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#僕のヒーローアカデミア
「ふぃーっ、やっと終わったわい」
「お、お疲れ様でした。
ルクレセント様」
銀髪のロングヘアーに、切れ長の目をした
女性がソファに背中を預け、
そして黒髪・やや肌が褐色の―――
犬のような耳に巻き毛のシッポを持つ
獣人族の少年・ティーダ君が妻(予定)である
彼女を労う。
ザハン国商業都市・スタット……
そこの富裕層地区の一角にあるロックウェル家の
お屋敷で、
その応接室らしき天井の高い部屋に、
私たちは再び戻っていた。
「結構、逃げて来た奴隷多かったねー」
「大人はともかくのう。
女子供まで、というのはどういう事かと
思ったが」
同じ黒髪の妻2人―――
アジアンチックな童顔のメルと、欧米モデルの
ような顔立ちのアルテリーゼも一息つく。
「無差別、とでも言おうか……
ある意味、そういう点については
差別が無いのかも知れん」
この屋敷の主にして、真っ白い眉毛に
ヒゲの老人―――
ベルマイヤさんが逆説的に語る。
「何はともあれ、これであの人たちは
自由の身ッスね」
「多分、年端も行かない子供たちは、
親か何かの連座で隷属化したのでしょうが」
「見ていて、良い気分のものでは無かったのは
確かだ」
黒い短髪に褐色肌の長身の青年……
レイド君と、
その妻である、タヌキ顔に丸眼鏡の女性、
ミリアさん―――
そしてワイバーンであるハヤテさんが、
白緑の髪に筋肉質の戦士風の
人間の姿でうなずく。
「しかし……
シン殿の戦術を逆手に取られるとは
思わなかったな」
「前線に設置した新魔導塔ばかり不具合が
出るのは、確かにおかしい事ではありますが」
茶色の短髪で、細マッチョという感じの青年と、
さらに彼より細身の、横に長い眼鏡をかけた
青色の短髪の男性―――
『対鏡』のノイクリフさん、
『永氷』のグラキノスさんが
相手国モトリプカの対応に触れ、
「ですが本国まで深く入り込むのは、
現状ではさすがに」
「前線を何とか維持するだけで、今は
手一杯の状況ですから」
やや外ハネしたミディアムボブの、パープルの
髪をした女性に、
ロングの白髪と、黒い肌を持つ女性―――
『霧』のイスティールさん、そして
『腐敗』のオルディラさんが、
続けて意見を述べる。
「とにもかくにもねぇ。
本拠地の新魔導塔の信頼性も落とせれば
いいんだろうけど」
赤髪の、恰幅のいい元マフィアの女ボス、
ブロウさんが立ったまま両手を腰につけて、
「しかし、本国ともなれば警備は厳重だと
思いますぜ」
「奴隷兵たちを戻らせているとも聞いています
からね。
それに本拠地の新魔導塔だけは、
是が非でも死守するでしょうから、
これまでのやり方が通用するかどうか」
いかにもなチンピラふうの痩せた男……
ブロウさんの元部下であるジャーヴさんと、
頬骨が目立つほどさらに痩せた外見の、
ユールさんもモトリプカ攻略の難しさを
私見で語る。
「しかし、確か空の上に浮かぶ島を持って、
今回の作戦は行っているのでしたな?
