正直にいくわよ。盗まれたものがあるから、中を探して見つけたら返してって」
『その正論は通らないって、昴が何回説明すればわかるの、この子は』
『根が真っ直ぐなのはいい事だけど、流石に真っ直ぐすぎて直ぐ騙されちゃうよ、昴』
「あー、わかった。じゃあ、ここは俺に任せてくれ」
彼女はどことなく自信ありげなスバルをうさんくさそうな目で見て、
「わかった。スバルに任せてみる」
「そりゃ簡単に頷けないのはわかるよ。ここまでの俺が君の信頼を勝ち取れるような行動してないのは自分でわかってるから。でも、考えがあるから信じてみてって……えええええ!?」
「な、なんでそんなに驚いてるの?」
「だって今の流れは完全に一回はもめるパターンだろ!?」
「確かに今のところ、スバルはなんの役にも立ってないし、見直せるような行動も発言もなんにもないけど……」
「我ながらなんたる評価。反論なんにもできないけどね!」
「でも、考えなしだとは思わないし、嘘をつくような人間とも思えない」
自虐ネタに入ろうとする首根っこを言葉で掴み、「だから」とサテラは息を継いで、
「スバルを信じてみる。……うまくいったら儲けものぐらいの気持ちで」
「そこは後半を本音じゃなくて、『私のために頑張って』ぐらい言った方がやる気出るぜ?」
「そんな無理してなんて言えないもの。でも、頑張って」
スバルは盗品蔵の入口へと向かう
足取りは決して軽くないが、背中は期待とかすかな信頼によって押されている気分
歩くスバルは手の中――これまで一度も話題に上がらなかったビニール袋を見る。
『携帯電話、使うつもり?』
『あの子に、そこまでさせる理由があるの?』
『それは私達の今後を決める、大事な物だよ?』
わかった上で言ってんだ、お前だって反対しねえだろ?
『はいはい、昴が言うならそれでいいですよ』
なんだかんだ、澪が1番俺のこと理解してくれてるって思ってるからさ
昴は時々、変に思わせぶりな態度をとってくる
無理だとわかっているのに、希望を持たせてくれる
それがあるから、澪はいつまでも昴の隣から離れられないのだ
澪の心境など知らず、欲しい言葉をかけてくるのだから、昴は相当な人たらしである
本には自覚してないのだろうけど、と言うのがここ数年で澪が学んだ事だった
「えーっと、どなたかご在宅ですかー?」
扉の前に立ち、とりあえず木造のそれをノックする
中からのリアクションは返ってこない
不安に思いながら取っ手に手をかけると、あっさりと扉は開いた。
『昴、気をつけて』
ああ、わかってる
光源のまったくない室内は、夜の闇の中では完全に手探り状態だ
見張りも立たせていない無防備さはどうしたことだろうか
「あのー、誰かいませんかー?」
月明かりも届かない屋内の様子は完全の暗闇。意を決してスバルの足は中へ踏み込む
と、その前に後ろのサテラに振り返り、
「下手に二人して入って泥棒扱いもなんだから、君は外にいてくれるか?」
「大丈夫?私が中に入った方がいいんじゃ……」
「こんだけ声かけしてるんだから、いきなり切りかかられるってことはないだろ。」
「外から戻ってきた蔵主に誤解される方が厄介だし、頼まれてお願い」
「せめて明かりは持っておいて。誰もいなくても、誰かいても呼ぶのよ」
「わかってる。慎重に、だろ。……これ、どうすれば光るの?」
「ラグマイトの使い方も知らないの? すごーく物知らずよね、スバルって」
サテラからラグマイトの説明を受けたスバルは、
「なるほど……便利な仕組みだな。んじゃ、ちょっと中を見てくる」
淡く光るラグマイト片手に、恐る恐る中へと足を踏み入れていく
ぼんやりと確保された視界の中、目の前にあったのは小さなカウンターだ
