異世界
転生した先は無人島!? しかも文明もなければ魔法もない! なんなんだこの島は!! 突然現れた謎の美少女によって異世界に連れてこられた僕は、いきなりサバイバル生活をさせられることになった。それも、現代社会のように便利ではない原始時代の生活だ。火おこしをしたり魚を取ったり、毎日生きることに必死になっている内に、いつの間にか半年ほどが経過してしまった。
今日もまた、朝早くから釣りに出かけることにする。
今朝の空模様はあまり良くないようで、どんよりとした雲に覆われて太陽の姿が見えなかった。海の方からは少し強めの風が吹いており、波が高いこともあってあまり遠くへ出掛けても危険かもしれない。
しかし、せっかく作った拠点を放棄するわけにもいかない。
何より、ここで立ち止まっている場合ではないはずだ。
僕は、今一度自分自身に強く言い聞かせて、前に進むことにした。
まずは周囲をよく観察しながら進むことにする。しかし歩いても歩いても同じ風景が続くばかりで、特に変わったものは見つからなかった。こうなったら空から見下ろすしかないと思い、上を向いてみると―――そこには見たこともないような巨大な建造物が建っていた。
おそらく高さにして数百メートルはあるであろう、白一色の世界の中で異彩を放つほどの大きさを誇る塔がそびえ立っていた。近づいてみてわかったが、壁の表面には細かい彫刻が施されており、かなり古い時代に作られたものだということがわかった。それにしても随分と高い建物だなあと思っていたところ、ふと足元を見ると大きな扉があることに気付いた。どうやらこの建物は地下に埋まっているらしく、入り口らしきものも見つかった。
さすがにこのまま放置しておくわけにもいかなかったので、とりあえず中に入ってみることにした。階段を下っていき、ようやくたどり着いたのは大きな広間のような空間だった。しかし、そこにあったのは無骨な鉄格子のみで、とても人が出入りできるような雰囲気ではなかった。
そこで、今度は別の道を探してみることにし、再び建物の探索を続ける。長い廊下を進んでいくと、奥の方でぼんやりとした明かりが見えた。その方向に進んで行くと、やはり先ほどの地下牢と思われる部屋よりも広い空間が広がっていた。
そこはまるで何かの儀式場のように装飾された床が広がり、天井からは無数の蝋燭が吊るされていた。そして部屋の中央には祭壇のようなものが置かれていて、その周囲には魔法陣が描かれているようだった。
そして、僕がその異様な光景に呆気に取られていると、突然後ろから声をかけられた。
「おや、珍しい客が来たものだ」
振り返ると、そこには黒いローブを着た男が佇んでいた。フードを深く被っていて顔はよく見えないが、口元だけはかろうじて見える。
「えっと、あなたの名前は?」
とりあえず質問をしてみることにした。相手が喋れるかどうかは分からないが、何事も挑戦することが大切だと思う。返事が来るかどうか心配だったが、幸いにも相手はすぐに反応してくれた。
――名前なんてものはとうの昔に忘れてしまったよ。
やはり声の主は同じ空間にいるようで、どこから聞こえてくるのかよく分からなかった。おそらく姿も見えないのだろうと思いながら周囲を見回したが、見える範囲には誰もいない。……ここはどこなんだ? 先程の声の主に向かって問いかけてみる。
さあね。私もよく知らないんだよ。
ただ、一つだけ言えることは、君がいるこの場所は、本来ならば存在しないはずの場所だということかな
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