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自宅に帰り、買った食材を冷蔵庫に入れる亮。
色々買った服やベビー用品を、もう一度広げて、
嬉しそうに見ている舞。
「舞〜」と、抱きしめる
「ん?」
「ごめんな、ずっとバタバタしてて、舞とゆっくり買い物すら行けてなかったな」
「ううん、亮は忙しかったし…今日、楽しかったよ。」
「仕事も安定してきたし、これからは、もっと一緒に行こうな」
「うん、嬉しい!ありがとう」
ぎゅーっと、黙って抱きしめる亮
「どうしたの?」
「もっと2人の時間、いっぱいあったのに…」
「ん?」
「俺は、赤ちゃんを作ることしか考えてなくて…
もっともっと2人の時間を大切にしなきゃな。」
「大丈夫だよ。そばに居てくれてるじゃない。」
「そうだけど…だから、同級生の女友達が来た時も変な心配をさせてしまったり…」
「う〜ん、アレは、ただのヤキモチだよ。セクシーな女の人だったから…私は妊娠初期だったし、亮が浮気してるのかと思っちゃって…」
「最初の付き合い方が人とは違ったからな…」
「そうだね…ずっと恋人になれないって思ってたから…だから今は、すっごく嬉しいよ。」
「なら、良かった。」
と、また抱きしめる亮。
「ふふ、変な亮…でも嬉しいよ。ありがとね。」
「こちらこそ。」
一緒にご飯を作って、一緒に食べる。
ただ、それだけなのに、すごく嬉しい舞。
亮もニコニコしている。
自然と目が合うと、ニッコリ笑顔になる2人。
「ふふ」
「何?」
「舞が笑顔だと嬉しい」
「ふふ、私も亮が笑顔だから、嬉しい」
「もしかして、俺、難しい顔してた?」
「うん、さすがに選挙の時は、難しい話をして、
難しい顔をしてた。」
「あーそっかあ」
「だから、今は、優しい顔の亮」
「そっかあ〜」
「ふふ、だから嬉しい」
「もう、ちゃんと土日祝日は、休めるから、一緒に買い物したり、一緒にダラダラしたりしような」
「うん!ふふ、ダラダラ〜って…」
「何?」
「昔、上司だった亮から考えられない、ダラダラ」
「そうか?」
「うん、違う一面が見られて嬉しいもん。他の誰も知らない亮だよ。」
「そっか…2人であんまり出かけられなかったから、行きたい所があったら言って!」
「うん、今は、妊婦だからあちこち行けないけど、
映画観たり、春には桜を見に行ったり、秋には紅葉を見に行ったりしたいし、夏はもちろん海にも行きたい!冬は、雪を見に行きたい!」
「うん、そうだな、今度は3人で行けるな」
「うん、楽しみにしてるね」
亮は、舞の笑顔を見てるだけで嬉しい!
と、思っているから叶えてあげたい、と思った。
数日経った昼間、自宅の電話が鳴った。
「もしもし、藤堂さんのお宅ですか?」
「はい、そうです。」
「私、亮さんと学生の頃の同級生で、坂野と申します。亮さんは、いらっしゃいますか?」
女性の声だ。
『こんな昼間に家に居るわけない!』と思った舞。
嫌な予感しかしない。
「いえ、主人は仕事に出かけてますが…」
「そうですか…何時頃、お戻りになられますか?」
「毎日、違いますので…お急ぎでしたら、こちらからかけ直すよう、申し伝えますが…」
本当に知り合いかどうか?分からないから、
ホントは、毎日19時までには帰宅するが、教えなかった。
「いえ、急ぎではありませんので、またかけ直させていただきます。」
「そうですか…」
「では、失礼します。」
「失礼します。」
とりあえず、電話を切った。
知り合いなら、携帯電話の番号や職場の番号を知ってるはず!
亮にメールで伝えた。
「了解!」とだけ返信が来た。
学生の時、《《坂野》》という人が居たかどうか?
