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???「この前は兄と姉がすみませんでした……」???「いやいや気にしないで!」
ここは、橙の家。そこへ申し訳なさそうに顔を顰める「紅緒」と療養している「紫雲雨花」が話し合っていた。
紅緒「いえ!何かお詫びをさせて下さい!」
雨花「えぇ……でも……うーん…………」
雨花は、しばらく考えると紅緒にこう告げた。
雨花「じゃあ散歩に連れ出してよ!ね?」
紅緒「…………え?」
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紅緒「これ橙さんにバレたら不味いんじゃ……?」
雨花「まあまあ!紅緒ちゃんの悪いようにはしないから!」
雨花たちは、黄泉比良坂の湖のベンチに座っていた。
紅緒「いや、重傷者を治ってもいないのに連れ出していたら充分問題だと想いますよ……?」
雨花「でも最近全然外に出れてなかったから行きたくて〜この湖〜」
ここは、黄泉比良坂の北の方。とても寒く、雪も降っている。
雨花「紅緒ちゃん大丈夫?ごめんね。急にこんな寒いところに連れてきちゃって……」
紅緒「い、いえ、大丈夫ですよ。はぁはぁ……」
紅緒は、手を息で暖める。
雨花「やっぱり寒いよね……自販機で暖かい飲み物買ってくるよ!ちょっと待ってて!」
紅緒「そんな!怪我人が走っちゃダメですよ!!雨花さん!!雨花さーん!!ってもういないし……あれだけの怪我をしておいてまだあんなに速く走れるなんて……相変わらずすごい人だな……」
紅緒は、湖をじっとみる。
ここの湖は、ところどころ凍っていて、濁っているわけではないのに、何も映っていない、底がみえない、とても暗く寂しい湖だった。
紅緒「(これほど泣きたくなる湖に来たかったんですね。雨花さんは……)」
紅緒は、雨花の言った言葉を想い出した。
《殺したいなら好きにすれば良いと私は想う。あの世にもこの世にも「殺しちゃいけない」っていうルールはないんだよ。「殺し」というものが行われると、たまたま周りが困ったり、めんどくさいことになるから。だからたまたま「殺さない」っていう選択を取る人が多いってだけで。「殺す」のも「殺さない」のもどっちも”強さ”だよ。私は紅緒ちゃんの意見を尊重する。それが例え「殺す」という選択でも。》
紅緒「…………」
《それでも傷をつけてしまったということを無駄にしちゃいけないんです。だって無駄にしたらその人たちの負った傷が蔑ろにならせてしまうから。だからこれからの生き方を変えるしかないんです。本当に辛いことですが、そうすれば自分の心も守れるし、死んだ時「頑張ったね」と言われる一生を私はあなたにも送って欲しいから。》
紅緒「(あの時は、雨花さんがあいつに言ったあの言葉。何であんな言葉をあいつに言ったのか。それはきっと過去の自分と似てたから……なのかな?)」
紅緒は雨花の過去を知らない。でも雨花から感じるあの目は、抱えきれないものを抱え続けているようなとても果てしなく暗い何も映っていない目だった。
この湖のように。
紅緒をそれをずっとみていた。
紅緒「そういえば、あの目と似ていた目を”彼”も持っていたな。」
紅緒の言う彼とは、通り妖魔に襲われたという元恋人のことである。
時は遡る。
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???「いらっしゃいませ〜」
ここは、紅色喫茶店。紅緒が冥府に務む前、つまり、実家で喫茶店の手伝いをしていた時。
「こんにちは」
紅緒「え?あぁこんにちは」
紅緒「(男の人がわざわざ話しかけてきた……?)」
「お前、前に客にクレーム入れられてただろう?大丈夫だったのか?」
紅緒「えぇ。あれくらいは別に。私にも原因があった訳ですし。」
「ふーん」
紅緒「……あの。それを言うためにわざわざ?」
「ダメかよ?」
紅緒「……ふっ。ふふふふ……」
「何で笑うんだよ!」
紅緒「すみません……ふふっ、顔にあまりセリフが似合ってなくて……ふふっふふっ」
「////……そんなに笑うなよ……」
こうして、紅緒はその男性と距離を縮めて行った。
「お前は偉いな。周りに悪く言われてもそれを受け止められるなんて」
紅緒「そ、そうかな……////」
「ふん。褒められたぐらいでそんなに照れて……変なやつ」
紅緒「……!////」
「また一緒に出かけような」
紅緒「?」
「はい、これ誕プレ。」
紅緒「え、あなたが私に?
