「でも、私たちや夢の旅人と同じく。現実を知っている者も多くいます。つまり、カルダは悪夢での戦いによる死で……」
「現実を全ての人の内面的にも片っ端から破壊しようとした」
バリエの説明の中、霧画が震える声で割って入った。
「その通りです。だから、私たちはここで戦うのです」
……私は強く頭を振って気を取り直し、小刻みに震えはじめた呉林の肩に手を置いた。呉林も気を取り直して、
「カルダのいる村はここから遠いの? 何て言うか……私たちはそのカルダに招待されたのよ。……私たちは戦うわ」
「歩いて1日半のはずじゃ。わしらはそんなに遠いと実感できないが……」
長老の普通の口調に呉林はがっくりして、
「そんなに遠いの。でも、仕方ないか……」
呉林は顔を急に上げ、
「うーんっと。出来るだけ情報を集めた方がいいわね。あ、そうだ。それじゃ、カルダは何故、今でも生贄を欲しているの? もう十分なんじゃないかしら? 夢の反乱でこの世界が沈没するのは……もう時間の問題だと思うわ」
バリエはキョロキョロと神経質そうに辺りを見回して、
「この森の更に奥。暗闇が濃い場所にカルダの木があります。その木は根が自らの尾を噛む蛇、その蛇を完全に目覚めさせるためには、この夢の世界でも起きることが出来る覚醒者を生贄にする儀式が必要のようです。儀式を完成させると、その蛇は自らの尾を全て貪り。呑み込み終わると、蛇は死んでしまいます。現実と夢は統合し全て虚構となります。きっと恐ろしい完全な壊れた世界を支配することを目指しているんですね……。多分ですがカルダはここ南米に覚醒者がいると思い込んでいるようです。何故ならここ南米でしか生贄を捧げていないので……」
私はさすがに恐ろしくなる。
「カルダの木の息吹って、その蛇の息吹?」
青い顔の安浦の声に、
「そうです」
バリエは目をキョロキョロしているが、平静に受け答えする。
渡部は決して寒さのせいではない震える声を発した。
「気が付いたんですが。何故、大昔は大きかった蛇が今では小さいのですか?」
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