私にはわからない。
「また…」不安…
真相が分からないこの時間が嫌い。
旦那様がモテる人だから…
昔から分かっているけど、未だに、こうして、
知らない女の人から連絡があると、不安な気持ちになる。
おまけに今は、妊娠中で過敏な時期。
『誰だろう…』
亮が帰って来た。
「ただいま〜」
「お帰り〜」
「はあ〜疲れた。」
「お疲れ様…」
疲れた!と言われて、こちらから、わざわざ聞くことも出来ずに黙ってしまった。
きっと又、不安気な顔をしてしまったのだろう。
「舞?大丈夫?」
「うん…」
後ろを向いて、夕飯の用意をした。
手を洗って戻って来た亮
「舞!昼間の電話のこと?」
「…同級生なんでしょう?」
「う〜ん、それが…分からないんだよな。坂野っていう名前、同級生に居たかなぁ?」
「え?でも亮、『了解!』って…」
「ちょっと今日バタバタ忙しくて、後で考えようと思って…いくら考えても思い出せないんだよ。」
「え?そうなの?」
「うん、女の人だったんだろう?」
「うん。学生の頃の同級生って…」
「いや、ホントに思い当たらないんだよな。」
「じゃあ、ただのセールスかなぁ?もし、今度かかって来たら、いつの頃の?って聞いてみる。」
「うん、なんなら用件を聞いておいてもらえる?全く分からないから…」
「聞いてもいいの?」
「うん、ホントに思い当たらないから…」
「分かった。」少し笑顔になった舞
「舞?」と、亮が舞に近づく
「ん?」
「もしかして、不安だったの?」と笑いながら聞く
「そんなことないよ…」と言いながら目を逸らす
「ん?」と、顔を覗き込む亮
「…う…ん、《《また》》元カノかなぁ?って…」
「《《また》》って…酷っ!」
「だって、いっぱい居るから分からないもん。」
「いっぱい!…居ないよ、そんなに…誤解だってば…」
「そうかなぁ?」
「え?もう〜舞〜」
「ふふ」
舞と付き合う前のことは、知らないし、
亮が大学生になった時、たくさんの女の人と付き合ってると思っていたから、まだ拭い去れないでいる舞。
でも、亮は『坂野』という女性を知らないというから、きっと知らない人だよね。と、自分にも言い聞かせている。
数日後、また電話がかかってきた。
「藤堂さんのお宅ですか?」
『あ!あの女の人の声だ!』と舞は思った。
「はい。」
「先日、掛けさせていただきました、坂野と申しますが、ご主人様は、ご在宅でしょうか?」
「いえ、平日は、毎日仕事に出ておりまして…主人の方から、ご用件をお伺いするようにと、申し受けましたが…」
「あ、そうですか…」
「どのような件で…?」
「あの〜私、亮さんと高校生の頃、同級生だった坂野太一の妻です。」
「坂野太一さん」
「はい。先日、主人が亡くなりまして…」
「え?そうなんですか?」
「はい。」
「それは、ご愁傷様です。」
「あ、ご丁寧にありがとうございます。
で、主人の遺品を整理していましたら、昔の写真や手紙が出て来まして…」
「はい。」
「そこに、ご主人様と撮った写真と手紙がありまして、『藤堂 亮に千円返す』と、書かれていて、一緒に千円札が入っておりましたので、大変申し訳ありませんが、主人も心残りだったと思いますので、代わりに私がお返し出来ればと思いまして…」
「そうでしたか…主人にその旨、伝えさせていただきます。なにぶん日中は、忙しくしておりますので、夜でもよろしければ、こちらから折り返しお電話させていただきますが…」
「分かりました。では、よろしくお願いします。」
「着信番号が出ておりますが、こちらの番号でよろしいでしょうか?」
「はい、結構です。お願い致します。」
「はい、申し伝えます。では、失礼致します。」
少しでも、疑った自分が、なんだか、恥ずかしくなった。
亮に伝えないと…
休憩時間に読むかなぁ?
しばらくして、既読になった。
『分かった。ありがとう。』と来た。
コメント
2件
なんかほんとかな⁉️