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「隆ちゃん、今日指輪買いに行くんでしょう? その後におねえさんの所に挨拶に行きたいな。私まだ一回も会えてないし、もう隠す事もないもんね」

目が覚めた。言われてみれば美桜はまだ一回も姫咲と会っていない。


「あぁ……確かに姫咲、あ、姉の名前なんだけど、姫咲は基本原稿で忙しいから滅多に実家にも顔出さないからな。多分昨日である程度落ち着いたみたいだから今日会いに行くか……でも俺の変な写真とかは絶対見せないからな!」


男と絡んでるポーズの写真を美桜に見られてたまるか! 絶対に阻止しないと。


「大丈夫! 全く引いたりしないから! むしろありがとうございますって拝みたくなるかもしれない!」


「っつ……美桜……」


そうだった。俺の妻になる人は生粋の腐女子な事を一瞬忘れかけそうになっていた。


脱ぎ捨てたパジャマを着直して朝ご飯兼昼ご飯を準備する。四つ切りの食パンにケチャップを塗りピーマンと玉ねぎのスライス、ウインナーを乗せその上からたっぷりのチーズをかけて焼く。まぁ簡単に言えばピザパンだ。コンソメスープに溶き卵を流し入れ卵スープも用意した。

二人で向かい合ってゆっくり食べるご飯は久しぶりで、つい嬉しくて笑みがこぼれてしまう。かなりニヤけていたのか美桜に「隆ちゃんなんか凄い顔緩んでるけど、どうしたの?」と不思議そうな顔で聞かれてしまった。


「ん、二人でゆっくり食べるご飯は格別だなぁと思って」


ブワッと一気に耳まで赤く染める美桜。いや、控えめに言って可愛い、可愛すぎる。


朝ご飯兼昼ご飯を食べ終え、出かける支度をし、マンションを出た。

助手席に美桜を乗せまずは指輪を買うためにジュエリーショップへ向かう。ある程度ネットで見て美桜が良いなと思うものをピックアップしてあるのであとは店で本物を見て決めるだけだ。


「……凄い綺麗だね」


「だな、どれもシンプルだけど華やかで美桜に似合いそう」


控えめの声で話す。訪れたジュエリーショップは全体がベージュの壁と床で統一されている店内。品のある店内の雰囲気、その雰囲気がスタッフからも訪れているお客からもさえも溢れており自然と小声になってしまう。 LEDの明るい照明の光に当てられたショーケース内の結婚指輪達が各々と光輝いていて、より店内を明るく輝かせているように見せてくれる。シンプルなデザインの物から、少し変わったデザインの物まで幅広くあり、選ぶのに悩んでしまうほどだ。事前にネットで見てきたものをスタッフの方に見せて本物を出してもらうと、目を輝かせて真剣に魅入る美桜。そんな美桜を見るのがどんな綺麗な指輪を見るよりも俺は魅入ってしまう。(指輪に失礼か)


「写真で見た時も凄い綺麗だったけど、実物はそれ以上に輝いて見えるよね」


「だな、美桜が常につけていたいって思えるようなデザインのものにしよう」


二時間近く悩んで美桜はシンプルなデザインのシルバーリングに一粒のダイアが埋め込まれているものを選んだ。男性用は特にダイアとかは無く至ってシンプルなシルバーリング。相手の指輪の裏にメッセージが掘れるらしくお互い出来上がってからの秘密って事で掘った内容はお互いに知らない。

値段は……まぁそれなりに良い金額だった。(金額は聞かないでくれ。予想よりはるかに高くて驚きそうになったのを美桜にバレたくない)


一週間後に出来上がるらしく、ちょうど入籍する十八日取りに行く事にした。やっと籍を入れて堂々と俺の妻ですって周りに言いふらせると思うと気分が上がる。


「ねぇ、隆ちゃんのお姉さんにちゃんと今日行きますって連絡してくれた?」


ジュエリーショップを後にし近くのケーキ屋でケーキを何個かお土産用に購入した箱を抱えながら助手席に乗る美桜が不安そうに俺の顔を覗き込んでくる。


「大丈夫だよ。ちゃんと連絡入れたし、了解って返事も返ってきたから」


「な、ならいいんだけど……」


緊張しているのか、それともそれが腐女子の美桜の平常運転なのかBLについての語りが恐ろしい程に止まらない。


「でね、受けだと思ってたキャラがまさかの攻めって、そりゃもうそのギャップにドキュンとやられちゃうわけでね! しかも普段ツンツンしてるのにまさかの受けで超淫らになっちゃうのとかもう、最高に最強すぎて溜息しかでないの!」


「お、おおう……」


「歳の差も凄くいいんだよねぇ〜、大人として、ダメだってわかっていても好きで好きで求めちゃうんだよね! それでもう思いあってからの欲望の爆発が止まらない! 大人ならではの色気が凄くてさぁ、本当高森亜也先生の書く作品でハズレはない!!!」


「お、おおう……」


みっちりとBLについて美桜の話を聞いていたら姫咲のアパートに着いた。


(あぁ、あの部屋に足を踏み入れるのが怖すぎるな……)


ちょこんと後ろをついてくる美桜。今は本当に緊張しているのか少し顔も強張っていて、口数がぐんっと減った。むしろ口を開いてない。ムッと口を真一文字に結んでいる。


「美桜? 大丈夫か?」


「だだだだだ大丈夫でやんす」


ブハッと笑いが吹き出してしまった。耳まで真っ赤に染めてあわあわしている美桜が可愛すぎる。


「やんすって何だよ! 緊張しすぎだから」


「ごごごめんっ! 緊張しちゃって。だって隆ちゃんのお姉さんに初めて会うわけであって、しかもそれが推しの先生って、こんな神展開あります? ってなるよ!? 緊張しない訳がないんだよ〜〜〜」


ドアの前に着きインターホンを鳴らす。ガチャリと鍵を開けドアを開いてくれたのは姫咲ではなく担当編集者の広志さんだ。


「隆一さん、いらっしゃい。先生が中でお待ちです」


いつも通り覇気のないひょろったした声で出迎えてくれる。


「あ、広志さん、こちら来週籍を入れて俺の妻になる美桜です」


緊張して少し震えている美桜の肩を抱き寄せる。


「あの、斉藤美桜と申します。今日は突然お邪魔してしまってすいません」


「大丈夫ですよ。さぁ中に入って下さい」

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