テラーノベル
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部屋を出ると、長く長く続いている廊下の壁にはご丁寧に「exit」という文字と共に矢印が表示されていた。mfくんと二人無言で矢印の方向へ足を進める。さっきまで二人で行われていたことが信じられない。どこかふわふわとした頭で、でも必死に俺はさっきまでの出来事を忘れないように繰り返し思い出していた。こんな都合の良い部屋、現実ではありえない。そう分かってる。
『あんなに幸せだった時間、忘れたくないな、やだな…夢はすぐに忘れちゃうから少しでも覚えていられたら良いのに。』
mfくんは今の空気が気まずいのかあたりを見回しながら、ぽつぽつと話しかけてきた。
「ここどこー?まさか本当にあるとは思えないから夢の中かな」
「………」
「dnはどうやってここに連れてこられたか覚えてる?」
「…………」
「終わるまでびくともしなかったなぁ、あのドア…dn?」
「………あっ、」
記憶を留めることに必死で無反応になっていた俺を心配そうに紫の瞳が見つめていた。さっきあの部屋で見たのと同じ、俺だけを気遣っている優しい瞳だ。大好きな人のきれいな瞳に見惚れて俺は言葉を失ってしまう。このままmfくんにずっと見つめてもらえたらどんなに幸せだろう。
「…あー…さっき無理させたよな、ごめん…」
「えっ」
予想斜め上の言葉にびっくりして見たmfくんの顔には後悔の色がありありと現れていて悲しくなってしまう。違う、俺はずっと幸せだった、たとえ俺の片思いのせいで見た夢の中の出来事だとしても。俺は必死に首を振ってmfくんの袖を掴んだ。
「違うっ、嬉しかったんだよ…だって俺はずっとmfくんが好きだったから…!」
「…え?」
「夢なんだから最後までハッピーエンドでいさせてよ…」
mfくんの反応が怖くて、顔が見れず俯いてしまう。夢の中だっていうのに手は震えて心臓は痛いぐらいバクバクと脈打っているのがやけにリアルだ。どちらも言葉を発さず不自然なほど廊下は静まり返っていた。
どのぐらい時間が経ったんだろうか。ずっと黙っているmfくんに耐えられずに俺は恐る恐る彼を見た。
「…mfくん?」
mfくんはなぜか赤い顔で固まっていたけど俺の声にはっとして、それから一つ咳払いをして俺の手を握った。
「ここ出てさ」
「うん…?」
「夢か現実か分かんないけど、」
「うん…」
「このこと覚えてたらdnさんの部屋に行くよ」
「え…?」
「そしたら俺と付き合って、dnさん」
そう言うとmfくんは恥ずかしそうに笑った。
コメント
5件
同じmfくんですか?! あっちのmfくんもこっちのmfくんもどっちも沼ります…! この2人は、すごいしっかり恋してる!!w
dn、👍️ mfくん絶対覚えててよ?!?!?!