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⚠︎本話には強めの描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。
抱き寄せられた腕の中で、
私はただ、涙で濡れた声を震わせることしかできなかった。
「うっ……もと、き、さん……」
喉の奥が詰まって、名前すらうまく呼べない。
彼はゆっくりと私の中から抜けると、
壊れ物を扱うみたいに、そっと片腕を背中に回す。
もう片方の手の指先は、
泣き疲れた子どもをあやすように、やさしく私の髪を梳いた。
「……かわいそうに」
耳元へ、熱を含んだ息がかかる。
覗き込むその顔は、どこか心配そうな色を浮かべている。
けれど、その瞳の奥に隠しきれない熱が宿っているのがわかった。
「お友達に売られて、
知らない場所で……名前も、連絡先も、住所も、職場も、全部渡されて……」
声色はやわらかく、まるで子守唄みたいで。
けれどその仕草は、無垢な優しさとは裏腹だった。
「…… そんなの、怖かったよね?」
胸の奥のどこかが、ぎゅっと痛む。
涙がまた、後から後からあふれてくる。
(逃げたいのに……)
なのに、逃げるという選択肢は、どこにも浮かばなかった。
彼の腕の力が、じわりと強くなる。
「……大丈夫。
僕が守ってあげるから、安心して?」
“守る”というその言葉が、
本当は“逃がさない”という意味だと分かっているのに。
それでも、その声も、体温も――
私の奥深くにまで、ずぶずぶと染み込んでいく。
「ちかちゃん」
頬にそっと触れる指先。
涙を追いかけるように、私の顔が反射的に彼へと向く。
柔らかな笑みとともに、
彼は涙の跡をなぞるように、唇をそっと重ねた。
触れるだけの、優しいキス。
その一瞬、
世界のすべてが――私の心さえ、どこかへ溶けていくようだった。
「……ほんとに、かわいいね」
囁く声はとろけるほど甘い。
泣いている私を、まるごと抱きしめて悦ぶような――
そんな満足げな色が、静かににじんでいた。
気づけば、
自分の心がどこにあるのかすら、分からなくなっていた。
抱きしめられた余韻が消えないうちに、
太ももに――硬いものがぐい、と押し当てられた。
「ねえ、ちかちゃんの……可哀想な姿見たら、
……こんなになっちゃった」
低く笑って、
重たい前髪の隙間から、熱を帯びた瞳が覗く。
呼吸するたび、
それが太ももに脈打つのがわかって、
身体がびくりと震えた。
「…っ、もとき、さん……やだ……いまは、むり……」
言葉だけは拒んでいるのに、
声が泣き崩れて震えて、
拒否にも甘い誘惑にも聞こえてしまう。
彼には、それが一番“欲情する”ということを、
もう私は知っているのに。
「え……? だめなの?」
わざと困ったような声。
けれど目は、ぜんぜん困っていない。
むしろ、
――泣き顔のまま拒む私を楽しんでいる。
彼の指が顎をすくい、
深いキスが落ちてきた。
拒もうとした唇が、触れられただけで震えてしまう。
泣きすぎて酸素が足りないのに——
舌を絡められただけで頭が真っ白になる。
(……もう、なにも考えられない)