それがあれば、モトリプカ本国まで
潜入するのも―――
そう難しい事ではないと思われるのだが」
ベルマイヤさんが首を傾げると、
「さすがに敵さんも、そろそろ仕掛けに
感付くと思います。
もし本拠地で新魔導塔に何らかの不具合が
発生したら……
それこそ天も地も無く総動員で探索を
かけるでしょう。
浮遊島も全くの魔力ゼロで浮かんでいる
わけではありませんから―――
この段階でそういうものがあると、あちらに
知られてしまうのもマズいですし」
私がそう言うと、魔族の男性2人も同調し、
「シン殿の言われる通りだ。
それに向こうには、それなりに有能な人間が
指揮を執っておるようだしな」
「これ以上手の内は明かせない……
という事については同意です」
続けて次期ギルド長とその妻が、
「局地戦では何とかなりそうッスけど、
戦略的にこられると―――」
「確かに、あまり情報を与えたくない
相手ではあります」
その言葉に私もうなずき、
「そういえば、あちらから何か要求は
無いんですか?」
「最後の最後まで戦う、という事も
無いでしょうし」
魔族の女性2人が疑問を口にすると、
「一応、賢人会議宛に水面下での接触は
しておるようだ。
今この戦が落ち着けば、こちらは四大国や
辺境大陸とのつながりを強化するであろうし、
逆に向こうは潜在的な敵対勢力となるの
だからな……
だから今のうちに、メナスミフ自由商圏同盟の
中で、確固たる地位を確立しておきたいの
だろう」
そこでハヤテさんが両腕を組んで、
「モトリプカは―――
自由商圏同盟からの離脱・独立を考えては
いないのか?」
この屋敷の主人の言葉に、彼は聞き返すが、
「メナスミフ自由商圏同盟に属している事で、
得られる利益もあるからのう。
それに国同士の戦いであれば、一方が
滅ぶまで、というのもあり得るが、
一応、自由商圏同盟内での内戦という事で
あれば、自ずと落としどころも見えてくる」
それを聞いた室内のメンバーは納得した
様子で黙り込む。
「でも、自由商圏同盟諸国は……
クアートル大陸や辺境大陸との交易を
欲しているんじゃないのかい?」
ブロウさんが訝しげに問うと、
「それはあるだろうが、それ以上に今の体制を
変えられる事を恐れているのだろう。
特に奴隷や亜人・人外に対し―――
酷い扱いをしてきた国ならなおさらだ」
するとジャーヴさんが頭をガシガシと
かきながら、
「するってぇと……
モトリプカ陣営は、
交易はするけど国の体制にゃ口出すな、
って感じなんですかね?」
「元より、内政干渉を行うつもりはこちらには
ありませんが―――
それはあまりにも虫が良すぎる話では」
続けてユールさんも眉間にシワを寄せる。
「だからこその、今回の戦なのだろうね。
メナスミフ自由商圏同盟内で主導権を握って
いれば、自分たちの意志は通せる。
最悪、各国の自己判断に任せるでもいいわけ
だからのう」
確かに、ユールさんの言う通り少なくとも
辺境大陸には、内政干渉をするつもりはない。
しかし、商売としての差はつけるつもりで、
『ウチと歩調を合わせた方がお得ですよ♪』
とさせるのが……
差別是正の戦略だったのだ。
しかし今回のモトリプカのやり方を許して
しまうと―――
「だとすると……
いわゆる優遇政策が微妙になるッスね」
「こちら側と同じく、奴隷や人外に対する
差別を緩和してくれるところであれば―――
他より取引量を増やしたり値段を下げますよ、
というのが、
自由商圏同盟内で優遇している国から直接、
商品を手に入れればいい、という具合に」
レイド君とミリアさんも気付いたのか、
2人してアゴに手をあてる。
「そりゃ確かに問題だねー」
「少しは割高になるだろうが……
同じメナスミフ自由商圏同盟内の事であれば、
口出し出来ぬからのう」
それは同時に、多種族共生を目指すこちらの
方針に水を差す事にもなる。
今までにも迂回輸入みたいな事をする輩は
いただろうけど―――
これを国家単位でやられた日にゃ。
「うむぅ。
そのような事になっていたとは。
何か打開策というか、対抗策は無いもの
ですかのう?」
ベルマイヤさんの言葉に……
なぜか全員の視線が私に集中して、
「何かあるんやないか? シン」
