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尾の先の棍棒状になった膨らみから生えた、六本の棘を体に喰い込ませながらペトラが叫ぶ。
『レイブお兄ちゃん! まだ削れそうに無いのぉー? 痛たたたっ! まだぁー?』
レイブは額に汗を滴らせながら答える、真剣な表情のままで、である。
「ああ、まだ動きが激しくて…… クソッ! これじゃあこの竜を傷付けちまう、一体どうしたら良いんだっ!」
傷付くどころか今にも失血死しそうなぐらいの怪我を負っているようにしか見え無いペトラが叫びを返すアゲイン。
『んじゃあアタシが直接動きを止めても良いよね? 良しっ! 『魅了酒作成』、『度致死』、出来たっ! 『直接注入』、死ねこの馬鹿竜っ!』
「だめだめだめっ! ペトラステイッ! 致死ってなんだよ! 殺したら意味無いだろ? ステイッ! そのままで待っていてよ!」
『ぐっ! わ、判ったわ…… きゅ、キュゥ~ウッ、はっ!』
意味なく失血死しそうだったペトラの正気を取り戻させたのは他ならぬギレスラの発したスキル発動の頼もしい声である。
『『氷結捕縛』!』
『ぎ、ギレスラお兄ちゃん!』
一般の竜が口から発射する氷結ブレスとは違い、額の上から長く伸びた螺旋状の双角、その中央から発せられた冷気の塊が暴れるズメイ種の四肢を瞬時に凍りつかせ、胴体の動きを止めるのを確認した次の瞬間、首の付け根に飛び移ったギレスラは次のスキルを発動する。
『『電撃』! ふぅ~、ペトラ大丈夫か? むむっ! 怪我をしているではないか! は、早く自分に『回復』を掛けるんだぁ』
『う、うん、『回復』…… 助かったわギレスラお兄ちゃん、あ、ありがとね』
「おお! 来てくれたかギレスラ! ペトラが全然止められなくて往生してたんだよぉ! これならイケるぜっ! 唸れゼムガレ、とうっ!」
言いながらズメイ種の首から背中、わき腹へとナイフを滑らせて厚い鱗を砂糖菓子を削るようにサックサックと落としていくレイブは、つい今しがた死の淵から戻ったばかりのペトラに厳しめの声を掛ける。
「おいペトラ、グズグズするなよなっ! ここまで役に立っていないんだからさっ! こいつの魔力を吸い始めろよ! 全くっ! 早く働けよっ!」
『あ、う、うん、ごめん……』
『無理はするなよ、ペトラ』
魔力を吸い上げる為にズメイ種のでっぷりとした腹部に近付いたペトラは優しいギレスラの事が今までより少し好きになった気がした。
レイブを嫌いだ等とは思う事こそなかったが、心のどこかで、風邪でも引けばいいのに、位は願ってしまっていたようだ、控えめな性格が愛おしい。