息が止まりそうなほど深く味わわれて、
すべてを奪われていく。
唇が離れた瞬間、
アヒル口がにっと歪んだ。
「ねぇ、ちかちゃん」
名前の呼び方だけで、
背筋にぞくっと電流が走る。
次の瞬間。
視界がふっと宙を回転し、
気づけば私は四つん這いに押しつけられていた。
抵抗しないように背中を片手で押さえつけられ、
腰だけを持ち上げられる。
「後ろからするの……“初めて”だよね?」
吐息が耳のすぐ後ろに落ちる。
晒された場所に、
彼の熱い先端がぴたりと押し当てられた。
「うっ、ぐっ……や、だっ……もときさん……っ」
震え声で拒んでも、
腰は逃げる場所をなくされている。
彼はくすりと笑う。
「嫌じゃないでしょ?」
囁くだけで、逃げ場なんて最初からないと言われているみたいだった。
ゆっくり、ゆっくり、
なぞるように入り口を擦る。
膝が勝手に震えた。
その反応を見逃すはずもなく、
彼の声が一段深く甘くなる。
「……ほら。
こんなに熱くなってるのに、嘘ついちゃだめだよ」
腰を掴まれ、ぐっと引き寄せられる。
「いいこと……してあげるから、ね?」
逃げられない四つん這いの体勢のまま、
息が詰まるほど優しい声で囁かれた。
その声に、喉の奥がぎゅっと締め付けられる。
その優しさが、
いちばん危険で、
いちばん抗えなかった。
「……ちかちゃん」
背中に落ちる声が甘すぎて、
それなのにどこか壊れていた。
「僕のことだけ……考えて?」
彼の熱が、さっきまで自分を満たしていた場所をなぞる。
中から溢れた温度が、まだとろりと残っていて、
息が勝手に震えた。
「嫌なこと……全部、忘れようね?」
囁きと同時に——
ズブ、と奥まで押し込まれる。
「んぐっ……あ、あ……っ!」
四つんばいのまま腰が沈み、 膝が勝手に震える。
彼が喉を震わせて嗤う。
「はぁ……っ、やば。中に出したあとだから……ぐちゃぐちゃ」
押し込んだまま、 ぎゅっと腰を掴んでくる。
「……きもちい……」
その声が、
明らかにさっきより低くて、熱い。
ゆっくり、けれど力任せに腰が打ちつけられる。
「やっ……ぁ、まっ……て……んっ、ぐっ…」
「無理……とまんない……」
完全にお構いなしの彼。
湿った音が、ベッドに小さく響く。
中の混ざり合った熱が、動くたびにぬるりと絡みつく。
「ちかちゃん……気持ちいい?」
片手で腰を固定されたまま、
もう片方の手が髪をつかんで軽く引かれる。
「こっち、向いて?」
泣き顔のまま振り向かされる。
視界の端に、
“気持ちよさで壊れかけた目” の彼が映った。
「まだ、泣いてるの?」
囁きながら、
腰の動きだけは少しも止まらない。
「ひぁっ、ん、ぐっ…、や、だ…あぁっ…」
「……かわいいね」
涙を見て、ほんとうに嬉しそうに笑う。
「気持ちいいことしてるのに……、
泣いちゃうの?」
髪の毛を離し、両手で腰を掴まれ後ろからぐり、と奥まで貫かれる。
熱と痛みと、どうしようもない快感がごちゃ混ぜになっていく。
声が漏れそうになるのを、必死で歯を噛みしめて耐えるしかできない。
「んっ、くっ…ひぐっ…」
「ほら……声、我慢しないで?」
指が、私の口の中にねじ込まれる。
何も言えず、ただされるがままに喘ぐ。
「忘れよ……?
