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寝れないので布団にくるまってえんえんとスマホをいじっていると、電話が来た。こんな時間に連絡するなんて、何かあったのかもしれない。そう心配しながら私は着信アイコンをタップする。スピーカー越しに聞こえてくる声は焦っているわけでもなく、かと言って怒気さえも含んでもないいつもの、平坦なあの声だ。
「まだ起きているのか。あのプロジェクトは君の管理で成り立っているんだ。睡眠不足でミスされると困るんだよ。早めに寝た方がいい」
「ああ、こんな時間にすみません…最近眠れなくて。それにしても…アメリカさんこそ大丈夫なんですか。こんな時間に連絡してくるなんて。」
「大丈夫だよ。最近君の調子が悪そうだし、あと部屋の照明が…そんなところかなぁ。とりあえず、プロジェクトに備えて欲しい」
「ああ、はい。失礼しました」
適当に挨拶をしてから電話を切って、寝返りを打つ。布団が体にうざったいほどにまとわりついて眠れない。
錠剤を開けるぷちぷちとしたアルミの音が真っ暗なリビングに響く。それらを生ぬるい水道水で流し込んで、明日を待つことにした。飲み込むたびに喉が重くなり、最後のを飲み込むときには半分えずいていた。
30分ほどすると自然と気分がしゃっきりしてきたので、明かりをつけ、シンクに溜まった皿を洗い、かさついたゴミ袋を引っ張り出して部屋に散らばったペットボトルやらを拾った。露出したフローリングがつやつやと蛍光灯の光を浴びて輝いていた。
余裕があったのでシャワーを浴びる。滴る雫は目に入って視界の邪魔をしていく。足元に溜まった水は私をここに留めようとしている。会社に行きたくなかった。感情的になってはだめだと自分に釘を刺し、事務的に準備をする。
ずるずると足を引き摺りながら帰路に着く。眠たい目を擦って最寄りの駅に着くと、時刻は10時だった。ゆとりもあるし両親にでも連絡しようかと考えながら改札に向かっているとふと、見たことのある背中が見えた気がした。
「アメリカ…さん?」
その言葉を口の中でもごつかさせたものの、それは直ぐに見えなくなった。
寝ぼけていたに違いない、今日はもう帰って早く寝よう。そう決意して私は駅を後にした。
マンションの前には珍しく車が止まっていた。
疲れた体を引き摺りながら、部屋の扉まで着いた時少し違和感を感じた。正確には少しどころでは無かった。部屋の鍵が開いていて、隙間からエアコンの生暖かい空気が伝わってきた。誰かが私の部屋にいる、と直ぐに分かった。
ゆっくりとドアを開ける。誰もいない様だ。
スマホを手に握り締め、部屋に入る。少し異様な日常が目に映っている。まず、朝飲んだ薬の包装材が消えて、小さいサイズのジップロックがシンクの端にくっ付いていた。ゴミ袋が開いて中のゴミが散乱している。
野生動物の類が家に忍び込んだのだろうと思い込む事にした。明日になったら管理人に防犯カメラの映像を見せて貰おう、警察にも相談しよう、と決意して風呂場に向かった瞬間背後から誰かが近づいてきた。
鈍い音が脳に響く。殴られた様でふらふらするし暖かい物がわたしを伝って流れてきた。てを縛られてどうなっているか分からない。
だれ?
ぼやけた視界でにげようとする。あたりが赤く染まってゆく。わたしは死ぬんだと感じ、せめてのも抵抗で口の中に突っ込まれた冷えた何かに噛みついた。聞いたことのある声が聞こえ、走馬灯を見ていると思った。もう一回殴られてわたしは目を閉じた。
目が覚めると、ベッドの上に居た。