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プロローグ 向日葵の咲いた夏 8/24
ーだって君が好きだから。世界で一番。ー
そう言って彼は私の頬にキスをした。
温かく、乾いた彼の唇は私の心をジリジリと溶かしていく。
暗い部屋にルームランプの灯りが彼の瞳を照らした。紅色に染まった彼の瞳は陰りなく真っ直ぐと私を見つめている。
「ありがとう、私も」
いつのまにか紅潮した顔を隠すかのように素っ気なく想いを伝えてしまった。
この原因は夏の夜の所為にしたかった。
彼は知ってか知らずかありがとう、と一言。
それを言ったあと彼は何もしなかった。ただ、隣に居るだけ。
そのあとはあまり覚えていない。しかし私は彼の厚い胸板に手を当ててそっと唇にキスをした。
乾いた唇が触れ合う、唇を重ねただけのキス。
その頃にはもう彼の顔も完全に紅潮しきっていた。
私達の最後の夜はまだ明けない。彼は着ていたカッターシャツのボタンを外していき、ズボンのベルトを外した。
ー最後の夜だからー
その甘美な言葉は私達の関係のストッパーを外した。
そして私達はベッドの中で…
「はっ!…なんだ…夢か…」
真夏の朝はもう明るく、窓から一筋の光が差し込んでいた。
時計はちょうどam8時を指している。私は大きなあくびをしながら動きの鈍い体を起こした。
「それにしても今日の夢…」
ベランダに出で一人ブツブツ呟きながら花壇に水をやる。今日は懐かしい夢を見た。
世界一好きな国の夢。いや、”元恋人との夢”と言った方が正しいのか、…どちらにせよ私の淡い思い出には変わりない。
思い出に浸りながらも私は庭のホースを手に取って花壇に植えた向日葵に水を撒く。光が反射して七色の光が私の目に捉えた。
ー君には向日葵が一番似合ってる。…僕は××が世界一向日葵が似合ってると思うよー
彼の言葉が耳を反芻する。
「…今年の夏も…」
今年で九度目の夏も彼が近くにいるような気がして私は時々、誰もいない後ろを振り返っている。でもそこにあるのは懸命に咲き誇る向日葵ばかりだった。
水撒きを終えたあと、私はポストの中から1枚の封筒を取り出す。送り人は知らない。
封筒を開ける前に朝ご飯を食べよう。今日のご飯はパンケーキ。…彼はこれが一番好きだった。
ー××も食べてみて。美味しいよー
パンケーキを食べると不意に彼の声、顔、仕草、そのすべてが私の心の中に蘇ってくる。
瞳を閉じると今でも思い出す。9年前、私達は出会った。私達は惹かれあい、恋に堕ち、そして…
もしも過去に戻れるならまた貴方に逢いたい。
そう思った時、 甘いメープルの香りがウクライナの鼻をかすめたのだった。
コメント
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お詫び 1月中、投稿できなくて申し訳ございません!ですが2月、3月も私の事情により投稿頻度が落ちると思います。4月からはたくさん投稿するのでそれまでお待ちください。