テラーノベル
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朝、カーテンを閉め切った薄暗い部屋に、規則正しいノックの音が響く。
トントン、と遠慮がちな、でも毎朝絶対に狂わないリズム。
「おはよ。、、ねぇ、今日も行かないの?」
ドアの向こうから聞こえるのは、いつも通りの、綿菓子みたいに甘くて高い声。
でも、今の私にとってその声は、この息が詰まる世界で唯一、肺に酸素を送り込んでくれる生命維持装置だった。
「うん、行かない。、、、行けないの、てるとくん、ごめんなさい、ごめんなさい」
毛布の隙間から、必死に声を絞り出す。
学校に行けない罪悪感と、自分の価値の無さに胸が押しつぶされそうで、爪が皮膚に食い込むほど自分の腕を強く搔きむしっていた。
カチャ、と小さな金属音が響く。
彼に預けてある合鍵が回る音。
ゆっくりとドアが開いて、入ってきたてるとくんは、私のベットの脇に音もなくしゃがみ込んだ。
「ううん、謝らなくていいよ。無理していかなくていいの。、、、あーあ、またそんなになるまで自分をいじめて。可哀想に」
そう言って、てるとくんは私の自傷行為を止めるように、白くて細い指先で私のてを優しく包み込んだ。
そのまま、涙と冷や汗で濡れた私の前髪を、これ以上ないほど過保護に、ひどく甘やかに撫でる。
「学校なんてさ、嫌なことばかりだし、行かなくて正解だよ。君を傷つける世界なんて、全部壊れちゃえばいいのにね」
覗き込んできたてるとくんの瞳は、いつも通り優しく笑っているのに、ハイライトがなくて、底知れない暗闇を映しているようだった。
その歪んだ温かさが、今の私には狂おしいほど心地よい。
「てるとくん、私、もう生きてる意味が分からないの。消えちゃいたい。でも、てるとくんがいないと死ぬことすら怖くてできない、、っ」
涙がボロボロと溢れて、彼の制服の袖に顔を押し付ける。
私の重すぎる病みに、普通の人間ならきっと引いて逃げ出すはずだ。
なのに、てるとくんは嬉しそうに目を細めて、背負っていたスクールバッグを床にドサッと落とした。
それから、ブレザーを脱ぎ捨てて、私のベットへと潜り込んでくる。
「ん、お邪魔しまーす。、、、あったかい。ねぇ、もっとぎゅってして?」
驚く間もなく、てるとくんの細い腕が私の腰に回り、折れそうなほど強く抱きしめられた。
「サボっちゃった。君が学校行かないなら、僕が行く意味なんてないもん。今日はいーっぱい、2人でいようね。ねぇ、僕がいないと死んじゃうの?、、、嬉しいなぁ。じゃあ、一生僕無しじゃ生きられない身体にしてあげる」
「あ、は、、てるとくん、てるとくん、、、っ♡」
彼に依存しきった私の身体は、彼の体温を吸い上げるようにしがみつく。
昼が過ぎ、平日の静まり返った時間。
てるとくんのポケットの奥でスマホが何度も震え、学校からの着信を知らせていた。
私は恐怖で息を乱し、彼の胸元に爪を立てた。
「、、、だめ、行かないで、私を1人にしないで、、、、!」
「行かないよ、どこにも行かない。スマホ?鳴ってないよ。僕には今、君の声しか聞こえてないもん」
てるとくんは画面を見ることすら拒むように、スマホの電源を切って部屋の隅へ放り投げた。
そして、私の耳元に唇を寄せ、とろけるような甘い声で囁く。
「学校のやつらも、外の世界も、君を追い詰めるものは全部僕が消してあげる。君の頭の中、僕だけでいっぱいにして?他の誰もいらなくなっちゃえばいいんだよ。君をこんな風にした世界が悪いんだから、僕たちのせいで、全部めちゃくちゃにしちゃおうね」
彼の優しい全肯定という名の毒蜜が、私の脳を、心を、完全に麻痺させていく。
気づけば、カーテンの隙間から差し込む光は消え去り、部屋は深い夜の闇へと飲み込まれていった。
外の世界と私たちは、もう完全に切り離されている。
「ねぇ、明日もサボろっか。明後日も、その次も」
暗闇の中、てるとくんの冷たい額が私の額にぴったりと合わさる。
明日になればまた朝がくる。
けれど、私はもう、あの眩しくて息苦しい場所を恐れる必要はない。
私の絶望も、病みも、全部この人が食べてくれるから。
「君がここから出られないように、僕がずっと、この部屋に閉じ込めてあげるね。、、、大好きだよ、僕の可愛いお人形さん♡」
「うん、、てるとくん、大好き、、、ずっと閉じ込めて、、、♡」
私は腕の中で、もう二度と開けることのない心の扉に鍵をかけ、終わらない2人の逃避行に、深く、深く溺れていった。
どうでしょうか?なかなか上手に作れたと思います。
制作時間→3時間30分 マジ疲れた、、
♡とフォローよろしく! by主
コメント
1件
第2話、読ませていただきました…。 てるとくんの優しさの裏にある歪んだ執着と、それに漬かっていく主人公の関係性が、読んでいて胸が苦しくなりました。「君の声しか聞こえてない」という台詞に、彼の歪んだ愛情の純度を感じます。外の世界をシャットアウトしてふたりきりの逃避行に堕ちていく展開、とても引き込まれました。 制作お疲れさまです、3時間半の熱量が密度に現れていると思います!