「ル、ルクレセント様っ」
ルクレさんがずいっと上半身ごとこちらに
向けると、ティーダ君がたしなめる。
そこで私はいったん両目を閉じて天井へと
顔を上げ、
「むむぅ―――
無い事も無い、と言いたいところですが。
ただまあ、かなり手法が何と言いますか」
私の言葉に、両隣りに座っていたメルと
アルテリーゼは、
「シンの考える事がエグいなんて、
別に今始まった事じゃないしー」
「相手もそれなりの人物のようじゃからなあ。
並大抵の手では覆せぬであろうよ」
そう妻たちにも促され、
「ん、じゃあ……
ええと、今回奴隷から解放された方々が
おりますよね?」
そして私は、思いついた対抗策をみんなに
説明し始めた―――
「それでどうしてここへ?」
グレーの短髪に白髪の混じった筋肉質の
男性……
王都フォルロワにある冒険者ギルド本部の
トップ、ライさんの問いに、
「ええと、実はこういう事情で」
と、モトリプカに対して考えた策を
彼に説明する。
この策は『見えない部隊』に関係する
ものだったので―――
まずは王家に許可を取った方がいいのでは、
という事になり、
ザハン国内の彼らの拠点から『ゲート』を
通じて、いったんウィンベル王国王都まで
戻って来ていた。
一通り私の策を一緒に聞いていた、
金髪を腰まで伸ばした童顔の女性と、
眼鏡をかけたミドルショートの黒髪の
秘書風の女性……
サシャさんとジェレミエルさんは、
「それは―――」
「それを聞いた時、みなさんはどのような
反応でした?」
彼女たちの問いに私は微妙な表情となる。
「えげつないのは今に始まった事じゃ
ないが……
まあ今回はちょっと引くわ」
「自分だって悩んだんですからね!?
これやっていいのかなあって!!」
私は弁明のように叫ぶ。
「だが、確かにモトリプカ本国の新魔導塔の
信頼を落とすのに、これは効果的だ。
何せあちらさんは―――
本当の意味で奴隷たちが解放された事を
知らないんだからな」
ライさんはアゴに手をあてながら、
策そのものには同意する。
「きょ、強制ではありませんよ?
一応奴隷だった方々に説明して、
志願制という事で……」
それを本部長の後ろで聞いていた女性2名は、
複雑そうな表情になって、
「いやでもそれ―――
復讐の機会を与えているに等しいじゃ
ないですか」
「それで『見えない部隊』に逃がしてもらう
方法まで教えてもらったら……
希望する人たちは多いでしょう」
実際、彼らは『新魔導塔が再稼働したら』という
恐怖で、ザハン国側に逃げて来たのだけど、
もし再稼働しても二度と隷属化はしない、
という事を知れば―――
それを向こうのメンバーに説明したところ、
『うわー』『ひでぇ』『マジでヤバい』
『味方で良かった……』と、散々な
言われようだった。
「まあ、休戦交渉次第だな。
いや、もしかしたらそれでモトリプカ側を
揺さぶれるかも知れん。
しかし敵さんも気の毒だな。
なまじ頭が回るばかりに、シンのえげつない
策を食らう事になるんだからよ」
「ええと、では―――」
「ああ、承認する。
後はいつ、モトリプカと休戦を結ぶかだな」
そして私の案は認められ……
後は元奴隷たちとの交渉が待っていた。
「前線はどうなっている?」
「一進一退―――
というより、完全に膠着状態に入った
模様です」
モトリプカの首都・エムビーア……
そこのとある軍事施設の一室で、青みがかった
短髪に白髪の混じったアラフォーの男は、
部下らしき兵士から報告を受けていた。
「ドルミン様。
今のところ、前線の新魔導塔にも
不具合は起きていないようですし―――
防御に不安はありませんが、奴隷兵を
引き上げているので攻勢にも出れません」
室内にもう一人、赤い短髪の青年が書類を
片手に、状況を説明する。
「故障はしなくなったようだが、そもそも
原因がわからぬからな。
それでプラクス。
不穏分子の捕縛は?」
「彼らを確保して移行、決定的な証拠は
出ておりませんが……
前線の新魔導塔の不具合が無くなった
事を考えると、
関与していない―――
というのは苦しいでしょう」
実際には、シンたちが様子見に入った時と、
大まかな不穏分子を捕らえた時がほぼ
重なったため……
彼らは妨害工作をしていたのでは?
