それから俺は以前より藍の病室へ行く日を
増やすようになった。
「藍、来たよ。」
「石川さん…そんな毎日来なくてええのに…」
「ふふっ、いいんだよ?俺が藍の様子見たくて来てるだけなんだから」
俺は笑いながらそう言うと持ってきた
リンゴを包丁で切り始めた。
「それでさ、藍…?何かここ数日で
思い出した事とかある?」
「思い出した事…ないです…」
「そっか、無理に思い出さなくていいからね?藍のペースでゆっくり思い出してね?」
「はい…!」
「それで藍、身体はどう?痛くない?」
「あ、えっと…大丈夫ですよ?」
「そっか、頭は?痛くない?」
「頭も痛くないです…でも…」
藍は突然何か悩んでいるような顔をした
「藍…何か悩んでる事でもあるの?」
「え、あぁ…悩みって程でもないんですけど…最近おかしな夢を見るんです…」
「おかしな夢?」
「はい…なんか…石川さんに似た男性と、色んな場所を回ってる夢で…」
「へぇ、どんなとこ回ってるの? 」
「えっと、確か…洋服屋さんから始まって…アクセサリーショップとか、レストランとか、後はなんか旅館とか、ホテルとか…後は誰かの家ですかね…」
「そっか…不思議な夢だね?」
俺は感じた藍が夢で回ってた場所は全て
記憶がなくなる前に藍とデートで
回った場所だった。
「なんか、その夢気になるし、またおかしな夢見たら俺に教えてよ?」
「はい…!」
そして藍と話していると
「藍、はいどうぞ!」
切り終えたリンゴをお皿にのせて渡すと
「わ、すごい!石川さんってうさぎリンゴ
できるんですか?」
「うん、まぁ、母さんがやってたやつ見てたら覚えてたんだよね。」
「ふふっ、そうなんですね…」
「石川さんお話聞いてくれて
ありがとうございます…」
藍はそう言うと笑顔を浮かべた。
記憶を無くす前とまったく変わらない
可愛くて優しい笑顔を。
そして俺はそんな笑顔を向けられ嬉しくなる
と同時に仕事があったため病室を後にした。
それからしばらく練習とテレビの撮影が
立て込み 藍に会いに行けなくなっていた
ある日の事だった
いつものように練習をしていると
「祐希!!」
関さんが慌てて走ってきた
「関さん?どうしたんですか?」
「藍が頭を抱えて苦しそうに祐希の事
呼んでるって!病院から電話が来たんだよ!」
「嘘…藍が?」
コメント
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続きが‥気になって‥ 読んでいてドキドキでした!