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古流斬
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#ミステリー
翠琉
16
comi
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44
俺よりも何倍もでかい男が俺の目の前に立っている。男の右手の指一本一本が蛇のように伸び、うなり、筋が軋むような音を奏で無抵抗の俺の両親にとぐろを巻いて持ち上げる。
何も出来ず声一つ発せない両親を…
………あれから10年以上、それから定期的に…まるで憎しみ続け復讐を忘れさせないためかのように定期的にあの夢を見る。
そんなもの今更叶うはずもないし、見たくないとか助けてほしいとももう思わない。
喉が乾いたから自室から出て台所へ向かう。
廊下にはいつも朝の香りが漂う。
「おう芦兆起きたか、ちょうど朝飯出来るから居間で待ってろ」言売
蛇口をひねりコップ3分目ぐらいまで水を注ぐ。
「うーい」芦兆
起き抜けの水は美味い。
あの夢を見た直後だと居間がどことなく殺風景に見える。
お父さんとお母さんがここで仲良さそうに話したりテレビを一緒に見ていた。
言売は既に俺があの夢を見た日だと察してるのか、今日は口数が少ない。
その度に俺は自分で以外にも顔に出やすいタイプなのかもしれないと思ってしまう。
「いただきます」芦兆・言売
朝ご飯は白米、味噌汁、卵焼き、ウインナー、漬物はマスト。
今回は納豆入り卵焼きだ、納豆の粘り気がまろやかにし普通に米が進む。
「そういえばもうすぐで20歳の誕生日だろ、なんかやってみたいこととか行ってみたいところとかないのか?」言売
そういえばもうそんな時期か…。
元々そういうものに興味はなかったのだろうけども、改めて考えるとやっぱり思い浮かばない、それより言売のご飯は相変わらず美味──
「俺のお父さんとお母さんを殺したあいつに復讐したら、こんな夢見なくなるのかな」芦兆
思わず口走った、まずい。
しばらく沈黙が続いた。
それもそのはず、俺にも言売にもそいつの居場所に検討がつかない。
きっとそいつは今ものうのうとこの世のどこかで生きている。
何を考えて何を思って生きているかは知らんが俺が嫌でも復讐心に駆られてしまうのが悔しい。
「なんかもっと、現実的な〜とか可愛げのある夢とか聞きたいなー…って」言売
そう言われるのも無理は無いのは承知である。
「俺は………言売と戦争も論争もない平和な日常を過ごしたい、のんびり」芦兆
そういうと言売はまぶたをかっぴらいて驚いた、そんな意外なことだったのだろうか。
「なんだよ…思った以上に可愛げあるじゃねぇか、まぁそれもそうだな!」言売
この短時間に考えることが多く、ご飯を口に運んだ記憶があまり無かった。
「ごちそうさま」芦兆
「うい」言売
食器を台所荷運び、お腹を休ませてから畑の様子を見ることにする。
「ほいじゃ仕事だから行ってくるわ」言売
毎回思うが、あまりの手際の良さにいつ着替えをしたのかも分からない、さっきまで朝ご飯を食べていたのにいつの間にか準備が整っている。
「いてら」芦兆
言売を見送った後、一人ずっとダラダラしてもいられないので大体外で動いている。
畑の見張りや水やりや交配作業や肥料撒きや雑草抜き、軽い運動とかとか…たまには近場の森に赴き心を落ち着かせる。
自分の呼吸、鳥や虫のせせらぎ、草木の擦れ鳴く音、地鳴り、この森で聴く自然の全てが俺の心を一旦穏やかにしてくれる。
「ありがとう」芦兆
この調子で今年も何事もなく過ぎてくれるだろうか。
〈解説〉
・土橋 芦兆(ツチハシ ヨシキサ)
…男性、誕生日6月30日、年齢19歳、身長155cm。
…訳あって通学や就職はしておらず、だからといって言売に負担はかけさせまいと、小さな畑で自家栽培している、余ったものは冷凍したり近所に配っている(言売が)。
…6歳の頃、とある者に両親を殺され復讐を誓う。
…今作の主人公。
・土橋 言売(ツチハシ ゲンバイ)
…男性、誕生日8月15日、年齢38歳、身長180cm。
…正社員で普通に給料を貰っている、家はド田舎だが車は無く、驚異的な身体能力を活かし交通機関も使わず徒歩で通勤、その距離にして約10km。
…芦兆の父親の弟、手際も面倒見も良いためか独りとなった芦兆の第2の父親的存在に。
…定期的に季節に合った野菜の種を買って芦兆にプレゼントしている。
…今更になって結婚したいとはもう思ってない…らしい。
・家や畑
…家は芦兆の両親が残した一軒家、1回建てで普通に広い、居間の柱には芦兆の身長を測った痕があり、6歳の時点で行われなくなった。
…畑は元々農家だった父親の所有権であり、周りにも点々とあった、死後は弟の言売が引き取ることになるが知識が浅く仕方なくほとんどを近所に売り払うことに、かろうじて家の目の前にある小さな畑は芦兆が継ぐような形となっている。
コメント
1件
第1話、読ませていただきました。芦兆くんの静かな日常の裏に、ずっと癒えない傷があるのが伝わってきて胸が締めつけられました。朝ごはんのシーンで言売さんが「なんかもっと現実的な〜」と軽く返すところ、優しさが滲んでいて好きです。最後の「ありがとう」という独白が、自然の中でひとり呟くようで、切なくも温かかったです。続きが気になります🌷