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私は聖女ではない。
どちらが正しいかはっきりさせたいだけ。
浮ついた心で何も学ぼうとしないイリナへ忠告したでしょう。
あなたはどちらが聖女であるかはっきりさせましょうと言っていたけれど。
何度も言っているわよね。
聖女は、あなただと。
でも、聖女の儀式の条件を満たしてないけれどね。
この儀式が行われなくなったのは、道徳的な部分もあるけれど考え方の変化もあるのよ。
光魔法を使えること、
清らかな乙女であること、
殺生を行っていないこと、
肉を食していないこと、
全ての民に無償の愛を注ぐこと、
人を欺き裏切らないこと
以下略
とにかく細かく聖女の条件が記載されているの。国民の理想像の聖女の項目だから、あまりにも現実的ではなく、廃止になったのだけどね。
古は魔力持ちの家系は、生まれた時からベジタリアンを貫いたそうよ。
純潔を守るのは当然だけれど、最近は初夜にこだわらない風潮もあるし、聖女だから正妃になるとは限らないしね。
でも、イリナは聖女だから、当てはまらない項目が多いけれど死ぬことなないわよ。
ただ、無傷ですむかは分からないけれど。
私は聖女でないから、本来なら死ぬはず……
でも、儀式を冒涜する出来事が起こると、冒涜した者には裁きが下る。
私の聖水だけ少し濁っていたわ。
急いでいたのか完全に解けきっていないのに置いたでしょ?
ねぇ、レオナルド殿下、どうしてそんなに殺したいほど私を嫌うの?
あなたがもっと正式な手順をふんで、イリナとの婚約を望めばよかったじゃない。
イリナの行動を改めさせて勉強を勧めて、周囲を納得させる気概を見せないのはどうして?
私は婚約者として、ずっと努力してきたのに、こんな形で終わりになるなんて……
さようなら、
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「おはよう、愛しいユリア、よく眠れたかい?」
爽やかな声色で耳元に語りかけられてぱっちりと目を開ける。
「カイル、おはよう」
サファイアのような瞳が憂いを帯びて大きくなる。これ以上の幸せはないという笑顔をカイルは向けてくれる。
私はカイルに抱きしめられて朝を迎えていた。
亡命してからもう数ヶ月はたつ。
まさか、こんなに幸せな生活が送れるなんて思ってもみなかった。
この日のためにカイルは根回ししていたようで、新居も身分も全て準備してくれていた。
聖水を飲んで意識不明になったのは、イリナも同じだった。
混乱に乗じてカイルは私を連れて他国へと転移してくれた。
目が覚めるとイリナは声を失っていたそうだ。グラスから毒物が検出されていた。儀式を冒涜したからか、聖女と関係を持っていたからか、レオナルド殿下は下半身不随となり車椅子生活を送っているそうだ。
勿論、今回の件で廃嫡となったが、王命でイリナと結婚。
邸ではレオナルド殿下の怒号と、物を投げつけるイリナの奇行が繰り返されているそうだ。
けれど二人のことは、
名誉の負傷を負ったレオナルドと、かいがいしく世話をする声を失った聖女
と、表向きにはなっている。
忽然と姿を消したユリアと、筆頭魔術師カイルのことは、有能な二人に見限られた国と思われる訳にいかないので、箝口令が敷かれている。
私の能力は、能力というのかしら、ご先祖様の加護なのかしらね。
自殺防止魔法が、かかっているの。
自分の意志では死ねないの。
もう、死んでもいいと思った時は、助かることに気づいたの。
不慮の事故では発動しない。
あの時から、人生に希望なんて持っていなかった。
だから、この儀式で命を落としてもいいと、何もかも終わりにしようと思っていたの。
命を懸けの復讐よ。
きっと、何か仕掛けてくると思っていたから。
貴方たちも、無傷ですまないと思ったから実行したのよ。
万が一助かった後のことは、その時考えようと思っていたのに、
こんなことになるなんて……。
復讐してもすっきりはしないけれど、
今、カイルと一緒にいられることがこの上なく幸せだわ。
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