テラーノベル
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「〜♪〜♪」
赤ちゃんはバケツ片手に学校で飼っている牛の元へミルクを貰いに行っていた。
ふと、誰かの話し声が聞こえた。誰かと誰かが話しているようなので、赤ちゃんはこっそり話を聞いて茶化してやろうとこっそり覗く。すると、
【君、見ない子だけど、赤ちゃんの知り合いかい?】
「えーっと訳あって飛ばされちゃって、しばらくよろしくお願いします。牛さん」
と、髪や瞳の色は違うが、すまない先生そっくりの少年・ミツキが“牛”と話していた。赤ちゃんは目を丸くし、思わず飛び出した。
「おいお前!!動物さんの言葉分かるのか!?」
「うわぁ!?赤ちゃんさん!?」
ミツキは突然現れた赤ちゃんに驚いた。そんなことは気にせず、赤ちゃんはミツキに噛み付くように近づく。
「いいから!!動物の言葉がお前も分かるのか!?」
赤ちゃんの切羽詰まった表情に、ミツキは視線をうろうろさせ、やがて答えた。
「・・・す、少しだけど・・・」
「まじかよ!!」
と、赤ちゃんは驚いたように目を丸くする。
「お前、どうやって動物の言葉覚えたんだ?お前も俺と同じようにクマに育てられたのか?」
「違うよ?僕はお父さんの生徒に教えてもらったんだ。といっても、ほんの少しだけどね」
と、ミツキは苦笑する。ふと、赤ちゃんは首を傾げた。
「・・・お父さんの生徒?・・・てことは、お前の父さん、先生なのか?」
「うん!今はもう辞めてるけどね」
それに赤ちゃんはまた首を傾げる。
「なんでだ?あれか?定年退職ってやつか?」
「まだ僕の父さんそこまで歳いってないよ???」
赤ちゃんの言葉に、ミツキは思わずツッコミを入れた。
「・・・父さんね、とある怪物を倒すために、利き腕を犠牲にして、倒したんだ」
「・・・おい、まじかよ」
「・・・その怪物を倒したのと、生徒たちが卒業、そして、自分の腕が使い物にならなくなったから、丁度いいってわけで、先生を辞めちゃったんだ」
すると、ミツキは暗い話をパッと明るく笑顔で答える。
「あっ!でも、昔と比べて父さん、生徒たちのおかげで腕は動かせるようにはなったよ!前なんか、お米を抱えていたおばあちゃんを助けて、母さんと妹に叱られてたけどね!」
と、ミツキは答える。ミツキは思い出していた。
父の片腕に今でも残る痛々しい傷跡を見て、幼い自分は、父に聞いたことがあるのだ。
◆◆◆◆◆
『ねぇ、お父さん、なんでお父さんはこんな大怪我をするまでその怪物を倒したの?』
そう聞くと、お父さんは少し困ったように、でも、優しく笑って答えた。
『・・・僕の父さんと、母さんは僕を愛していたから、あの怪物を倒した。僕も、この世界を、生徒のみんなを愛していたから、あの怪物を倒せたんだ。・・・今は難しいことかもしれない。けど、きっと分かる日が来るよ』
そう父は優しく微笑む。
◆◆◆◆◆
「・・・父さんは、世界を守るために怪物を倒した。だから!僕も父さんみたいな『英雄』になりたいんだ!!父さんも、母さんも、妹も、皆も救える!そんなヒーローに!!」
そうミツキは力強く答える。赤ちゃんは何故か彼とすまない先生の姿が重なった。
どうして彼の姿が重なったのか、見た目がそっくりだからなのか?それとも何か他の・・・?理由が分からなかった。
赤ちゃんは首を傾げた。