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CREA
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4話:拒絶の朝
月曜日の朝、目覚まし時計のベルが静かな部屋に響き渡った。
吉田はベッドの中で目を開けたまま、微動だにしなかった。天井の木目をじっと見つめる。頭の中では「起きなければ」「学校に行かなければ」という思考が渦巻いているのに、体がまるで鉛のように重く、指一本すら動かすことができなかった。
制服に袖を通すことを想像しただけで、激しい吐き気が胃を突き上げる。
あの校舎の匂い。廊下に響く靴音。そして何より、善意の仮面をかぶって自分を追い詰めてくる先生の視線と、腕を掴まれたときの手の感触。それらが津波のように押し寄せてきて、呼吸が急速に浅くなった。
「吉田ー、起きなさい! 遅刻するわよー」
階段の下から母親の声が聞こえる。普段通りの朝の風景。けれど、吉田にとってはそれすらも遠い世界の出来事のように思えた。
吉田は返事をしないまま、布団を頭からかぶった。暗闇の中で体を丸め、服の袖をめくった。そこには無数の傷跡。もう戻ってこないあの白くて細い腕。ボロボロにった右手を強く握りしめる。
「痛い…痛いよ、」
良かった。まだ生きてる
爪の痕がついた皮膚が赤く腫れ上がり、ジクジクと痛んだ。生き抜く為に頑張った証を撫でた。
学校という場所は、自分を守ってくれない。教員は「全員を平等に」教える存在であるはずなのに、先生は「特別」という言葉で自分を追い詰め、密室へと誘い込もうとした。そして周囲はそれを「愛されている」「お気に入りだから得だ」と笑った。
誰にも助けてもらえないなら、自分を守る方法はただ一つしかなかった。
「……吉田? 入るわよ」
ドアが開き、母親が部屋に入ってきた。制服に着替えてもいない息子の姿を見て、母親は驚いたように声をあげる。
「どうしたの? 体調悪いの? 熱はある?」
母親が心配そうに額へ手を伸ばしてくる。吉田はその手をすっと避け、短く答えた。
「……行かない」
「え? 何言ってるの、今日は実力テストがあるんでしょ? ほら、早く起きなさい」
「行かない。もう……学校には行かない」
声は小さかったが、そこには固い決意がこもっていた。母親は困惑し、次第に声を荒らげて説得を試みたが、吉田はただ黙って毛布を固く握りしめたまま、二度と口を開かなかった。
その日、吉田のスマホには学校からの着信履歴が何度も残された。
『佐野先生(担任)』からの通知が画面に浮かび上がるたび、吉田の心臓は跳ね上がり、全身に嫌な汗が吹き出した。吉田は震える指でスマホの電源を切り、暗い部屋の隅に投げ捨てた。
もう二度と、あの場所へは戻らない。
外の眩しい光から遮断された自室で、吉田は深く息を吐いた。それは、逃げ場を失った彼が選んだ、静かで切実な拒絶の意志だった。
next…