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暫(しばら)く思い出そうとしていたナガチカだったが、諦めを表情に浮かべて言葉を口にする。
「うーん駄目だ、ランプと言うザリガニの事だけはどうしても思い出せない…… 極端に印象が薄いタイプだったんだろうか? ジロー君、取り敢えずドラゴとヘロン、それにキトラに『存在の絆』で通信を送ってみてくれるかな? ユイちゃんは村の仲間達に通信してランプの事を知っているメンバーを探してみてくれるかな? 誰か覚えていれば良いんだけどね」
頷いて通信を始めたのだろう、褐色にピンクの巨体は瞑目(めいもく)を始め、その姿を目にしたナッキはやや焦りを感じながら思う。
――――やばっ、そう言えばランプだけは昔の仲間とかに関わる発言をしていなかったんだった…… まあ、村の全員に聞いているみたいだから直(すぐ)に理解するだろう、全く無名の誰とも関係ない孤独で寂しいボッチのザリガニだって事を……
何も知らないランプにすれば、完全な貰い事故である。
しかし、避けられないと思われた事故は意外な言葉で回避されたのである。
まずはジローの言葉である。
「おかしいぞナガチカ! ドラゴとヘロンは勿論、キトラの爺さんにも『存在の絆』が通じないぞ!」
「えっ? 何で、そんな事が……」
意外そうに驚きの声を上げたナガチカにナッキは言う。
「あ、それだったらドラゴも同じ様な事を言っていたけどね、誰を呼んでも通じなかったそうだよ」
「そ、そうなのかい? でもキトラだったら僕自身、義父母の時代から一緒に戦ってきた言わば戦友なのに…… その『存在の絆』が切れるなんて、いや、やっぱり考えられないよ! 異常事態だってばっ!」
ナガチカの声を肯定する様に今度はユイが話し出したが、こちらの内容は更に深刻だった事が、ナガチカとジローの反応からナッキとサニーには察せられたものだ。
「ナガチカ一大事だわ! 村の皆、いいえそれだけじゃなく、仲間の誰とも『存在の絆』が通じないのよ! 私達三人の間でも同じみたい! ほら、私の声、聞こえる? ……………… どう?」
「き、聞こえないよ………… な、何で、突然こんな事が…… と、兎に角、集落の仲間を集められるだけ集めて、現状の把握と今後の対策について話し合わなければ! ジロー! 皆を集めよう!」
「お、応っ! 判った! おーい皆ぁ! 集まってくれぇー! 緊急事態だぁー! 集まれぇー!」
何やら大騒ぎになってしまった事で、弱った感じで顔を見合わせているナッキとサニーにナガチカが言う。
「すまないが今後の事を話し合わなければならなくなってしまった、仲間たちとの相談が終わったら君たちの池、『美しヶ池』を訪ねさせて貰うよ、今日の所は先に戻っていてくれないかな、ナッキ殿、サニー殿」
ナッキとサニーは無言のままで頷く事しか出来なかった。