腕の中

岩本の家で、ソファに毛布を掛けて丸くなっている渡辺。友達と、サウナに行く予定だった。いつものように頭痛するから、帰って来た。

岩本ーどうだ？

渡辺ーちょっとマシになった。

岩本ーもう、そのまま寝ろ。

渡辺ーやだ、お風呂入って寝る。

岩本ー学習しないやつだなぁ。熱が出るだろ?

渡辺ーう〜でも・・。

岩本ーだめ。寝て。

渡辺ーふぁ〜い。

岩本ー不機嫌丸出しの返事しない！

渡辺ーふん！

岩本ーあっ、寝る前に熱測って？

渡辺ーもぅ！

37.6度。

岩本ーアイスノンと、冷えピタ持ってくるから、大人しく寝て。

渡辺ーひかる・・ひかる・・。

岩本ー寝るの！

渡辺ーぎゅっとして？一緒に寝て？

岩本ー寝る？

渡辺ーんっ・・。

岩本に抱きしめられ、しがみついて寝ようとした。

岩本ー翔太！

渡辺ーふふふ、ひかる・・ひかる。

岩本ー寝る約束だろ？

渡辺ー寝れる？俺がこんなに引っ付いてるのに？

岩本ー寝る！

渡辺ーひかる・・ひかる・・好き・・。

岩本ー普段言わないくせに何⁈

渡辺ー俺が好き？

岩本ー当たり前だろ。

渡辺ーふふふ、寝れる？

岩本ーもう！

熱が上がると分かっているのに、この小悪魔は岩本を誘惑する。

勝てない、今まで、何度もあったから、岩本は分かっている。渡辺が大好きだから、抱きしめたい。

岩本ー病院送りだぞ。

渡辺ーひかるが、そばにいたらいい。

岩本ー何で熱が出たら、引っ付きたがるかな。

渡辺ーふふふ。

岩本は、軽くため息を吐き、渡辺の首筋にキスして、服を脱がしていく。大人しく寝たら、熱も下がるのに、学習しない2人。いや、渡辺だろう。岩本に抱きしめられて、落ち着くだけで済まない。熱い時間が欲しくなる。

38.6度

渡辺は寝てると言う。何が何でも、病院には行かないと言い毛布に包まっている。

岩本は、いつもの事だけど、自分が誘惑に負けてしまうのがいけないと分かっている。だが、普段、顔を見ない、そばに行かない岩本は、渡辺に少しでも触れていたい。

渡辺ーひかる・・氷欲しい。

岩本ー熱上がったか？

渡辺ーんっ・・。

岩本ー熱測って？

渡辺ーんっ〜んっ。

岩本ー知らない方が、俺も罪悪感が減る（笑）

渡辺ー氷。

岩本ー待ってて。

氷をもらい、渡辺は少し寝ると言う。岩本が抱きしめると、今度は大人しく寝た。

渡辺を抱きしめながら、岩本は思う。2人だけでいい。誰もいらない。渡辺を抱きしめて、眠る。そんな毎日がほしい。渡辺の寝顔を見ていたら涙が滲んでくる。

泣きたくないのに、この人を腕の中に閉じ込めていたい。

渡辺の頬に、岩本の涙が落ちた。