「……なんだよ。俺がこんなの渡すのがそんなに意外だったか?」
紅緒「うん意外」
「お前なぁ……せっかくお前の好きなキャラの缶バッジなのに〜」
紅緒「え!?そうなの!ごめん!ごめん!」
「どうしよっかなぁ〜」
紅緒「ごめん!だから頂戴!」
「ひひっ……!」
「お前とはずっと一緒にいたいな。」
紅緒「え?それって……?」
「…………そういうこと……だよ」
紅緒「!、えへへ」
「////////……はぁ……緊張した……」
紅緒「ありがとう」
「……!、あぁ」
こんな日がこれからも続くのだと紅緒は想っていた。しかし……
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……俺に近づくな……!!!!」
紅緒「ど、どうしたの?私……」
「お前……何なんだよ!どうして俺に近づくんだ?お前なんて……」
「「大嫌いだ!!!!」」
紅緒「……え?」
そこから判明したのが、
自分の彼氏────いや婚約者が、「通り妖魔」に襲われ、彼の一番とても大切な記憶を、絶望の記憶に改竄されたこと。それによって「あの目」になっていたこと。それからは……
「お、俺は……」
紅緒「あの……」
「ひっ」
紅緒「…………」
紅緒は妖術を使って、眠らせた。そして……
紅緒「今まで……ありがとう」
紅緒は、自分の好きな人の自分との記憶を憎い妖術で消した。
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紅緒「…………」
雨花「おーい!!紅緒ちゃーん!!」
紅緒「……!、雨花さん」
雨花「かなり遠くに自販機あったみたいで、遅くなってごめんね!」
紅緒「いえ……大丈夫です……けど!」
「「何ですか!この大量のスナック菓子!!」
雨花は、大量のスナック菓子を抱えていた。
雨花「近くにコンビニあったからスナック菓子買ってきた!!一緒に食べよう!」
紅緒「(これ私たちだけじゃ食べきれないんじゃ……)」
雨花「食べよ食べよ!」
雨花は早速、スナック菓子を食べ始めている。
紅緒「……ふふっそうですね。食べましょうか。」
二人で湖をみながら、もぐもぐ食べ始める。
紅緒「……こんな湖みたいな……寂しい目だったな。あの人。」
雨花「……紅緒ちゃんは、優しいね。」
紅緒「……優しくなんてないですよ。」
雨花「…………彼のそういう姿をみたくなかっただけ……って想ってるの?それでも例え彼にとっては苦しい想い出に変わっていたとしても彼との記憶を自分のしかも妖術で消すのは……自分より他人を優先したってことでしょ?それは優しさって言うんじゃない?」
紅緒「……そうなんでしょうか…………」
雨花「(わたしにはどうしようもできないな。)」
引き続き、雨花と紅緒はスナック菓子を食べる。すると、男性の集団が通り過ぎた。
その中には────
《お前そろそろ結婚式だろ?》《俺たちが感動泣かせてやるよ》《そうだな。でもあんな可愛い紅緒ちゃんっていう女の子も近くにいたのにな》《いやあれは高嶺の花だろ》
紅緒「!」
《でも今お前幸せなんだろ?》《あぁそれは……》
《もちろん!!》
紅緒「ふ、ふふふっ……良かった」
雨花「…………」
「やっぱり優しいじゃん。あはは!」
「さてと……」と、雨花は立ち上がる。
雨花「そろそろ帰ろっか」
紅緒「そうですね。」
二人は帰る支度を始める。
雨花「また一緒に出かけようね!」
紅緒「!」
《また一緒に出かけような》
紅緒「……ふふっ、はい!」
それから二人はそれぞれの帰路に着いた。雨花は帰るとメキメキに怒っている橙とその隣で顔を顰める海音が待ち受けており、
「ひぃぃぃぃ!お助けを!!」
「走るんじゃありません!!」
「雨花!!疾走しないで!!」
「二重の意味で?」
「「うるさい!!!!」」
ひたすら住宅地を駆けずり回り、橙に四時間説教されたのだった。(ちなみに紅緒が、お詫びとして来たことは雨花の性格上話しませんでしたとさ)