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視点、朔
和解した俺たちは、机の上で美佐子さんのメモ書きを広げ、新たなヒントを読み解き始めた。
「『ひなの光』が最も必要とされる場所で、小箱はあなたたちを待っている」
「『ひなの光』……陽姫の名前、そして、美佐子さんが私を『陽だまりみたい』って呼んでくれた言葉」ひなは言った。
「その場所は、美佐子さんが最も陽の光を求めている場所、または、陽の色彩感覚が最も活かされる場所を意味する」
俺は推理を重ねた。
1、美佐子さんが光を求めている場所: 夢を諦めた美佐子さんが、再び光を感じられる場所。
2、ひなの色彩感覚が活かされる場所: ひなが色を判別し、美しさを感じられる場所。
「家の中で、ひなの光が最も差し込む場所は、リビングだ」俺は言った。「でも、リビングは毎日使う場所だから、小箱を隠すにはあまりにも無防備すぎる」
「違うよ、おにいちゃん。リビングは『光がある場所』。美佐子さんは、私たちに『ひなの光が最も必要とされる場所』を探してほしいんだ」
ひなは立ち上がり、部屋の中を見渡した。そして、ふと、俺の机の前に置かれた未完成の風景画に目を留めた。それは、俺が七年間、完成させられずにいる作品だ。
「おにいちゃんの部屋だ」
「俺の部屋?なぜだ?」
「この家の中で、美佐子さんの優しさと、私の太陽の光が、最も届かないとおにいちゃんが信じている場所。そして、美佐子さんが、おにいちゃんの『影』を最も心配している場所」
ひなは、俺のスケッチブックの隅に描かれた、一枚の小さな絵を見た。それは、幼い頃のひなと、俺が並んで立っている、記憶のスケッチだった。
「そして、おにいちゃんの部屋は、美佐子さんの家の中で、唯一、色がない場所。おにいちゃんはいつも、色彩を嫌い、自分の描いた絵にも、どこか影の色しか使わない」
俺は、自分の部屋を改めて見渡した。壁は白く、家具もシンプル。俺が意図的に感情の色を排除した空間だ。
「ここが、美佐子さんの愛と、ひなの光が最も必要とされる場所……」
俺は納得した。美佐子さんは、俺がひなの光を信じ、共に未来へ進むことを願っている。その第一歩として、俺の閉ざされた部屋を『希望の小箱』の解放の場に選んだのだ。
「でも、小箱自体はここにはない。どこに隠したんだ?」
ひなは、俺の部屋の隅にある、俺が美術部の道具を無造作に放り込んでいる大きな木製の箱に近づいた。
「この箱……美佐子さんが私たちを連れてきた時、美術の道具を入れるのにってくれたものだよね」
ひなと、その木の箱を、俺と二人で持ち上げた。中身をどかすと、箱の底板が、他の部分と比べてわずかに色が違っていることに気づいた。
「ここだ」
ひなは、手に持った鍵を、その底板の隙間に差し込んだ。
カチリ。
鍵が、小さな音を立てて、底板のロックを解除した。