嫌なことも、怖かったことも。
ぜんぶ……僕が消してあげるから」
腰がさらに深く、容赦なく打ち込まれる。
「んあぁっ…あぁああっ…!」
痛いのか気持ちいいのか、もう分からない。
快楽に飲み込まれて、涙だけが零れていく。
「……ちかちゃん」
再び髪をぐいと掴まれ、無理やり顔を上げさせられ、振り向かされる。
目の前の彼は、壊れたみたいに甘い声で笑った。
「気持ちいいことして……
一緒に、全部忘れよう、ね?」
囁きの直後、彼の視線が、ぐつぐつと煮えるような熱を帯びた。
完全に“男の顔”。
優しさなんて欠片も残っていない。
ただ欲だけが、まっすぐにこちらを焼く。
「ちかちゃん、泣きながら感じるの……反則」
「やっ、だっ……んぐっ、んあぁあっ……やっ…」
声が詰まって、喉の奥がきゅっと引き攣る。
逃げようと伸ばした片手は宙を掴むだけ。
支える片方の腕は、ふるふる震えて、ベッドさえ支えにできない。
髪を離した彼は、
今度は胸元から腕を回し、
喉元にゆっくり触れてきた。
なぞるだけのはずなのに、
指先が触れた瞬間、呼吸ごと支配されたのが分かる。
「逃げちゃダメ。
ちゃんと僕で……気持ちよくならなきゃ」
その言葉と同時に、
ゆっくり、だけど容赦なく、
奥の奥——壁みたいなところに届く。
「ん……っ、あっ……あ……っ!」
「ほら。
気持ちいいね、腰……動いてるよ?」
囁きが甘すぎて、
思考がぐずぐずに溶けていく。
胸の奥には“逃げなきゃ”がまだ残っているのに、
身体は完全に裏切って、
勝手に彼を深く迎え入れてしまう。
その状態を、彼は心底楽しんでいる。
「ねぇ、ちかちゃん」
耳元で、わざと音を立てて息を吸う。
「身体だけで……僕に返事してるね」
涙が頬を伝う。
彼はそれを親指で掬って、
舐めるように見つめながら微笑む。
「可愛すぎて……ほんと無理……」
また深く押し込まれる。
「ひっ……あぁあ……っ!」
膝はガクガク震え、
支える力も残っていない。
だからこそ——
彼の片腕がお腹を抱え込んで支えている。
逃げられないように。
「……ちかちゃん」
吐息を落としながら、低く囁く。
「心じゃなくていい。
今は……身体だけ、僕にくれれば…」
「やっ……っ、むり……あっ……んぐっ!」
「大丈夫。
心まで奪うのは……もう少し後にするから。」
ゾクリと身体の奥底が震えた。
——快楽だけで壊しに来てる。
心までは踏みにじられない。
でも身体はすでに、完全に支配されかけている。
だからこそ逃げ場がない。
「ちかちゃん、怯えながら感じてるの?」
お腹を抱えた腕でぐいと引き寄せられ、
奥を執拗に、ぐり、ぐりと押し広げられる。
「あ……っ、や……だ……!」
「ほら……
そんなに震えて……覚えちゃった?」
声は甘い。
優しい。
なのに、逃がす気なんて一切ない。
「ねぇ、言葉はいらないよ」
彼の指が腰骨をきつくなぞる。
「や、だっ……いやぁあっ……イく……っ」
涙がぽろぽろ零れるのを見て、
彼はぞくぞくと震える声で囁いた。
「その身体……全部で、僕に返して?」
快楽を刻みつけるみたいに、
ゆっくり、深く、何度も突き上げてくる。
「んあぁっ、ん、イっく、や、だ…!」
心は必死に抵抗している。
“逃げたい”がまだ消えていない。
だけど身体は——
もう、完全に溶かされて逆らえない。
腰を打ち込まれているうちに、
視界の端がじわじわと白く霞んでいく。
「っ、あ……っ、んあぁ……っ」
もう自分の声じゃない。
震えて、泣いて、途切れて、拾い上げることもできない。
