ある日の夕方。大我が北斗と一緒に家に帰ると、珍しく4人がすでに揃っていた。
「おう、お疲れ。どうだった? 新しい仕事は」
優吾が大我に向かって言った。
大我は、北斗の働くレストランの厨房で働きはじめたのだ。お皿洗いや掃除などから始めているらしい。
「楽しいよ」
少し口角を上げる。北斗も一緒で安心できているのだろう。
「お昼ごはんもおいしい」
「ああ、まかないね」
それは先輩シェフが作っているのだが、毎回おいしそうに食べているのを見て北斗も嬉しそうにしている。
「仕事の要領もいいし、視力とかも今のところ問題ないよ」
そう樹に報告した。
「おっけ。あんま影響はないみたいだね」
担当医は安堵の息をついた。
すると突然、「ピーンポーン」と軽快なチャイムの音がした。来客や配達物のときは大体優吾が出るのだが、ジェシーが制す。
「俺出る」
そしてリビングに戻ってくると、ジェシーは大判の封筒を持っていた。それを神妙な面持ちで開封しはじめる。
「何それ?」
慎太郎が興味深々に訊く。
「んー、ちょっとね」
なぜか歯切れの悪い答えに、みんなも首をひねる。
やがて取り出したのは、2枚の紙だった。
気になって5人がのぞきこむ。
「全部事項証明…。戸籍?」
北斗が尋ねる。
「そう。むずかったけどね、お母さんのを取るには俺しかできないらしいから」
そう言うと、大我をのぞく4人の顔色がさっと変わる。
「あっ、そうか! その手があったか」
樹が手を叩いた。
「えちょっと見せてよ」
「兄ちゃんたちは載ってないけどね」
それはジェシーと大我の亡くなった母親の戸籍だった。しかし除籍となっている。
その下部には、それぞれの夫の名とジェシー、大我の名前が記されている。そして、彼女の母親の欄には4人兄弟の祖父母の名前があった。
そう、それがすべてを物語っていた。
「うわ…ほんとだ。1枚目には大我、2枚目にジェシー。すごい」
もうわかっていたことだけど、優吾は目を丸くする。
「ってかこれどこで取ったの?」
「区役所に書類を送って、それで戸籍を送り返してもらった。いや、手続きが大変だったよ…」
なら言ってくれればよかったのに、と北斗は苦笑する。
「でもこれでやっとほんとにわかったね。ジェシーと大我は異父兄弟で、おばあちゃんが俺らと一緒。つまり俺ら兄弟とはいとこってわけだ」
そう慎太郎が言うと、大我は嬉しそうな顔をする。
「みんなと一緒」
うん、と優吾はうなずく。
「これからもずっと一緒だからな。…よく、今まで頑張ってきたな。一人で辛かっただろうに」
大我は笑って首を振る。
優吾は続けた。
「おかえり、大我。俺ら、血が繋がってたんだね」
おかえり、僕らの妖精さん。
終わり
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