夜九時、誰もいない校舎。
最後まで明かりのついた職員室に、ふたつの影だけが残っていた。
「……帰らなくていいの?W先生」
Dが椅子の背に腕をかけながら、飄々とした声を投げてくる。
Wは手元のプリントに目を落としつつ、気だるげに答えた。
「お前もまだ残ってんじゃねぇか……生徒の指導案、出し直しだろ」
「それも終わったんだよねーさっき。
でもW先生がずっと真面目にやってるから、声かけづらかった」
Dが椅子を引く音と共に、背後からすっと寄ってくる気配。
「……なあ、W先生ってさ、こういう夜の雰囲気に弱そうだよね。誰もいない、明かりだけついてる職員室……なんか変なスイッチ入らない?」
「入らねえよ、黙ってろ……ッ」
机の上の資料が、肩越しの気配にわずかに揺れる。
Dの手がWの椅子の背から腰へ、そして膝へとじわじわ滑る。
「こういうとき、声出せない方が燃えるよねぇ…..誰にも見られてないって分かってても、なぜか背徳感あるじゃん?」
「おまえ……ッ♡、んぅ……♡や、やめ……ッ♡」
「ほんとに?じゃあ……止めようか?」
止める気なんてないDの唇がWの耳元に触れる。
吐息を感じた瞬間、Wの背がぞくりと震えた。
「……ん……ッ♡、お前、ほんとふざけんな……ッ♡」
「ふざけてないよ?……好きでたまんないだけ♡」
手が椅子越しにシャツのすそへと差し込まれ、
キーボードの横にあったWの手が、堪えきれずにぎゅっと握られる。
「こういう場所で……必死で声殺してるW、いちばん色っぽい♡」
Dの指が肌をなぞるたびに
Wの身体がじわじわと浮ついていくのがわかる。
「……ッ♡、ふぁッ♡……ぉ”ッ♡…やぁ…ッ♡」
喉を押し殺した声。
制服越しに音が漏れないように、DはWの口元に自分の手を重ねる。
「だいじょうぶ……俺が、最後までちゃんと黙らせる」
そしてふたりの姿は───
職員室のひとつ奥、仕切りの向こうへと消えた。
暗がりの中、静かに閉じたブラインドの隙間から、わずかに漏れる光がふたりの影を細く刻んでいた。
仕切りの奥、Wは机に手をついていた。
椅子をひとつ避けて、Dに背を向ける形で。
「……Dッ…ほんとッ、やめ…ッ♡ここッ、職員室ッ♡」
「わかってるって♡でも声、我慢できないのはW先生のほうじゃん?」
Wのシャツはもう乱れ、背中のラインが夜の蛍光灯に浮かび上がる。
Dの指先がゆっくりと背筋を這い、体温を吸い上げるように熱を残す。
「……く、ッ♡、ん……ッ♡……そんな触り方ッ……すんな……ッ♡」
「じゃあどんな触り方がいい?こう?それとも───もっと?」
Wが肩を震わせるたび、Dは笑いを含ませながら
その吐息を首筋に落としていく。濡れた音が、静かな夜に響く。
「……職員室でこんなに乱れて……ほんとは真面目な先生なのに」
「う、るせぇ……ッ♡、誰のせいだと思ってんだ……ッ♡」
Wの声が掠れるたび、Dの目が潤んでいく。
「……もう我慢してないくせに。……顔、熱いよ?」
DがWの手をそっと取り、机の上の書類の束のすぐ横に指を絡める。
「なぁ……ここでイかされるの……初めて?」
「……ッ♡、ばッ……かッ♡……言うなッ♡」
「そっか…..じゃあ“最初”は俺がもらうね♡」
机の縁に押しつけるように身体が近づき、布と布のこすれる音と、呼吸の混じる音だけが静かに満ちる。
「……声、出すなよ?マジで聞こえたら……」
「お前が出させてんだろッ♡……責任、取れッ……♡」
Dが低く笑った。
「取るに決まってんじゃん。ずっと俺のもんだろ??W」
その言葉と同時に、Wの喉から今度は───
はっきりと、甘く熱のこもった声が漏れた。
「……お゛ッ♡、ィグッ♡……、DD……ッ♡」
その夜、職員室には誰も来なかった。
けれど、夜の空気は確かにふたりの熱に染め上げられていた。
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