テラーノベル
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元貴・滉斗→物語の世界の二人
大森・若井→現実の二人
二人が穏やかな朝の光の中で、再建された四阿で椿の蕾を眺めていた時のことだった。
突然、庭園の空気が歪み、視界の端から色のないノイズのようなものが広がった。
その中心に、見覚えのある服装――しかし、この国の麻の着物とは違う、現代的な素材の服を纏った二人の男が現れた。
「……えっ、ここどこ?」
きょとんとした顔で周囲を見渡すのは、大森。その後ろで、同じく混乱した様子でギターケース(の形をした何か)を背負っているのが、現実の若井だった。
滉斗は、一瞬にして殺気を放ち、無意識に氷剣を引き抜こうとしていた。かつての戦場での経験が、異質なものを瞬時に敵と判断したのだ。
「誰だ。どこから入った」
「ひろぱ、待って!」
元貴が滉斗の腕を掴み、制止する。その瞳に浮かんでいるのは殺意ではなく、奇妙な親しみと驚きだった。
現実にいた二人は、目の前に立つ、自分たちと瓜二つだが、どこか神聖で、歴史の重みを感じさせる服装の二人を見て、動きを止めた。
「……僕、だよね? 滉斗……え、その剣なに?」
大森が自分の手と、元貴の清らかな空気を纏う手を見比べる。
若井もまた、滉斗の冷徹だが鋭い瞳に圧倒され、言葉を失っていた。
「……不思議なこともあるものだな」
滉斗がゆっくりと氷剣をしまい、懐から翡翠の守り袋を取り出した。
「お前たちが何者であれ、ここは俺たちが命をかけて守り抜いた、平和な場所だ。荒事は御免だ」
その声の温かさに、現実の二人は少しずつ緊張を解いていった。
元貴が優しく微笑みかけ、四阿へ座るように促す。
「ふふ、驚かせてごめんなさい。……僕たちと、同じ顔だね」
大森が隣に座ると、二人の間には言葉では言い表せない親密な空気が流れた。まるで、違う時間を生きる鏡像と対話しているかのような。
「君たちが……僕らの物語を紡いでくれた、存在なのかな」
元貴が、静かに尋ねる。
大森は少し戸惑いながらも、その瞳に宿る深い慈愛を感じ取り、頷いた。
「物語……そうかもしれない。でも、君たちはここで、本当に生きているんだね」
四人は庭園の新しいテーブルを囲み、長い時間をかけて語り合った。
現実の二人は、この国の壮絶な過去と、二人が歩んできた逃避行の苦難を知り、胸を熱くした。
「すごいな……。氷剣術って、本当に氷を操れるのか」
若井が、少し興奮気味に滉斗に尋ねる。滉斗は少し照れくさそうに、指先で小さな氷の結晶を作って見せた。
「……技術は違うが、根底にある『守りたい』という気持ちは、同じかもしれないな」
滉斗は、若井の肩に軽く手を置いた。それは、自分とは別の人生を歩むもう一人の自分への、静かな共感だった。
一方、二人の元貴は、技術の術式の違いについて楽しそうに話していた。
癒やしの力で傷を癒やし、植物を操る元貴の術を、大森は「僕の歌の力にも似ている気がする」と見つめる。
「君のいた世界は、武器や剣がなくても、平和だった?」
「うん。僕たちは歌で、人を癒やしたり、勇気づけたりしてるんだ」
その言葉に、元貴は「素敵だ」と目を輝かせた。
夕暮れが近づき、庭園がオレンジ色に染まり始めた頃。空に再び、あの歪みが生じ始めた。
「……戻る時間みたいだね」
大森が寂しげに呟く。
若井も、滉斗の手を強く握りしめた。
「この世界の話、面白かった。……お前たちのこの国も、きっともっと素敵な場所になるよ」
「ああ。……短い時間だったが、自分の原点を見たような気がする」
滉斗は、そう言って力強く微笑んだ。
元貴は、大森に、自分が作った翡翠のペンダントを一つ、手渡した。
「これは、僕たちの絆の証。……別の世界にいても、僕たちは繋がっているよ」
二人が光に包まれ、姿を消すその瞬間まで、四人は互いに手を振り続けていた。
静寂が戻った庭園で、滉斗は、隣に立つ元貴の肩を抱き寄せた。
「不思議な奴らだったな」
「うん。でも、なんだか、すごく安心した」
二人は、自分たちの絆が、自分たちの知る世界を超えて、どこか別の場所でも受け入れられていることを感じていた。
琥珀色に輝く庭園の中で、二人の誓いは、より一層深まっていた。
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