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ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜
第141話 - 〇〇は『ケンカ戦国チャンピオンシップ』を観に行くそうです その12
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2024年01月10日
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2024年01月10日
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俺は黒い鎧を身に纏《まと》ったまま、こっそり『ハル』の方に向かった。
「……お前はこんなになるまで人間を殺したかったのか?」
その直後『ハル』が意識を取り戻した。(ハルは横になっていて、俺は立っている)
「チ……ガウ……。ホントウハ、ニンゲント、ナカヨク、ナリタカッタ。ダケド……」
「お前は今、ボロボロなんだから、あまりしゃべるな」
「デモ、ワタシハ、オマエヲ、キズツケテ、シマッタ」
「それがどうした……」
「エ?」
「そんなのもう、どうだっていいだろ?」
「デ、デモ、ワタシハ、オマエ二、ヒドイコトヲ、イッパイ、シテシマッタ」
「だーかーらー! お前は今から俺の家族になるんだから、そういう細かいことはどうでもいいんだよ!」
「カ……ゾク?」
「ああ、そうだ。今からお前は俺の家族だ」
「ケド、オマエハ、ワタシヨリ、チイサイ」
「ん? あー、これか。これは『第二形態』になったせいだ。というか、身長はどうでもいいんだよ」
「ソウ、ナノカ?」
「ああ、そうだとも」
「ジャア、ワタシニ、ナマエヲ、ツケテクレル?」
「ああ、もちろんだ。それで、お前はどんな名前がいいんだ?」
「……カワイイ、ナマエガ、イイ」
「そっか、そっか。かわいい名前か。うーん、それじゃあ『ミカン』とかどうだ?」
「ミ、カン?」
「ああ、そうだ。お前の髪の色と同じ色の果物の名前だ」
「……ソウカ。ウン、ワルク、ナイ」
「そっか。なら、よかった」
「モウヒトツ、オネガイシテ、イイカ?」
「ん? なんだ?」
「ワタシノ、コユウマホウノ、ナマエヲ、カンガエテクレナイカ?」
「そう、だよな。お前は今までマスターがいなかったから、固有魔法も使えないんだよな」
「……タノマレテ、クレルカ?」
「ああ! もちろんだ! というか、実はもう考えてある」
「ソウカ、ナラ、タノム」
「ああ、分かった。コホン、えーっと、お前の固有魔法の名前は『復活《リバイバル》』だ」
「リバイ、バル?」
「えっと、復活っていう意味だ」
「ソウカ……。ナラ、サッソク、ツカッテ……」
「ちょっと待て。お前の右肩にはまだ『魔剣デュランダル』が刺さってるから発動しても効果は薄いぞ?」
「ソウ、ダッタナ。ナラ、イマスグニデモ……」
「待て待て待て! お前は横になってろ。俺が引っこ抜いてやるから」
「ソ、ソウカ。ナラ、マカセタ」
「ああ、任せとけ」
俺は『ミカン』の方に近づくと『魔剣デュランダル』の柄《つか》を左手で掴《つか》んだ。
「ちょっと痛いけど、我慢しろよ」
「ウン、ガマンスル」
「よい……しょっと」
「……ッ!!」
「もうちょっとだから、頑張れよ。ミカン」
「ウン、ワタシ、ガンバル!」
「……あら、よっと!」
「……グッ!!」
「よし、終わったぞ。ミカン。早速、固有魔法を使ってみろ」
「ウン、ワカッタ」
ミカンは深呼吸すると、固有魔法を発動させた。
「……『復活《リバイバル》』」
その直後、彼女の体からオレンジ色の光が放たれた。
その光が消えた時には彼女の身体は完全に修復されていた。
まるで時間が巻き戻ったかのように……。
「ミカン、体に異常はないか?」
ミカンはスッと立ち上がると、その場でぴょんぴょんと跳ねた。
「ウン、ダイジョウブ。アリガトウ」
「そうか。なら、よかっ……た」
『|黒影を操る狼の形態《ダークウルフ・モード》』を保《たも》っていられなくなった俺は仰向けで倒れたかのように思えた。
「オイ! ニンゲン! ダイジョウブカ!」
しかし、ミカンが瞬時に俺を支えてくれたおかげでそうならずに済んだ。
こういうのは普通、男の仕事なんだけどな……。
「ミカン。さっきの固有魔法、俺にも効くかな?」
「ワカラナイ。ケド、ヤッテミル」
「ああ……頼んだ」
ミカンは深呼吸すると、再び固有魔法を発動させた。
「……『復活《リバイバル》』」
その直後、オレンジ色の光がナオトを包み込んだ。数秒後。その光が消えると同時に、ナオトの体は完全に修復された。
「ははは、お前の固有魔法、やばいな。というか、敵に回したくねえ」
「ダイジョウブダ、ワタシハ、オマエノ、テキニ、ナルツモリハ、ナイ」
「そうか。なら、今日からお前も俺の家族の一員だ」
「カゾク、カ。ウン、ワルクナイ」
「よし、それじゃあ、三回戦に行……」
俺が一人で歩き出そうとした時、俺はこけそうになった。
だが、ミカンがそれを未然に防いでくれたおかげで、そうならずに済んだ。
「あ、ありがとう、ミカン。おかげで助かったよ」
「イヤ、ワタシハ、トウゼンノ、コトヲ、シタマデダ」
「そうか。でも、助かったよ。ありがとう」
ミカンは少し頬を赤く染めた。
「レイハ、イイカラ、オマエハ、スコシヤスメ。ワタシガ、ナオセルノハ、ニクタイダケ、ナノダカラ」
「ああ、そうだな。それじゃあ、少し休ませて……もらおう……かな……」
ナオトはそのまま倒れながら眠《ねむ》ってしまった。
すると、ミカンはとっさに膝枕をした。
「コンナヤツニ、マケルナンテナ。ケド……ネガオハ、カワイイナ」
※ナオトは『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになっている。
ミカンはナオトの頭を本当の母親のように優しく撫で始めると、ナオトの寝顔を見ながら静かに笑っていた。
*
それから、一時間後……。
「ん……あ……あれ? 俺……寝てた……のか?」
「オハヨウ、ニンゲン。オマエノ、ネガオ、カワイカッタゾ」
「あっ……そうか。俺、寝てたんだった。というか、ここは……どこだ?」
「ココハ、ワタシノ、ツバサノナカダ」
「え? お前の翼の中?」
「天使型モンスターチルドレンハ、ジブンノ、ツバサヲ、タマゴガタニシテ、ネムル」
「……へえ、そうなのか。えっと、その三回戦は、まだ始まらないのか?」
「オマエガ、メザメタカラ、モウ、ハジマル」
「そっか……というか、俺の名前を言ってなかったな。俺は『本田《ほんだ》 直人《なおと》』だ。よろしく」
「コチラコソ、ヨロシク」
「よし、それじゃあ、行くとし……」
「オハヨウノ、キス」
ミカンは突然、俺の額《ひたい》にキスをしてきた。
ミカンは動揺《どうよう》しきった俺の顔を見ながら、ニッコリ笑った。
ま、まったく、困ったやつだな、ミカンは。
俺はそう思いながら、スッと立ち上がると。
「それじゃあ、行くぞ。ミカン」
「ウン、イコウ。ナオト」
ミカンに手を差し伸べた。
ミカンは俺の手を握ると、スッと立ち上がった。その後、翼でできた真っ白な空間を解除した。
さあてと、そんじゃあ、やりますか!!
ナオトは自信に満ち溢れた笑みを浮かべながら、闘技場の床を踏みしめると前に進み始めた。