この作品はいかがでしたか?
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こんにちは!るなです!
今日は節分!皆様は恵方巻き食べましたか?私は夜ご飯で食べました。方角向きながら食べるのって結構難しいですよね……。具が、落ちる……っ!
そして節分と言えばやはり鬼ですよね!ということで吸血鬼の太宰さんと酒呑童子の中也の話を書きました!初ノベル太中になります。
では、どーぞ!
꒰ 注意 ꒱
太中
***
最悪だ。
荒い息を吐き出しながら、橙色の髪の青年─────中原中也は森の中を走っていた。
背後から迫る影は中也との距離を確実に詰めてきていて、身体が圧迫感で押しつぶされそうになる。
肺が締め付けられ息をするのも苦しい。
時折足元の根に足を取られながらも必死に走る。
苦しくて走るのを辞めてしまいたかったが止まるわけにはいかなかった。
影に捕まったら最後、全てを諦めるしかないのだから。
「糞野郎…」
悪態を口に出して中也は足に再び力を込めた。
***
─────カラン
青年がグラスを持ち上げたことでグラスと氷が揺れる軽やかな音がなる。青年の喉がゆっくりと上下した。青年の手には一本のボトルが収まっており、グラスに再び透明な液体が注がれる。
ここは青年の行きつけのバーだった。落ち着いた雰囲気のお店で琥珀色の光が淡く店内を照らしている。青年の家からは少し遠い場所にあるが、雰囲気が気に入っていたし、何より気に食わない奴と会うことなくお酒を楽しめるのが大きいポイントだった。
再びグラスを口元に持っていきお酒を嗜む。
まだこのお店に入って二三口のお酒だったが、青年は酔いが回ってきたのか日頃の鬱憤が口を切って溢れ出した。連れがいる訳では無いので丁度良いタイミングで前に来たバーテンダーに向けて愚痴を零す。
「あの野郎がまた俺の家に勝手に上がってきて……俺の秘蔵の酒を盗みやがったんだ。楽しみに取っといたヤツだったのによ……この間なんか盗んだだけでは飽き足らず、中身を飲み干した空の酒瓶を態々置いてったんだぜ?信じらんねぇよ、飲むだけ飲んどいて片付けは人に押し付ける……それによ、」
ちびちびと酒を口にしながら青年が続ける話をバーテンダーは静かに聞いていた。青年の顔は赤くなり、目元は僅かに潤んでいる。
「前森に出掛けた時があったんだけどよ、彼奴約束してたのに、当日ドタキャンしやがったんだよ。まあ誰にでも急に用事が出来る事もあるだろうしドタキャンされたことは別に……いや少しは……。….連絡もらったのが約束の時間から五時間も過ぎてて……流石にそれは……ない….たのしみ……」
突然青年の言葉がプツリと途切れた。瞼がゆっくりと落ち、青年の頭はカウンター席の机に組んだ手の上に吸い込まれる。
バーテンダーは静かにグラスを拭いていた。
***
そよ風が頬を撫でる。目が覚めたのは薄らと空が白み始めた時だった。ぼーっとした頭は段々と冴えてきてここが外であることに気付く。琥珀色の光は見る影もなく変わりにあるのは朝の清々しい空気だ。息を吸い込み青年─────中原中也は立ち上がろうと腰を浮かせる。と、鈍い痛みが頭を襲った。ズンとのしかかるような痛み。昨日のバーで飲み過ぎてしまったのだろう。二日酔いを感じさせる痛みだ。思わず頭に手を置いて、硬いものが頭に付いている事に気付いた。慌てて確かめるも硬い感触が手に伝わってくる事実は変わらない。もしかして、と丁度鞄に入っていた手鏡で自分の顔を確認してそれは確信に変わった。
鏡に映るのは橙色の髪をして─────頭に鬼の角が生えている青年だった。
遅すぎる理解に脳が追い付き、慌てて辺りを見回す。幸いここは人気のない路地のようで自分以外の影は見つけられなかった。自分が寝ていた時の事は考えないでおこうと思考を放棄し、角を隠そうと術を試みる。しかし、幾度術を唱えようと角が隠れる気配はない。
「どうなってんだ…?」
思わず疑問が口に出るもそれが解決策を出してくれる訳では無い。中也は仕方が無いので自分が鬼だとバレないようにフードを被り、家へと帰る事にした。
***
ここまで来るのに随分と時間がかかってしまった。中也は暗くなり始めた空を睨み、そして気に食わない彼奴のことを恨んだ。そもそも彼奴が自分に向かって悪戯を仕掛けてこなければ今日あのバーに行くことも無かったのだ。そして、自分がこんな面倒な事になる事もきっと無かったのだ。と心の中で愚痴を零す。あれからずっと術をかけてみるも効果はなし。それによって公共交通機関を使えなくなり、徒歩で家に帰る羽目になったのだ。何時もの彼奴の趣味の悪い悪戯と比べればこのたった一回の恨み言など可愛ものだろう。
「この村をこえてやっと家…」