「当然だけど、値が張りそうなものほど奥だろうな」
嫌な想像をしながら、スバルの足はさらに建物の奥へ
『昴、下がって、本当に、これ以上奥に行っちゃダメ』
『見てきた、見てきたから、もうダメ、戻ろう』
「なんだよ」
「ん?」
ふいに靴裏に生じた違和感にスバルは立ち止まる
踏んだ地面から引っ張られるような――粘着質な何かを感じたのだ
足を持ち上げ、指先で触れると、そこにはべったりと液体が付着していた
「なんだ、これ」
嫌な感触のそれを壁になすりつけて、スバルは生じる不快感に促されるように光を前へ
進もうとしていた先に、その原因がある
「……あ?」
思わず間抜けな声が出て、スバルはようやく『それ』を認識した
『もう先に言うよ、この先にあるのは死体です、昴』
『もう行かないで、サテラのところに戻ろう?』
『気付かなかったフリをして、徽章はなかった、蔵主も留守だった、それでお別れしましょ』
「…へ」
間抜けな声を出し、思わず壁に手をつけたところだった
「――ああ、見つけてしまったのね。それじゃ仕方ない。ええ、仕方ないのよ」
女の声だった
低く冷淡で、どことなく楽しげな女の声がした
「ぐあ――っ!」
声がした方に顔を向けようとした瞬間、スバルの体はふいの衝撃に吹き飛ばされる
背中から壁に叩きつけられ、視界が闇に染まる
だが、彼の意識を支配したのは、
「ぐぅぅぅ……あ、熱ッ」
『昴ッ!!』
――全身を支配する、圧倒的な『熱』だった
――これは本気でヤバい
澪…悪い、貧乏くじ引かせちまったみたいだ
『そんなの、いいよ』
『死なないで、昴』
――熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い
――ああ、これ全部、俺の血かよ
倒れる体が浸るほどの出血
人間は血の三分の一が流れ出すと命に関わるという話だがこれはもう、全部出ているんじゃなかろうか
かろうじて動いた手が腹部に向かい、そこにあり得ない感触を得て、納得がいく
――なんだ、腹が破けてんのかよ
『痛み』を『熱』と錯覚しているらしい
つまるところ、どうやら人生の『詰み』というやつに直面したようだ。
その肉体を、消える意識からの最後の働きかけで少しだけ動かす。首を、上に向けて
眼前、鮮血の絨毯を敷き詰めた床を、黒い靴が波紋を生みながら踏みつける
誰かがいるのだ。そしてその誰かがおそらく、自分を殺したのだろう。
ただ願ったのは、彼女が無事でありますように、ということだけだった。
「――バル?」
『来ちゃダメ、サテラ…!』
澪の叫び声も、彼女には届かない
だから――、
「――っ!」
短い悲鳴が上がって、血の絨毯が新たな参加者を歓迎する
倒れ込んだ体はすぐ傍らに、そしてそこにはだらしなく伸びた自分の腕があった
力なく落ちたその白い手と、血まみれの自分の手が絡む
全ては偶然だったのだろう
かすかに動いた指先が、自分の手を握り返したような気がした。
「……っていろ」
遠ざかる意識の首根っこを引っ掴み、無理やりに振り向かせて時間を稼ぐ
『痛み』も『熱』も全ては遠く、無駄な足掻きの負け犬の遠吠えだ
だが、それでも――、
「俺が、必ず――」
――お前を、救ってみせる。
次の瞬間にナツキ・スバルは命を落とした
コメント
5件
続き待ってるぅよ
相変わらず物語天才☆あとお久しゅうございます手術復帰しました
うわっ、第4話で主人公が死んじゃった…!?冒頭のギャグテイストから一転、ラストの展開が重すぎて衝撃です。サテラって偽名、パックの「趣味が悪い」って反応がめっちゃ気になる…この世界の神話か何かと関係あるのかな。スバルが「お前を救う」って遺言残したのが、この先の鍵になりそう。続きが気になって仕方ないです!