_思想家 side
人間関係ってのは腐る程面倒くさい。その上難しい。まぁ俺は能力が便利だから今まで特に目立った失敗はしてこなかったし、これからもする予定はない。んで、人間関係を面倒くさがるのになぜ組織に入ったのか。それはほぼ半強制的だったからだ。というのも、どこぞの死神に脅されたのも一年程前。記憶は曖昧だが、鎌か何かを首元にでも当てられていたのだろう。本当に詳細は思い出せないし、思い出した所で何になるのかという話だ。ただ、ひたすらに、生命の危機を感じたのだけはぼんやりと覚えている。今思い返せばなんであんな奴に歯向かおうとしたのか。我ながら、甚だ疑問である。そんな事はどうでも良く、今は外交中である。日頃から”星月衆”が関わりを持っている組織、”stunnius”という、stunとgenius、つまり気絶させる、と天才をかけ合わせたなんとも発想力豊かな組織である。しかも頭領は天才の象徴の一つである左利き。なーんて散々持ち上げたが、率直に言おう。
俺はここの頭領が嫌いだ。
お誂え向きの笑顔を貼り付けているのにも関わらず、俺、いや俺達が年下だからといって舐め腐った態度を取る。左手でとんとん、と机を叩き続ける動作も、軽蔑したような余裕振る目も、全てがイライラさせる。ある意味天才だな。
ふと、外交時のみ相棒と呼べる少女、みちるに視線をやった。すると彼女は、俺の言いたいことを察したのか、首を横に振る。どうやらこの胡散臭い頭領、嘘は吐いていないらしい。明るい照明と反対に、こげ茶色のソファーに沈む体全身を使って考える。
今、俺達”星月衆”は”stunnius”に喧嘩をふっ掛けているのと同じだ。尊厳を破壊する行為。つまり、”stunnius”を”星月衆”にしてしまおうと言う話だ。
実際何度か外交に行って分かった。この組織は明らかなる黒だ。
闇社会に黒も白もある訳が無いが、これは我らが頭領の意見なので従う他はない。”stunnius”は黒。言い換えればブラック企業なのだ。”stunnius”は頭領さえ殺してしまえばこちらの物になる。しかしそれは一筋縄ではいかない。そこで使われるのが俺の能力、という訳だ。みちるで隙を作り、俺の能力を発動する。幼い少女を利用するというのはいささか遺憾だが、これも頭領の意思なので従う他はない。
手を握り、開くという動作を繰り返す。これは作戦開始の合図である。
與「お腹空いちゃった…、」
とぽつり、呟く。
『あぁ…?我慢しろ』
『すみません、コイツまだまだガキでして』
軽く頭を下げる。
_「いえいえ、」
_「お茶菓子でも食べてください」
と机に置かれた茶菓子を一つ取り、みちるに渡す。俺が後ろを向く瞬間に、自分の左腕を深く切る。そして能力を発動させ、”stunnius”の頭領に痛覚を移動させる。すると悶絶する頭領。残念だったな。天才の左腕が災いとなったなんて、なんとも”stunnius”らしいんだろうと鼻で笑ってやる。
『こんな左手、可愛くねぇっつーの…』
自身の腕に包帯を巻いていると、みちるが短刀で頭領の心臓を貫いた。よもやこんな少女が人を殺せるなんて思わないだろう。深いこげ茶色のソファーに真紅が滴る。
「「スフェーン、終わったわよ!」」
無線を通して誇らしげに報告するみちるの頭を軽く撫でてやる。勿論右手で。するとみちるは嬉しそうに満点の笑みを浮かべる。可愛いやつだ、俺と並べるくらいには。
頭領の方に目を向けると、横たわり静かに息絶えていた。みちるは何故かくすくすと笑っている。
『んだよ』
與「なんでもない!」
嬉しそうにしているからなんでも良いか。静かに、内側から崩壊していく組織を横目に、二人で帰路を辿った。
いつも何か忘れているような感覚は気の所為だろう。何故か心の奥底でざわめく、何かの記憶にそっとナイフを突き刺して。
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名 詩朽 イデア__Shikuchi Idea
二 思想家__Shisouka
能 リンク__Rinku
名 與那城 みちる__Yonashiro Michiru
二 嘘偽__kyogi
能 真偽__Shingi
(おつば 様宅のお子さんをお借りしました)
コメント
3件
2人ともかわいいですねー、愛 星月衆は意外とホワイトなのか、、、、?!?!
詩朽くん は 何 を 忘れて しまって るん でしょうね 彗朔 の 投稿 とか じゃ ない です かね