よし、と足に気合いを入れて入口を通り抜け村に入った。すると、中也は違和感に襲われた。何時もなら村人は家にいる時間だが今日は何故かまだ外にいる人が多い。大人の中にはちらほらと子供も混じっているのが見えて何かを心待ちにしているかの様にはしゃいでいた。大人が子供をいさめているのが目に入る。子供は手に四角い木の箱を持っていた。
「なんかイベントでもあんのか…?」
その問の答えは割と早い段階で明らかになった。村の中心の辺りに来た時、足元に小さな丸い何かが転がってきた。摘んで見てみるとそれは大豆のようだった。不思議に思っていると家の扉が開いて二人の子供とその母親が外に出てきた。子供は鬼のお面をつけ、木の箱に手を入れて何かを掴む動作をする。
それを見た時、本能が告げた。
─────これは不味い、
と。
頭が理解するより先に身体が動き、村を出られる所に向かって走り出す。
子供の高い声が中也の身体に衝撃を与えた。その言葉と同時に放たれた豆のパラパラと言った音が全身に殴りかかってくる。
逃げなければ逃げなければ逃げなければ逃げなければ逃げなければ。
脳が警鐘を鳴らし、耳鳴りが大きくなる。
パラパラパラパラ
四方八方から聞こえるこの音から逃れる様に走る。どんなに早く走ってもこの音は中也の身を追い立てる。
早く早く早く早く早く
***
「はぁ…っ…..」
木に手を当てて呼吸を整える。警鐘が鳴り止んだと分かった時、中也は森の中にいた。鬱蒼とした木々は月明かりしかない夜の空気に不気味さが増していた。闇の中の影は今か今かと中也を狙っているような気さえする。いや、多分気付かれたら狙ってくるだろう。
「今日は厄日か…」
思わず零した声に中也は慌てて口を抑える。だが、そのかい虚しく影は反応した。木の影を形作っていた影は形を変え、ロープの様に収束し中也に狙いを定める。
「あぁっ糞っ」
中也は再び走り出した。
***
最悪だ。
もう何もかもが最悪だ。
バーに行ったことも、術が効かなくなることも、今日が節分だと忘れてのこのこ村に入ったことも、この森に入ってしまったことも。
荒い息を吐き出しながら、中也は森の中を走る。
背後から迫る影は中也との距離を確実に詰めてきていて、身体が圧迫感で押しつぶされそうになる。
肺が締め付けられ息をするのも苦しい。
時折足元の根に足を取られながらも必死に走る。
苦しくて走るのを辞めてしまいたかったが止まるわけにはいかなかった。
影に捕まったら最後、全てを諦めるしかないのだから。
「糞野郎…」
悪態を口に出して中也は足に再び力を込めた。その力を糧にして速度をあげる。もう少しで森の出口だ。
人は安心すると油断しやすいらしい。
この悪夢からもう少しで解放されると思った僅かな瞬間、影は中也の足を絡め取り左足を宙に浮かせた。バランスを崩した身体はいとも簡単に地面に吸い込まれる。
走っていた勢いのまま、受け身も取れずに前に倒れ込んだ。口に土の味が広がる。
何とか影から抜け出そうともがくも、もがけばもがくほど影はキツく身体を縛り付けてくる。やがて、抵抗する力が無くなった時、木の影から彼奴が現れた。
世界一気に食わない、大嫌いで大好きな彼奴が。
「捕まえた♪」
妖しく愉しげに笑う彼奴─────太宰治の顔を見て、自分の顔が盛大に歪むのが分かった。
「…失せろ偏食野郎」
***
【⠀人物紹介!⠀】
・中原中也
酒呑童子。人里離れた場所に住んでいる。太宰に見つからない為に態々遠くのバーに行くが、太宰が常日頃たちの悪い悪戯を仕掛けてくるため鬱憤を晴らすのに一週間に一回は行くことになっている。太宰の事は気に食わないし、大嫌いだと思ってるけど、顔とか偶に見せる優しさとかが好きだという気持ちもあり、日々葛藤している。
・太宰治
森に住んでる吸血鬼。中也の血しか飲まない偏食家。太宰曰く他の血は泥みたいな味がして美味しくないらしい。中也の血を飲みたいのに大体逃げられるので何時も力技で捕まえる。中也の事が大好きで本来ならバーには行かせたくないけど、 バーで中也が自分の事しか話してないのを知って今は黙認している。近々バーにアルバイトに行こうかなと考えている。中也は酔うと他の人に襲われそうで心配なので。
終了です!楽しんで頂けていたら嬉しいです!
太宰さんあんまりっていうか全然出てきませんでしたね……最後のほんのちょっとっていう……すみません。一応言い訳して置くと入れようとは思ったんですよ。…でも入れられなかったんですよ …っ!
なんか続きそうな雰囲気(?)ですが一応これで終わりです。
もし気が向いたら続き作るかもだけど、どうかな…。
続き欲しいって方居たら作るかも?
ここまで見てくれてありがとうございました!
では、ばいるな!
コメント
8件
いや、、、文章力ありすぎない?えっ、凄いんだけど、やばい私の語彙力が下がってる笑
もし良ければ続き欲しいです..!!