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シアン➣
kzlr
ギャグ風味あり
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なんでこんなことになってしまったんだろう。
おれは自分のしでかしたことに、猛烈な後悔を覚えはじめていた。
「ぅ、あ…、……っく、くずは、——あっ」
葛葉がおれの足のかかとをすくいあげた。
かかとを持ち上げられたまま、足の甲にちゅうっと口づけを落とされる。
突然の出来事におれが全身を硬直させていると、スネ、膝、太ももへと向かい、葛葉の唇の辿りが、上へ上へと上がってくる。
こんなこと、一度だってされたことがなかった。驚きと少しの恐怖心に、心臓がきゅうっと縮こまる。
「俺なぁ。ローレンの脚、めっちゃ好き……」
吐息交じりにそう言った葛葉の手が、おれの膝の裏を持ち上げた。そのまま、ふくらはぎから足首までの曲線をスーッと撫でられる。
ピンと真っ直ぐに伸ばされた脚を眺め、「綺麗だなぁ……」と葛葉がしみじみ言葉をこぼす。
「うっ…、……ッ」
もう片方の葛葉の手が、横たわっていた反対側のおれの内腿を這っていく。ぐっと押し込まれた指の腹が、肉の中へと沈み込む。
「ここがいっちばん、やぁらかくてなぁ……」
へこんだところに葛葉が顔を近づけ、細く息をついた。息を吹きかけられた場所に、葛葉の唇が吸い付いてくる。ぢゅうっ…と音を立てて吸われたかと思うと、ピリッとしたわずかな痛みがそこに走った。
「ほらっ、跡ついた」
嬉々とした葛葉の笑い声がして、再びそこに息が吹きかけられる。
首をわずかにもたげて見てみれば。足のつけ根のところに、うっすらとキスマークが出来ているのが見えた。それをうっとりと眺めている葛葉が、視界に映る。
「っ…はぁ…、はぁ…」
だんだん、おれの息が上がっていく。
葛葉はただ、おれの身体の表面に、手と唇で触れているだけだというのに。それだけのことなのに、体の内側がじゅくじゅくと熱くなっていくようだった。
ふいに葛葉が、おれの勃起している性器に触れた。
「ぅ、——あッ」
予期せぬ刺激に、思わず声が漏れ出てしまう。でも、触れられたのは一瞬だけで。
「ヘソの穴、ちっせぇな……」
葛葉の目当ては、その下だった。突然、ヘソの穴に舌をねじこまれる。
「んんッ!?」
じゅぼじゅぼと何度か舌を抜差しされ、そのたびに、びくん! と体が大きく跳ねてしまう。
ひとしきりやり終えて満足したのか。今度はTシャツをたくし上げられ、舌先で腹筋の凸凹を舐め上げられていく。
「うっ…あっ…ぁ、…あぁ…っ」
「ほんと…いい身体してる。強くて、しなやかで……」
おれの息は、絶え絶えだった。
腰のくびれた所を撫で上げながら、「俺より細ぇのになぁ」と葛葉が呟いた。
キスを落とす葛葉の唇がさらに、みぞおち、胸へと、じょじょにこちらへと迫ってきた。
「……はぁ、…っ…はぁ、…はぁ」
Tシャツは脱がされ、鎖骨に舌が這う。首筋に葛葉の甘い息遣いを感じただけで、おれの心臓は爆発しそうになる。
「ここ、くすぐったい?」
「うっ…、ううっ…」
赤ちゃんがイヤイヤをするみたいに、おれが首を横に大きく振っても、葛葉は動きを止めてくれなかった。
葛葉の舌先が、おれの首に浮き出た血管を舐め上げてくる。もしも今ここに、歯を突き立てられ、噛み千切られでもしたのなら……。
恐怖と快楽は紙一重だ。
ぞわぞわと産毛が逆立つのは、くすぐったさのせいじゃない。葛葉もそれをわかってるくせに、おれのことをからかっているのだ。
首裏にまわった舌が、耳の縁取りをなぞっていく。つづけて、おれの耳の穴の中を舐った。執拗に、ぴちゃぴちゃと音を鳴らしてくる。
「〜〜っ、…ぅぅっ、…〜〜っ」
「ローレン、耳も感じやすいよなぁ」
わざとフッ、と息を吹き込まれた。
「〜〜〜ぁッ!」
恥ずかしさで、どうにかなりそうだった。
葛葉のやさしい愛撫に、翻弄されてばっかりで。
これなら、もっと暴力的に、乱暴にされた方がマシだった。
閻魔大王に舌を抜かれるより、地獄の業火に焼かれるよりも。葛葉にやさしく触れられた場所が、ヒリヒリと痛みだす。
こんなの拷問だ。
全身をつつむ甘い痺れに、意識が遠のきそうになっていく。
肩口にぬくもりを感じたかと思うと、ふたたび二の腕、腕、手の甲、指先まで、葛葉の唇に辿られていた。
嫌じゃなかった。