その瞬間だった。
「ちかちゃん」
彼の腕が、お腹から外れ手首を掴む。
上身体がふわっと、宙に浮いた。
両手首を引っ張られ上半身が宙ぶらりんのまま奥まで深く貫かれる。
腕の支えを失って、彼の腕と腰に預けられる。
「かわい……奥でイっちゃったね?」
彼の息が耳元で震えるほど荒くなる。
「イっ――っ、て、……る、ら……っ、ぐず……あっ、や、だ……っ」
言葉にならない声が漏れるたび、
彼の動きは逆にどんどん速く、深くなる。
「どんどん……僕で気持ちよくなってるね?」
喉元で嗤いながら、
動きを一瞬たりとも止めない。
「んあ……っ、あがっ……っ、それ、……おく、やだっ……!」
涙の味が口いっぱいに広がる。
彼は喉を鳴らして微笑む。
「嫌じゃないでしょ?」
囁きだけが、甘く落ちてくる。
その“優しさのフリをした声”が一番怖い。
「ほら、震えてる。
壊れていいよ……ちかちゃん」
手首を掴む手がぐっと食い込み、
奥の奥まで、容赦なく押しつけられる。
「んああぁっ、や……だっ……っ、イく……から……っ
やだぁあああっ……っ!!」
叫んでも、泣いても、身体だけは逆らえない。
逃げ腰になるたびに、
「逃げないで。
ほら……気持ちいいよね?」
低く甘い声が落ちて――
また、深く突き上げられる。
意識が飛ぶギリギリ。
世界がぐらぐら揺れて、
判断も言葉も、もうどこにも残っていない。
ただ快楽だけが、身体の中心にこびりついていく。
「ははっ……かわいー……」
壊れた甘さのまま、手首ではなく両肘を掴まれる。
「こんなに感じてくれる子……
ちかちゃんしかいないよ?」
耳の後ろにかかる息が熱くて、
言葉より先にびくっと身体が反応する。
「ぁ……っ、あがっ……ひっ……んっ……」
声にならない声。
それを聞いた瞬間、彼の目が奥がさらに熱を帯びる。
「聞こえてる? ねぇ」
唇が耳元をかすめ、
そこへそっと歯が触れる。
耳たぶを軽く噛まれた途端―全身が跳ねた。
「んぐっ……や……っ、だっ……
や、やすませ……っ、て……っ」
振り返って、震える声で縋るように訴えても、
彼はあからさまに嬉しそうに笑った。
「……だめ」
囁きが、耳の奥に直接落とされる。
その優しさと裏腹に、腰の動きはさらに深く、鋭く、速くなる。
「勝手にトぶのも……許さないから」
低くて、甘くて、凶悪な声。
「……僕が許すまで、気持ちよくなって?」
奥をぐりっと抉られる。
「やっ……だ、っ、あぁあ……っ!
イく、やっ……イくの……っ……!」
彼は耳元でくすっと笑い、
「いいよ……イっても。
でも――」
掴んでいる肘の力がぎゅっと強くなる。
「逃げないで。
ちゃんと、僕の中で……堕ちて?」
甘いのに残酷で、
優しいのに逃がさなくて。
“支配されてる”と気づいた瞬間、
身体の奥でまた快楽が破裂する。
耳元に落ちる彼の嗤いが、
甘いのにぞくりと背筋を震わせた。
「イきそう?」
耳たぶに唇が触れた瞬間、 軽く噛まれる。
「……ねぇ、ちゃんと……
“イかせて”っておねだりして?」
その声だけで、奥のほうが勝手にきゅっと締まる。
「んあぁあっ……ひぐっ……ん……や……っ
イけ、ない……から……やだ……っ!」
息が乱れ、涙がまた滲む。
拒否の言葉なんて――
この状況じゃ、何の意味も持たない。
彼は喉の奥で嗤って囁いた。
「ふーん……?」
耳元に、舌がゆっくり這う。
「ちゃんと“身体で答えて”って、言ったよね?」
その瞬間。
奥を、ぐりぐり、と的確にえぐられる。
「ひっ……! ひあぁあ……っ!
