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「もう春だなぁ」
ベランダの掃除をしていた時だった。
近くの桜の木から飛んできたのか、
花びらがひらりとベランダのテーブルの上に落ちた。
それを見て、思わず呟いた。
ふわりと優しい風が吹く。ポカポカと過ごしやすい温度だ。
そのうち、あの蒸し暑い夏が来ると思うと気が滅入る。そして、その前には梅雨がある。
生きると決めた今でも、月也がまた堕ちないとは言い切れない梅雨。
そんなことを考えてもしょうがないと、掃除を再開する。
「ただいまー」
ちょうど、休憩をしようとした時、大学の講習が終わった月也が帰ってきた。
「お帰りなさい。ちょうど休憩をしようと思っていたんです。桜餅ありますよ、食べますか?」
「え、まじ?食べる食べる」
月也はベランダに出て、椅子に腰を下ろした。
パックから桜餅をお皿に移し、それをベランダの机に置く。
鮮やかなピンク色をしていて美味しそうだ。
桜の葉の甘い香りがふわりと漂う。
「桜餅って久しぶりだな」
「そうですね。キヨさんのところぐらいしか食べる機会ありませんでしたからね」
「…あ、陽介これやる」
月也はそう言って自分の分の桜餅についている葉を剥がして陽介の分の桜餅の上に載せる。
「葉も美味しいですよ」
「苦いんだよなぁそれ」
「先輩はお子様舌ですからね」
「ふさげんな」
月也はふてくされつつ、桜餅を頬張る。
「ん、うまっ」
美味しそうに食べる様子につい微笑みつつも、葉が二枚になった自分の桜餅を食べる。
葉の苦さと餅の甘さがうまくバランスをとっていて、美味しい。
月也はこの苦さはお気に召さないようだが、僕は…この苦さも甘さも悪くないと思う。
ベランダに、また一枚桜の花びらが落ちた。
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