葛葉になら、触れられても良いと、そう思えたんだ。
「ぁ…、……く、くっさ ん……、……」
気がつけば、人差し指が葛葉の口の中に含められていた。生あたたかい、ぬめりのある舌が指の付け根から爪先までを往復する。
「あっ…、ぁ……っ、くず、はぁ……あ、あぁ…っ」
まるでフェラチオをされるみたいに、指をちゅぱちゅぱと丁寧に吸い上げられる。さらには仕上げと言わんばかりに、真っ赤に熟れた舌先が、葛葉の指を舐め上げていく。その様を、これ見よがしに見せつけられる。
「——ぅ、——ぁ」
全身が、焼けつくみたいに火照っている。きっと、顔も赤くなってしまっている。
赤らんだ顔を葛葉には見られたくなくて、腕で顔を覆い隠した。それなのに、その腕をすかさず、葛葉がほどこうとする。
「や、やだ……見んな……」
抵抗するも、簡単にほどかれてしまった両の手が、顔の真横に固定され動けなくなる。指一本一本、隙間のないように指を這わされ、ぎゅっと握り込められる。
乱れたおれの前髪からは、おでこが無防備にあらわになっていた。そこに葛葉が、ちゅうとひとつ、キスを落とす。
もう、ここで。
ここで——打ち止めにしてほしかった。
これ以上葛葉のことを好きになってしまったら……
きっと
おれは葛葉から、離れられなくなってしまう……
「ローレン」
葛葉がおれに、小さな声で「好き」と言った。
甘い声で、葛葉はおれに、好きだと言う。
おれはもう、限界だった。
「う…っ、うきゅぅー……」
おれの喉からはついに、キュウッ、キュゥゥー…と、水中のイルカが甘えて鳴いているような声が出た。どっから出ている声なのか——自分の身体のことなのに、自分でも不思議でしかたなかった。
こんなヘンテコな音が自分から発せられているという事実に、おれは恥ずかしさから目をかたくつむった。閉じたまぶたの隙間からは、ぼろぼろと涙のしずくがこぼれ落ち、おれの頬を濡らしていった。
「ローレン、泣くな」
目頭にたまった涙たちを、葛葉の唇に吸われていく。うっすらとまぶたを開けてみれば、赤い光とぶつかった。目の前には、葛葉の赤い瞳。
「その顔……めっちゃ、そそる……」
心の中まで見透かされているような、真っ直ぐな視線で貫かれた。
「——ひ、ぅ……」
心臓をわしづかみにされた。そんな感覚に襲われて、おれは息をのむ。職場以外で、死を意識したことなんてなかった。今、おれは葛葉に命を握られている。
射抜くような視線はほどかれないまま、葛葉に指先をすくい取られた。そのままおれの右手の手のひらが、葛葉の左の胸元にゆっくりと持っていかれる。はだけた服の隙間、葛葉の黒いインナーシャツの上に、手のひらを沿わせられた。
「——ねぇ、わかる?」
「っ、…え?」
「俺のここ、めっちゃドキドキいってんの……」
布越しに触れた肌の下。
そこに存在する葛葉の心臓が脈打っているのが、手のひらを通して、体熱とともに伝わってくる。
どく、っ、どぐッ、っ、どく…と膨らんだり縮んだりするのを、厚い胸板の下で繰り返している。
葛葉の心臓の形を、ボクははっきりと、この手で知る。
「…どっかで一緒なら目で追っちまうし、廊下ですれ違えば……触れたい思う。喧嘩ふっかけてくる時、目の前でワーワーわめかれたら抱きしめてその口塞ぎたくなるし……二人っきりになったらそりゃぁ……抱き潰したいに決まってる……」
葛葉の手に力がこめられる。さらに押しあてられたおれの手が、葛葉の心臓を握りつぶしていくような錯覚に陥った。
どくどくどくどく…と鼓動が速まっていく。
葛葉が、声を絞り出しながら言った。
「我慢すんの、いっつも大変なんだよ……」
切羽詰まった葛葉の表情だった。
葛葉の胸のドキドキがおれにも伝播して、おれの胸まで悲鳴を上げはじめる。
おれの額に、葛葉の額が寄せられた。額と額が擦れ合う。
「俺がローレンのこと好きだって……これでもまだ、信じてもらえねぇの?」
葛葉のあたたかい体温が、じわじわとおれを侵食していく。
おれはただ、葛葉のことを精一杯見つめ返すのが、やっとだった。
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コメント
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ふぉろ&初コメ失礼します! 一気見してきました、大好きです!!! 言葉のチョイスが最強すぎゆ、、🫣 kzくんの愛情表現がまじで癖に刺さる…💘

あ”〜…好き。