というドルミンの主張に説得力を持たせる
事となっていた。
「ふむ―――
ご苦労だった、下がるといい」
「ハッ!!」
その命令に若い兵士は去り、室内には
主従の2人が残される。
「さて、それじゃあ……
今回の落としどころを探るとするか。
沿岸にザハン、そして内陸に2・3ヶ国が
残っているが―――
休戦の使者を送る」
「えっ?
確かに戦況は膠着状態に入りましたが……
何もこちらから申し出る必要は」
主人の言う事に従者は戸惑うものの、
「すでに水面下では、賢人会議の連中と
接触しておる。
それにこの戦、内陸はともかく、沿岸国は
短期間で制圧すべき対象だったのだ。
長引けばクアートル大陸、辺境大陸からの
介入を招くかも知れん。
そうなればザハン国がその橋頭堡となる。
今回はメナスミフ自由商圏同盟内での―――
発言力を高めただけでもよしとしよう」
「独立はなさらないので?」
プラクスの問いにドルミンは苦笑しながら、
「それだと完全敵対となる。
国と国との戦争だ。
そうなると残る主要国はザハン一国のみ。
あまり追い詰めると属国化も辞さない覚悟で、
外部勢力に助けを求めてしまうだろう。
我々の目的は先祖のような野蛮で非効率的な
大陸制覇ではない。
実質上支配下にさえ置ければそれでいいのだ」
「では……」
そこで彼は地図を取り出し、
「取り敢えず、現状の勢力範囲の確定だな。
すでにメナスミフ自由商圏同盟の8割方を
押さえたが―――
あまり利益にならないところも含めてだから、
さほど意味は無い。
無価値なところは返してやってもいいし、
要はそれと引き換えにどれだけの要求が
通るか、だろう。
それにあの新魔導塔さえ建てる事を
認めさせれば、その国はどうにでもなるしな」
「逃げられた奴隷たちはどうしますか?
味方からも、当然返却を求める声が
多数ありますが」
ドルミンはふむ、と片眉をつり上げ、
「どの道、新魔導塔は再稼働している。
国に戻せば再び隷属化出来るだろう。
問題は他国に逃げられた場合だが……
現にザハン国に逃げ込んだ奴隷たちは、
まだ帰って来ていないしな。
連中に恩を売るためにも、それも要求の
1つとしておくか」
そして彼はプラクスと共に休戦案をまとめ、
その使者がザハン国に到着したのは―――
2日後の事であった。
「んん~ん……」
「どうでしたか、休戦案は」
ロックウェル家のお屋敷で、ライさんが
書状に目を通しながらうなる。
『休戦条件について話し合いたいから、
一時停戦を』
という内容と共に、モトリプカ本国が
使者を送って来たのだ。
それを受けてライさんも『ゲート』で
ザハン国へと移動し、
ともに考える事になったのだが、
「結構あっさりしてんな。
何より、いったん占領した領地を返しても
いい、というのは驚きだ」
そこで屋敷の主人である老人は、
「だが、そこに新魔導塔の撤去は書かれて
おらぬのが気がかりだのう。
表面上は返しても、事実上支配下になれば
いいと踏んだのかも」
その答えに、室内にいるメンバーはうんうんと
うなずく。
「ライオット殿、と言いましたか。
『見えない部隊』総司令として―――
この要求、どのように見ますかな?」
ベルマイヤさんがそう語るように、ライさんは
『見えない部隊』リーダー、ライオットとして
彼に説明している。
「正直なところどうでもいい。
要は、シンの策を発動出来れば……
そのきっかけになるものさえありゃいいと
思っていたんだが。
あちらさん、幸いというか当然というか、
逃げ出して来た奴隷の返却を求めてきて
いるしな」
そう。
今回使者が持ってきた休戦条件の中に、
各地の前線で逃げ出した奴隷の返却も
含まれていて、
「あまりあっさり認めても、警戒されるかも
知れませんね」
「人道上、女子供は返せないと―――
それだけは最低限認めさせたらいいのでは」
ライさんと一緒にやって来た、サシャさんと
ジェレミエルさんがそう提案する。
確かに、ホイホイと相手の言い分を容認すれば、
