テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「美香の姉の秋山 清香です。突然の電話ですみません」
『清香さんですね。電話もらえて嬉しいです』
「電話したのは、聞きにくいのですが┅┅」
『何かあれば気にせず、聞いてください』
「美香とは、どのようなお付き合いなのでしょうか?」
『妹さんのことは、ご主人との不倫を聞いて協力したくなっただけで、正直、興味がありません』
「それなら良かったです」
美香は二股をかける気満々でいるから、高塚が本気になってしまったら、申し訳ない。
『それって┅┅僕にもチャンスがあると思っていいのかな』
「え?」
高塚は清香の言葉を聞いて、自分に興味があると思ったのだろう。
『僕はこれからも清香さんに協力したいと思っているので、一度お会いして今後のことを相談しませんか』
「それじゃあ、一度お会いして相談させてもらえますか?」
清香は最初から高塚に会いたいと思っていたが、自分から誘うのはためらわれたので、積極的に誘ってもらえるのはありがたかった。
『良かった。いつ頃なら空いてますか?』
「昼間なら、いつでも大丈夫です」
『じゃあ、予定がなければ、さっそく明日お会い出来ますか?』
「都内なら大丈夫です」
『ご指定の場所に、車で迎えに行きますよ』
車で迎えにくると言う高塚の言葉にも、つい、光一と比べてしまう。
◇◆◇
清香は朝食にリンゴを食べて、念入りに化粧水を肌に叩き込んでいく。
「デートじゃないのに緊張する」
友美の話しだと高塚は清香を気に入ってくれている。
自分を気に入っている相手に会うのは、嬉しい反面、幻滅されないかと心配にもなる。
痩せていた頃に着ていたシースルーを重ね合わせた青いワンピースで、待ち合わせ場所に向かった。
10分前には到着したが、高塚はすでに車を駐車スペースに停めて待っていた。
「はじめまして、高塚です」
清香を早々に見付けて車から降りてきた高塚は、思っていたよりもずっと背が高く、腰の位置も清香の胸くらいはありそうだ。
髪と瞳はブラウンで、染めていないとしたら、少し色素が薄いのだろうか?
日本人らしい切れ長で涼やかな目元だが、鼻が高く口元はキリッと結ばれている。
「はじめまして。秋山 清香です」
こちらから挨拶をすると、緊張していたのか高塚のキリッと結ばれていた目元と口元が嬉しそうにほどける。
「いやあ、写真通りの方だな」
高塚は右手で頭をかいて、少しだけセットした髪が乱れて、何だか可愛い。
「昔の写真をご覧になったんですよね」
「はい、そうです。それで、これからのことを相談するのにひと目が少ない場所がいいと思うんですが、お連れしてもいいですか?」
「はい」
「会員制のバーにお連れしますね」
「会員制のバー?昼間からお酒を飲む気てすか?」
ここでも清香の真面目さが、顔を出してしまう。
「別にお酒を飲むのが目的じゃないです。妹さんのことを話すのに、人目を気にしないですむ場所ってだけなので」
「分かりました。お願いします」
けれど高塚は家柄なのか元からの性質か、下品なところや、がっついたところがなくて、つい安心してしまう。
「じゃあ、車に乗ってください」
高塚のエスコートで車の助手席に乗った。
◇◆◇
車で移動して到着したのは、ヒルズと呼ばれる商業施設で、最上階に会員制のバーがある。
周辺は、初めて来た場所だが東京タワーが大きく見えるから港区辺りだろうか?
「頭に気を付けて」
高塚は誰にでもそうなのか、車を降りる時でさえ、相手のことを気にかけてエスコートしてくれる。
「さあ、こちらです」
ビルの中に入ると、大きなエレベーターがたくさん並んでいたが、人も多くてエレベーター待ちをしている。
「向こうのエレベーターです」
関係者専用のエレベーターが脇にあり、乗り込むのは高塚と清香だけだった。
エレベーターは会員カードを読み込ませると、階ボタンを押せる仕組みになっている。
「くす」
清香が物珍しいものでも見るように、高塚の一挙手一投足を見て、回りもキョロキョロ見ているので、高塚は笑ってしまった。
「┅┅」
笑われたことで清香はシュンとなり、下を向いてしまう。
「清香さん、笑ってしまって、すみません。でも、あなたがおかしくて笑ったんじゃありません」
「私が田舎者丸出しで、キョロキョロ回りを見渡してたからじゃないんですか?」
「可愛くて」
え?
清香は思わず瞼を何度もパチクリさせて、高塚を見て顔を真っ赤にさせた。
照れる清香を見て、高塚まで真っ赤になる。
「くす」
自分の方こそ、よっぽど可愛いじゃないと思った時には、清香も笑いがこぼれていた。
「あ、ごめんなさい」
「笑うのはいいことです。でも、今の笑いの意味は知りたいですね」
「┅┅可愛くて」
「え?」
高塚は清香からの予想外の言葉に、エレベーターの壁に腕をついて、喜びを噛みしめてしまう。
「あの、着いたみたいですよ」
エレベーターは目的地に着いており、ドアが開いていた。
「こほん、失礼しました」
「くすくすくす、いいえ、こちらこそ」
高塚は先に降りて、エレベーターのドアが閉まらないように、端に手をかける。
エレベーターを降りると、ウエイターが控えていて、すぐに店内に案内された。
「半個室の窓際になりますが、こちらでよろしいですか」
案内された席は、窓にソファが設置されていて、まるでデート用のボックス席のようだったが、確かに会話を聞かれる心配はなさそうだ。
「ここで大丈夫ですか?」
大きな手が席を示して、並んで座るソファを清香が嫌がらないか確認してくれる。
「はい」
ドキン
何故か、返事をした途端、心臓の鼓動が大きく高鳴ってしまう。
席について、ウエイターから渡されたメニューで2人とも冷たい烏龍茶を頼む。
目の前は大きなガラス張りで東京タワーが見えた。
その時、清香のスマホが鳴り、画面を見ると美香からの電話だ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!