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アークロイヤル号は無事にファイル島へ到着。数多の海賊船の間を縫うように進み、空いていた桟橋に船を着けた。

「錨を降ろせぇ!」

「ロープをしっかりくくりつけるんだよ!」

エレノアとリンデマンが指示を飛ばして船乗り達が慌ただしく甲板を行き交う。

「ここがファイル島ですか。何と言うか……」

「色々雑だろう?それが海賊ってもんさ」

丸太を積み重ねて椰子の葉を屋根とした家が手当たり次第に建てられ、地面に突き立てた柱に木の板を並べただけの通路が間を走る。

曇り空で薄暗く、かがり火の光が行き交う荒くれ者達を怪しく照らしていた。

「お嬢、アスカ。これを着ておけ」

ベルモンドが分厚いローブを二人に手渡す。

「これは?」

「こんな場所で若い女の子が歩くなんて、トラブルの元だ。こいつで身体を隠して、ついでに極力喋らない方がいい」

「俺もそう思うぜ、シャーリィ。お前やアスカは可愛いから変な奴に狙われる」

「私が可愛いかどうかについては議論の余地があると思いますが、トラブルは避けたいのでベルに従います。ほら、アスカも」

「……ん」

シャーリィとアスカはローブで身体をすっぽりと覆い、更にフードを目深に被り顔を隠す。

「よし、これで直ぐに女とはバレない筈だ」

「準備はできたかい?先ずはリンデマンが相手を探してくる。しばらくは船で待ってておくれ」

「羽振りの良い商人を探してくる。まあ、前回取引した奴が一番良いんだが入れ替りが激しいからな。船長、ちょっと留守にするぞ」

「気をつけてな」

リンデマンが船を降りて雑踏の中に紛れていく。

「おう、随分と大きな船だな。停泊料は割り増しで貰うぞ」

そうこうしていると、恰幅の良い髭面の男が近寄ってきた。

「私だよ、港長。いつもの額で構わないね?」

「なんだよ、エレノアか。せっかく小遣い稼ぎにしようかと思ってたのによ」

「そりゃ残念だったね。景気はどうだい?」

甲板の上からエレノアが応える。

「内戦が始まって、稼ぎ時さ。武器やら食い物がバカみたいに売れる。今じゃ薬草一束で家が建つぜ」

「そりゃ良い。今度も薬草が採れてね、良い相手を探してるんだ」

「またかよ!なあ、秘密の群生地を見付けたんだろ?俺にも噛ませろよ」

「これからずっと入港料をタダにしてくれるなら考えても良いよ」

「そりゃ無理だな、俺が殺される」

港長と呼ばれた男は肩を竦める。

「エレノア、紹介してくれねぇか?」

代表してベルモンドが間に入る。

「ああ、悪いね。こいつはタロス。ファイル島の港を仕切ってるケチな海賊でな。皆からは港長って呼ばれてるんだ」

「ケチな海賊なんて随分な紹介じゃねぇか、エレノア」

「当たってるだろうが。海賊の島なのに、入港料なんて取るんだからな」

「仕方ねぇだろ、『キャプテン』が決めてるんだからよ」

「エレノア、キャプテンってのは?」

ベルモンドが質問するとエレノアより先にタロスが答える。

「なんだ、知らねぇのかよ?この島の、いやこの辺りの海賊を仕切ってる男の事だよ。『キャプテン・ボルティモア』。世界有数の大海賊さ」

「へぇ、この島を仕切ってるボスって所か」

「そんなところさ。新顔はキャプテン・ボルティモアに挨拶するのが仕来たりなんだけどなぁ」

「私達は挨拶なんかしてねぇぞ?」

「ここ数年キャプテンの姿を見た奴は居ないのさ。キナ臭い帝国で島を切り盛りするために、あちこちを飛び回ってるって話だ」

「だから、今はアンタが顔役なのか?」

「これでもキャプテンに港を任されてるんだ。変な奴を島に入れないように頑張ってるさ。もちろん、ちょっとした小遣い稼ぎはするけどな?」

「それでこそ海賊さ。で、タロス。今回は商売以外にも用事があるんだよ」

「ん?そっちでフードを被ってる奴か?」

タロスは甲板に佇むシャーリィ達を見る。

「そうさ。うちとしては、もっとデカい商売をしたくてね。意味は分かるだろ?」

「ああ、つまりボスを連れてきたんだな。キャプテンが居るならそれが一番なんだがなぁ」

「それは次の機会にするさ。この島で一番羽振りが良い奴を紹介してくれねぇか?」

「良いぜ、金貨十枚は貰うがな」

「紹介料高過ぎだろ!」

ルイスが堪らず吠える。金貨は日本円で言えば一枚百万円。つまり一千万円を要求されたに等しい。

「そりゃあ、俺だって軽々しく紹介するわけにもいかねぇからな、坊主。何処の馬の骨とも分からねぇ奴を紹介したなんて噂になったら、俺のメンツに関わるじゃねぇか」

「だけどよ!」

ルイスをシャーリィが手で制して、金貨の詰まった小袋から金貨を十二枚取り出してベルモンドに手渡す。

「ほらよ、うちのボスは馬の骨とは訳が違うだろ?」

ベルモンドはその金貨をそのままタロスに手渡す。

「……マジかよ。けど、二枚多いが?」

「うちのボスは気前が良いんだ。その二枚は手間賃だと思ってくれよ?」

「気前が良いにも程があるだろ。こんなことされちゃ、紹介しないといけねぇな。バザーで一番大きな屋敷に向かうと良い。ファイル島を出入りしてる中で最大の商人が住んでる」

「最大の商人?タロス、そりゃ一体誰だよ?」

「俺の口から言えるのはそれだけだ。こいつを持っていけ」

タロスは綺麗な十字架を取り出してベルモンドに手渡す。

「こいつは?」

「それを門番に見せれば、俺の紹介だって分かる筈だ。この先はお前ら次第。どうだ?」

「分かった、それで良い。エレノア、バザーとやらに案内してくれ」

「もちろんだ。リンデマンが戻り次第向かうとしようか。けど、バザーは島でも色んな奴が出入りしてる。変な奴もたくさんいるから、備えておいてほしい」 

タロスが去った後、エレノアは諸注意を訓示して船乗り達を自由にさせる。

半分を船に残した交代制ではあるが、久しぶりの自由に船乗り達は歓喜する。更に。

「皆さんの働きで、私達は無事に辿り着くことが出来ました。その働きには充分に報いなければと思っています。これは少ないですが、羽目を外しすぎないように」

シャーリィは気前良く四十人の船乗り全員に金貨一枚を報酬として与える。

これにより士気が跳ね上がったのは言うまでもない。

「シャーリィちゃん、いきなり大金を渡したぞ?」

「あれがお嬢だ。気前の良さじゃ多分帝国一だな。やる気が出るだろ?」

「ああ、あんなのを見せられちゃ皆やる気も出るさ。羽目を外さないように言っとかないとな」

「それが良い……いよいよ上陸か。道案内、しっかり頼むぜ?エレノア」

「任せときな、ベルモンド」

戻ってくるリンデマンを遠目に見ながら、一行は海賊の島に上陸を果たす。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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