ごめんなさ……いっ……!」
腰が抜けそうなくらいの快感。
でも腕で吊られてるせいで逃げられない。
「ほら……もっと」
さらに深く、ゆっくり、残酷なほど焦らす角度で押し込まれる。
「い……っ、イく……っ……
イく、から……っ……!」
背中が反射的に仰け反る。
「……そう」
耳に吐息を落としたまま、彼が低く言う。
「じゃあ——イって?」
その一言が決定打になった。
「んああぁああっ……っ……!!」
堰を切ったみたいに
全身がびくんっと跳ね上がる。
太ももが震えて止まらず、
喉から漏れる声も制御できない。
指先、つま先、背中……全部が痙攣して、
身体がまるごと彼に支配されていく。
彼はその震えをしっかり受け止め、
耳元で、壊れたほど甘い声を落とした。
「……かわいすぎ。
何回イくの?ちかちゃん…」
逃げられないまま、 快楽だけで堕としてゆく。
「犯されてるみたいだね……」
壊れた声で嗤うと、彼は二の腕をぐっと掴んだ。
今度はさらに密着するよう、私の体をぐいっと自分のほうに引き寄せた。
背中と胸がぴたりとくっつく。
汗ばんだ肌越しに、彼の心臓の音さえ聞こえそうな距離。
腰の奥まで突き上げるたび、
喉の奥で、熱と快感と、どうしようもない苦しさがごちゃ混ぜになる。
「……ね、きもちいいね?」
耳元で囁かれて、思わず声が詰まる。
「き……もち、よく……ない……ああぁっ、んぐっ、んあぁ……!」
無理矢理、首を振って否定する。
でも彼は、耳元に舌を這わせながら、
すぐさま嘘を見抜いてくる。
「……嘘つき、
奥、すっごい締めてるよ」
後ろからちらっと私の顔を覗き見るその目が、
どこまでも余裕で、どこまでも壊れている。
「ひっ、やだ……言わないで……んあぁあっ……!」
必死で声を殺そうとするのに、
快楽が勝手に声を押し出す。
自分の足は彼の足の間に入れられ、腕も掴まれて逃げらない。
「余裕そうだね?」
低い声とともに、
思いっきり奥まで突かれる。
「ひっ……、あぐっ、んあぁあっ、やあぁあっ……!」
もう、言葉すら出せない。
彼は、命令のように囁いた。
「もう、喘いでればいいから――ね?」
耳たぶを軽く噛まれて、
それだけで頭の奥が真っ白になる。
「泣き声も、乱れた顔も――全部、全部、僕だけのものだよ」
耳元で甘ったるく囁かれて、
私も壊れた呼吸のまま、首を震わせるしかできない。
「……ねぇ、
僕のものなんだから――中、出すね?」
深い奥まで、熱を執拗に押し付けてくる。
「や、だ、いや、んああぁっ」
「嬉しいよね? ……ほら、ちゃんと返事して」
耳たぶを甘く噛まれ、そして肩を吸われながら噛まれる。
「だ、め、や……っ、でも……」
必死に拒もうとするのに、
身体の奥がじゅくじゅくと、熱く満たされていく。
「……いい子。ちかちゃんの中、あったかくて……全部、受け止めてくれるね」
とろけるような声音と、
最奥を執拗に突き上げる動きが、
何もかも奪っていく。
「嬉しい? 僕だけのもので、幸せでしょ?」
その言葉に、思考も心も蕩けて――
「嬉しいよね? 欲しいって、ちゃんと言って?」
耳元で囁かれて、何度も奥を抉られる。
涙混じりの声で、必死に搾り出す。
思考が回らない。彼の言うことを、聞くしかない。
「……ほ、しい、の……なか……ほしい……もとき、さんの……」
「いい子だね――」
腰を深く沈められて、
熱いものが奥でじゅくじゅくと脈打つ。
「いっぱい出してあげる。……中、僕の全部で、満たしてあげるから」
囁きと共に、さらに奥を貫かれる。
「……あぁっ、や、きて……っ!」
「はあ、イく…、ちかちゃん…っ…」
熱が奥で暴れるように脈打ち、
身体の奥の奥まで、全部が塗り替えられていく。
静かな部屋に、二人分の荒い呼吸だけが残る。
「……嬉しい?
僕だけでいっぱいになるの……幸せだよね?」
「……しあわせ……です……
もとき、さん……の、で……」
「――いい子」
首筋に、深い独占のキスが落ちる。
肌がじん、と痺れるほど甘くて、苦しくて、逃げられない。
彼の腕が背中から絡みつき、
壊れたおもちゃを抱えるみたいに、
壊れ物みたいに優しく、強く包み込む。
呼吸も体温も、全部が彼色に上書きされていく。
意識がじわりと遠のき、
視界が暗く沈む直前――
耳元で、「大丈夫だよ」と囁く声だけが
最後まで、あたたかく私を掴んでいた。