却って何か企んでいるかとも思われかねない。
また女性や子供の解放は、こちら側の要求と
しても妥当だろう。
「そういや賢人会議とやらの人たちは
何しているッスか?」
「その人たちが……
従来のメナスミフ自由商圏同盟の上層部
なんですよね?」
レイド君とミリアさんが、この場にいない
有力者についてたずねると、
「自分たちの領地が戻って来るというだけで、
舞い上がっておるよ。
それと、賠償金さえ低く抑える事が出来れば
いいと―――
こちらに丸投げしてきおったわ」
それを聞いたノイクリフさんと
グラキノスさんは、
「ちょっとお花畑過ぎねーかぁ?」
「危機感が足りていないといいますか」
次いでイスティールさんとオルディラさんが、
「だからこそ、こういった反乱を許してしまった
わけで……」
「まさかこれで元通りとか考えていない
ですよね? その方々」
魔族たちの言葉に、ベルマイヤさんは
渋面を作る。
「そこまでキレイさっぱりバカであるなら、
まだ扱いようはあるわい。
そういう連中に限って―――
無駄に高い意地と見栄と知能があるからのう」
老人の言葉に、冒険者本部から来た3人が、
そろって目と口を線のように細くする。
多分、そう言いたくなるような人物や事態に、
何度も直面してきたんだろうなあ……
と、心の中で同情する。
「しかし、シンの策―――
というか提案で帰国する奴隷の人って
実際にいるの?」
「返却となると、奴隷としての扱いになって
しまうわけだからのう。
その辺りはどうするのだ?」
メルとアルテリーゼが、肝心の奴隷について
心配した顔で聞いて来るが、
「そこは、同意する人たちをブロウさんたちに
お任せして選定してもらっている。
こちらからも、『まずはいったん話し合って』
『なるべく同意を取って』と……
モトリプカに要求するから」
もちろん、そんな事を聞くような相手じゃない
だろうけど。
要は『お返ししますが、あくまでも奴隷の意志を
尊重してあげてください』とアピール出来れば
いいわけで。
「なるほど。
それに、そこまで言えば何か仕掛けているとは
あっちも思わんやろうしなあ」
「そうですね。
つまるところ、奴隷をあちらに返却した、
という形になればいいだけですし」
ルクレさんとティーダ君も飲み込めたようで、
「さて、あとは―――
どれくらいが『帰国』するかね?」
ライさんの言葉に、同じ室内にるメンバーは
苦笑した。
「それは……本当なのか?」
「ああ。
あんたたちにはフェンリル様のご加護が
かかっている。
だから新魔導塔が再稼働したとしても、
絶対に奴隷に戻る事はない」
同じ頃、ブロウたちは―――
見どころのある奴隷たちに目をつけて、
例の作戦について説明、説得を行っていた。
「しかし、せっかく自由の身になったのに、
また本国に戻るんじゃ……」
やはりというか、消極的な姿勢を見せる
奴隷もいたが、
「あたいは行くよ」
と、アラサーくらいの女性が片手を挙げる。
「おっ、かなり恨みがありそうだな」
ジャーヴの言葉に彼女は目をキッと向けて、
「当たり前だよ!
あたいだけならともかく、子供まで散々
なぶりやがって―――
死なせちゃいけない、って条件は
気に食わないけどさ。
要は生かしておけゃいいんだろ?」
「まぁ、そうとも言いますけどねぇ……」
呆れたようにユールは答える。
「俺も、アイツをブン殴ってやらなきゃ
気が済まねえ」
「いいねぇいいねぇ。
つまり、大人しく奴隷として従っていると
思ったら―――
って時に1発かませるわけだ」
「積年の恨み、この機会に晴らしてやるぜ!!」
と、他の奴隷たちも乗り気になってきて、
「そのためには、魔力無しの状態に慣れておいて
もらわないとね。
最初は少々キツいけど、その代わりメシが
旨くなる事は保証するよ」
最後にブロウがそう言うと、全員が復讐の
笑みを浮かべた。
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