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第1話:タピオカと24時間(中盤)
【PM 3:30 タピオカ号・車内】
狭いキッチンカーの運転席に無理やり体を押し込んでいる二人。
車内には、ほのかに甘いバニラとタピオカを煮た匂いが染み付いている。
勇気:「(窓から顔を出して)……くっそ、風が甘めえ。俺の鼻が糖分で馬鹿になりそうだ」
静見:「……黙っていろ。君の振動のせいで、タブレットのジャイロセンサーが狂う。あと、その窓のタピオカのステッカー、剥がしてもいいか?」
勇気:「ダメだろ!これ剥がしたらただの不審なピンクのトラックじゃねえか。……つーか零、お前さっきから何調べてんだよ。エリオスとかいう奴のヒント、解けたのか?」
静見は無言で画面を勇気に向けた。そこには、SNSで「#タピオカ爆弾」というハッシュタグと共に拡散されている、何千枚もの「タピオカミルクティーの画像」が並んでいた。
静見:「エリオスは『いいね』の数にヒントを隠したと言った。……見てみろ。投稿時間はバラバラだが、特定の10枚の画像だけ、不自然に『404いいね』で止まっている。」
勇気:「404……?どっかで聞いたことある数字だな」
静見:「デジタルの世界じゃ『ページが見つからない』というエラーコードだ。だが、この10枚の画像を地図上の投稿場所に並べると……ある形になる。」
静見が指先で画面をスライドさせると、地図上にポツポツと赤い点が打たれていく。
勇気:「(身を乗り出して)……これ、あれじゃねえか。新宿の……アルタ前広場だ!」
静見:「正解だ。野良犬にしては、地図を読む能力だけはあるらしいね。」
勇気:「よっしゃ!行くぞ零、アクセル全開だ!」
勇気がダッシュボードを叩くと、天井のタピオカ・オブジェが「ぷるんっ」と情けなく揺れた。
静見:「……あぁ、行くよ。ただし、この車はパトカーじゃない。時速60キロを超えると、車内のタピオカが散乱する設計だ。」
勇気:「うるせえ!タピオカなんか後で俺が全部食ってやるよ!!」
【PM 4:00 新宿・アルタ前広場】
タピオカ号が広場に滑り込む。パステルピンクの車体は、待ち合わせをする若者たちの間で逆に目立ち、一瞬で注目の的になる。
若者A:「あ、新しいタピオカ屋?可愛くない?」
若者B:「え、でも店員、片方は超コワモテだし、もう片方は葬式帰りみたいな暗い奴だよ……」
勇気:「(車から飛び出し、鼻をクンクンさせながら)……ちっ、人が多すぎて匂いが混ざってやがる。……零!どっちだ!」
静見:「(車内で冷静に解析を続けながら)……デマの投稿が急増している。エリオスの狙いは爆弾そのものじゃない。『爆弾があるかもしれないという恐怖』を拡散し、群衆心理を操作することだ。」
その時、勇気の鼻がピクリと動いた。
香水の匂い、排気ガスの匂い、そして──。
勇気:「……待て。……これ、爆薬の匂いじゃねえ。」